子ども虐待防止条例の骨子
県民の虐待の通報の励行のための措置
- 県は、自治会、一定規模以上の共同住宅ごとに、虐待が疑われる事例の紹介、通報義務等について、講習、パンフレットの配布等虐待の通報の励行が行われるために必要な措置を講ずるものとする。
- 共同住宅の賃貸人、管理組合その他の共同住宅を管理する者は、現に居住する者を正確に把握するよう努めるとともに、乳幼児が室内に放置されている疑いが認められる場合には、直ちに管理人その他の権限を有する者が室内に入り、安否を確認することができる旨の管理規約を定める、警察に直ちに通報することとするなど居住する乳幼児の安全確保のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
病院、学校の虐待の通報の励行のための措置
- 病院、学校(以下「病院・学校」という。)は、虐待防止委員会を設置し、虐待対応規程を整備しなければならない。
- 病院・学校は、職員に対して虐待されている子どもを早期に発見し、関係機関に速やかに通告するよう職員に対して研修を実施し、その結果を知事に報告しなければならない。
- 医師は、親が虐待を否定している場合であっても、子どものけがや衰弱の状況から虐待の疑いが否定できない場合には、児童相談所若しくは市町村の児童虐待担当部局(以下「児童相談所」という)又は警察に通報しなければならない。児童相談所に通報した場合、夜間である等の理由で児童相談所が速やかに対応できない場合には、児童相談所は警察に対応を要請することができる。その場合、警察は正当な理由がない限り要請を拒否できないものとする。
警察による虐待情報の把握
- 警察は、困りごと相談、巡回連絡その他の措置により、子どもが虐待されている疑いのある情報の収集に努めなければならない。
- 警察は、巡回連絡その他の措置により、乳幼児のいる家庭を把握するよう努めなければならない
関係機関の情報の共有・登録
- 児童相談所及び警察は、子ども虐待が疑われる情報を入手した場合には、直ちに他の関係機関に通報しなければならない。
- 児童相談所及び警察は、虐待されていると認められる子どもについて登録し、その後の状況を常にお互いに把握できるようにしなければならない。
子どもの安全確認義務・立入の手続き
- 児童相談所、警察は虐待の通告があってから、できるだけ速やかに(遅くとも48時間以内)子どもの安全を確認しなければならない。
- 48時間以内に確認できなかった場合は、その理由とともに知事又は警察本部長に報告するものとする。
- 児童相談所が子どもの安全を確認しようとする場合には、警察の協力を求めることができ、その場合、警察は正当な理由なくその要請を拒否してはならない。
- 児童相談所が子どもの安全を確認しようとしたが、保護者が不在、保護者が面会を拒否するなど48時間以内に子どもの安全が確認できない場合には、警察に直ちに連絡しなければならない。その場合、警察は直ちに子どもの安全を確認するために必要な措置をとらなければならない。
子どもの一時保護等の基準
- 児童相談所は、一時保護及びその解除、又は施設入所解除の判断に当たっては、子どもの安全を最優先とし、保護者との良好な関係の維持、家族再統合の必要性を名目に、子どもの保護を躊ちょしてはならず、又は保護者に子どもを安易に引き渡すことのないようにしなければならない。特に、過去に虐待歴やDV歴のある保護者、父親でない男性と同居している保護者、精神疾患のある保護者、乳幼児健診未受診、未就学とさせている保護者である場合には、より慎重に子どもの安全の確保に配慮しなければならない。
- 子どもの母親と同居する父親以外の男がいる場合には、原則として一時保護措置を講ずるものとする。一時保護しない場合には、その理由とともに知事に報告するものとする。
- 児童相談所は、親が虐待を否認している場合であっても、子どものけがや衰弱の状態から虐待が疑われるとの見解を医師等の専門的知識を有する者から受けた場合には、原則としてその見解に従わなければならない。医師等の見解に従うことができないと判断する場合には、その理由書を知事に提出し、その同意を得なければならない。
虐待を受けた子どもに対する治療・精神的ケアの実施
- 児童相談所、警察、児童養護施設その他の機関は、治療・精神的ケアの実施が必要であると認められる子どもについて知事に連絡しなければならない。
- 知事は、前項の連絡を受けた場合には、調査の上治療・精神的ケアの実施が必要な子どもに対して必要な治療・精神的ケアを実施するものとする。
虐待親に対する再発防止のための指導
児童相談所及び警察は、一時保護措置がとられず在宅措置とされた場合には、虐待親に対して、再発防止のための指導をするとともに、再度虐待を加えた場合には逮捕することとなる旨警告するなど再発防止のために必要な措置を講ずるものとする。
虐待死の疑いのある場合の措置
警察は、5歳以下の子どもが死亡した場合には、保護者以外の第三者の明確な目撃証言がある場合その他死因が虐待によるものでないことが明らかである場合を除き、死因を究明するために解剖をするものとする。
教員その他の職員の採用等
- 県は、教員、保育士、児童養護施設の職員その他の子どもと接する業務に従事する職員を採用しようとする場合には、過去において性犯罪歴、少年時の非行歴その他過去において子どもの対する性的な不適切な行為(以下「性犯罪歴」という)を行ったかことがないかどうか調査するものとし、調査の結果、性犯罪歴が認められる場合には採用してはならない。
- 学校の管理者は、子どもの課外活動等を実施するに際してボランティアを募集する場合には、前項に準ずる措置を講ずるものとする。
県立学校以外の学校の取組
県立学校以外の学校の管理者は、教職員の採用、ボランティアの募集に当たっては前条に準ずる措置を講ずるよう努めなければならない。
児童ポルノの所持の禁止等
- 何人も児童ポルノを所持してはならない。
- 何人も子どもに対して児童ポルノを見せてはならず、見るように勧誘してはならない。児童ポルノに描かれている行為と同様の行為をするよう求めてはならない。
経済的困難にある家庭への子育て手当て
県は、子どもがいる別途定める基準に満たない額の収入の世帯に対して、子どもに対して別途定める保健所の実施する子どもの健康診査・定期的な子育ての指導を受けることを条件として、子育て手当てを支給する。
養育費の支払い確保のための援助
県は、12歳未満の子を養育する立場にある離婚しようとする者、離婚した者からの相談に応じ、養育費の支払いを確保するために必要な援助を行うものとする。
罰則・過料
- 病院・学校の代表者が、虐待対応委員会、虐待対応規程を整備しなかった場合、又は研修を行わなかった場合には、10万円以下の過料に処する。
- 児童ポルノを所持した者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
子どもに対して児童ポルノを見せ、見るように勧誘し、児童ポルノに描かれている行為と同様の行為をするよう求めた者も同様とする。
子ども安全基本条例
子どもの安全確保の原則
- 県及び県内の事業者(国の機関、市町村を含む。以下「事業者」という)は、その事業の実施、施設の運営に際しては子どもの安全を確保しなければならない。
- 県及び事業者は、事業の実施に際しては、事業の実施、施設の運営により子どもの安全を害するおそれがないかどうか検討しなければならず、そのおそれがあると認めるときは、子どもの安全を害することのない方法で事業を実施しなければならない。
子ども安全全委員会の設置
- 県に子ども安全委員会を設置する。
- 子ども安全委員会は、県及び事業者が事業の実施、施設の運営に当たり子どもの安全を確保しているかどうかについて自ら調査し、又は通報に基づいて調査し、必要な場合に勧告又は公表する。
子どもの安全が確保されていないおそれがあるときの通報
県民は、市又は事業者の事業の実施、施設の運営に際し、子どもの安全が確保されていない疑いがあると思料する場合には、子ども安全委員会にその旨を通報することができる。
子どもの安全が確保されていないと認められる場合の勧告、公表
子ども安全委員会は、通報を受けた場合及び自ら疑いのある事案を把握した場合には、調査し、子どもの安全の確保が優先されていないと判断される場合には、府又は事業者に対して是正を勧告し、又は公表することができる。