ブログ13 ベビーシッター幼児死体遺棄事件を踏まえ直ちに必要な対策を

1.  2014年3月17日、埼玉県富士見市のマンション一室で横浜市磯子区の2歳の男児の遺体が見つかり、インターネットの仲介サイトを利用して男児とその弟を母親から預かった自称保育士の男が死体遺棄容疑で逮捕されました。今回利用された仲介サイトには約1万人の親と、5000、6000人のベビーシッターが登録しているとされています。本事件の真相はまだ分かりませんが、報道によると、本事件からは
  乳幼児を預かる資格も能力もない者がベビーシッターとして親から子どもを預かっている事例が見受けられること
  インターネット上に利用したい親とベビーシッターを仲介するサイトが多数存在し、多くのサイトでは、登録するベビーシッターの能力や信用力はもちろん、氏名、住所、経歴、資格等の厳格な本人確認を行っていないこと
  上記仲介サイトにベビーシッターとして登録する者の少なからぬものが、偽名で登録している可能性のあること
  このようなベビーシッターにより、本事件のほか、やけどを負わせたり、不適正な事例が生じているが、それにもかかわらず、そのような者を排除する仕組みが設けられていないこと

などが明らかになりました(2014年3月18日、19日、20日産経新聞、3月19日東京新聞、日経新聞、読売新聞等)。
 

2. 言うまでもありませんが、このようなベビーシッターの存在とそれを仲介するサイトの今の運営は子どもの命を危険にさらすものです。
 今回利用された仲介サイトは18日「警察による事実解明まで」としてサービスを停止しましたが、このサイト以外のものについても同様の運営をしているのであれば、子どもの命を危険にさらさないため、運営の中止ないしは根本的な改善が図られなければなりません。
 今回の事件で明らかになったことは、このような形で子どもが死んでしまうということのみならず、子どもを誘拐し殺害するあるいは性虐待を加え、児童ポルノを製造しようなどと考える者が、これらの仲介サイトを利用することにより、容易に子どもを殺害・虐待・わいせつ行為等ができるということです。もしかしたら、既にそのような者がベビーシッターと称して登録しているかもしれないのです。
 同様の事案は既に起こっています。小学校から「学校支援ボランティア」に委嘱され小学校に入り込んだ男子学生(当時21歳)が、女児にわいせつ行為をしていた、あるいは小学校の自然学校に同行するボランティアの募集に応募して採用された男(当時40歳)がそこで知り合った複数の男児にその後性虐待を加え、わいせつ画像の撮影もしていたなどの事案が起こっています。子どもに対する性虐待者や児童ポルノ愛好者は子どもと接する機会をすきあらば、と狙っているのです。今回の事件によりそのような者がベビーシッター仲介サイトを利用しようとする危険は少なからず増大したものと考えます。
 なお、私は、子どもを性犯罪から守るために、学校や保育所、児童養護施設等子どもと接する業務に就こうとするもの(ボランティアも含む)について、性犯罪歴がないかどうかなどの調査をしそのような者を採用しないことを学校等に義務付けることが必要であると考え、NPO法人シンクキッズのホームページ上の子ども虐待防止条例モデル案に記載していますのでご参考になさってください。このことはベビーシッターも同様と考えます。

https://www.thinkkids.jp/kaisei/revision

3. 厳格な本人確認をせず、偽名での登録でないかどうかも調べようとせず、さらには能力があり信用できる経歴があるかどうかなどの確認もせず、過去にトラブルがあった者も排除せず、乳幼児を預けるベビーシッターを仲介する、しかも、トラブルについては責任は負わない、というサイトは、今回明らかになったように、また、子どもに対する性犯罪者等に利用されるおそれもあることから、子どもにとり危険極まりないものであって、提供されるべきものでないと考えます。
 当面の措置として、厚生労働省、警察庁は子どもに対する犯罪防止の観点から、上記のような形で仲介業務を運営している業者にその旨を申し入れ、子どもの命が危険にさらされる運営方法は中止し、危険な者を紹介することが防止できる体制を整備することを求めるべきと考えます。
 そして、早急に、国会は、国や自治体が関与して、厳格な本人確認と過去に性犯罪その他子どもに対する犯罪歴がないこと、ベビーシッターとしてふさわしい資格などを有することなどを確認した上で紹介するという法律を制定し、子どもの命が守られ、親が安心して利用できる制度を整備して、切実なニーズにこたえていくべきであると考えます。

 なお、運営者の意図は全く異なりますが、同様にインターネットを介して犯罪が行われる危険があるサイトとして、闇サイトがあります。私は闇サイトについて「闇サイト禁止法」を制定すべきだとし、後藤コンプライアンス法律事務所のホームページに掲載しておりますので、ご参考になさってください。

https://www.law-goto.com/0302/011/