1 昨年2024年末に、フジテレビの女性アナウンサーとタレントのトラブル(2023年6月発生)が明らかになりましたが、この問題についてフジテレビが事案把握後も同タレントに問いただすこともなく、1年半近く番組に起用し続けていたことが明らかになりました。また、本年1月、誹謗中傷を受けていたとされる兵庫県の元県議の方が自殺されました。原因は明らかでありませんが、SNSによる誹謗中傷が原因ではないかと報道されています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250117/k10014695441000.html |
私どもシンクキッズは、2023年にジャニー喜多川氏による多くの未成年タレントに対する性加害行為が明らかとなり、マスコミやテレビ局が自社の利益のため、同氏に忖度し長年にわたり黙認していたこと、また、被害男性の一人が被害者でありながら多くの誹謗中傷により自殺されたことを受け、同年11月、12月に、「ジャニーズ事件を機に子どもを性犯罪・性的虐待から守るための法整備を求める要望書」(要望書1)及び「ジャニーズ事件を機にインターネットを利用した誹謗中傷の処罰及びプロバイダ等の責務の特例を定める法律の制定を求める要望書」(要望書2)を国に提出し、記者会見し、国に必要な法律の整備を働きかけました。
ジャニーズ事件を機に子どもを性犯罪・性的虐待から守るための法整備を求める要望書 ジャニーズ事件を機にインターネットを利用した誹謗中傷の処罰及びプロバイダ等の責務 https://www.thinkkids.jp/wp/wp-content/uploads/2023/11/nikkei2023.jpg |
しかしながら、要望書1に関しては、わずかに芸能事務所をDBS法の対象とすることは受けいれられましたが、テレビ局等に未成年のタレントに対する性犯罪防止対策の義務付けをはじめほとんどの対策は受け入れられず、要望書2に関しては、「インターネットを利用した誹謗中傷の処罰及びプロバイダ等の責務の特例を定める法律(仮称)」を制定し、SNS等による誹謗中傷の厳罰化およびSNS事業者に対して誹謗中傷の投稿の削除及び発信者情報の開示を義務付けることを要望しましたが、全く受け入れられていません(総務省は、2024年6月にプロバイダ責任法を改正しましたが、事業者に削除や開示請求に応じることの義務付けはせず、運用状況の透明化などのおよそ効果が期待できない法改正にとどまっています)。
2 (1)このような国による有効な対策が講じられないまま、昨年は兵庫県の斉藤知事や副知事さんらに対してSNSによる誹謗中傷が激しくなされ、また知事を追及する立場の複数の県議の方への誹謗中傷も同様に激しくなされる中、上記のとおり元県議の方が自殺されました。斎藤知事に対してはSNSによる誹謗中傷のみならず、大手テレビの情報番組でもコメンテーターが根拠なく(斎藤知事らが元職員の方を) 「殺してしまった」などと発言し、それに司会者が同調するなど(本件については兵庫県の元副知事さんがBPOに申し立てされています)、SNS上のみならずテレビを含め社会全般に誹謗中傷、根拠なく一方的に人を激しい言葉で批判する言動を躊躇しない風潮が広がっていることを懸念します。
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202409170000270.html https://www.j-cast.com/2024/09/18493663.html?p=all https://www.sankei.com/article/20241225-T4JSK3X73JK6BIZHBACEM7SRMA/ |
(2)また、フジテレビの女性アナウンサーとタレントのトラブル問題につきましては、他にも同様の事案はあるのではないか、それらにフジテレビ社員も関与しているのではないかなどと取りざたされています。テレビ局は、ジャニーズ事件において、多数の未成年タレントに対するジャニー喜多川氏による性犯罪につき、自社の利益を優先し、同氏に忖度し長年黙認していたことが明らかになりましたが、同事務所に所属していたタレントによる自社の女子職員に対する不適切な行為についても同様に、自社の利益を優先し忖度し、黙認していた疑いがでてきました。
有力者による多数の未成年タレントに対する性行為について、忖度し黙認していたことだけでも到底是認できるものではありませんが、自社女子社員への不適切な行為まで同様に忖度し黙認していたとすれば、到底まっとうな企業とは言えません。そうであるならば、ジャニーズ事件を教訓とすることなく、有力者に忖度し、子どもや女性の被害を黙認する体質は変わっていないことになります。フジテレビでは信頼できる第三者による徹底的な調査が必要であることは言うまでもありませんが、他のテレビ局でも同様の調査が必要です。
なお、このような自社の女性社員に対する同様の事例は、マスコミだけでなく一般企業でもみられるところです。2018年に百十四銀行で、会長が取引先との会席に女性社員を同席させ、不適切な行為を制止しなかったとして、会長が辞任するにいたっています。この事案では、社外取締役が詳しい調査を求めてこのような対応に至ったとされ、ガバナンスが機能した事例とされています(なお、社員を取引先に紹介するため会席に同行させることは通常行われており、その対象が女性であることも当然あり得ますので、そのことまで(妙な思惑さえなければ、不適切なことがあれば取引先への抗議等しかるべき対応がとられるのであれば)否定されるべきものではないと考えます)。
3 SNSの普及により誹謗中傷の風潮はとめどなく悪化しており、最近大きく報道されただけでも、誹謗中傷を苦にして、女性プロレスラーの方(2020年)、ジャニーズ事件の被害者の男性(2023年)、元兵庫県県議(2025年)などの方々が自殺に追い込まれています。実際にはもっと多くの人が自殺に追い込まれているのではないかと推測しますが、それでも国は有効な改善措置をとろうとしません。また、ジャニーズ事件で明るみにでたマスコミにおける、自社の利益を優先し、有力者に忖度し、子どもを性搾取の対象とすることを容認する姿勢、態度は、自社の社員女性に対する対応にまで及んでいるように感じます。
そこで、SNSの誹謗中傷対策として、国に対して、改めて、既に提出している要望書2記載の「「インターネットを利用した誹謗中傷の処罰及びプロバイダ等の責務の特例を定める法律(仮称)」」の制定を求めてまいる所存ですが、最近ではAIの急速な普及によりディープフェイクによる誹謗中傷、偽情報も拡散されており、それへの対応も求めてまいります。
次に、フジテレビをはじめとするテレビ局に対しては、要望書1で求めている、自社の利益のために有力者に忖度し未成年のタレントへの性犯罪を黙認しない対策とともに、同様に自社の女性社員への不適切な行為を黙認する行為をはじめとして社員や関係・下請け企業、番組に起用するタレント、スタッフなどの女性の人権を侵害する部内・部外の行為を禁止し、それが発覚したときは忖度・黙認することなく、部外の加害者であれば厳重な抗議や番組打ち切り、部内者であれば懲戒処分等毅然と対応する方針を明確にし、それが確かに守られるよう、要望書1で求めている外部の第三者が検証する態勢を講じるなどの対策をとることを求めるものです。また、フジテレビに対しては、上記百十四銀行事件の例にならい、社外取締役が主導し、本事案の解明と有効な再発防止策を講じ、ガバナンスが機能していることをみせていただくことを期待しております。