ブログ191 滋賀県で17歳の兄が6歳の妹を内臓破裂・ろっ骨骨折させ虐待死

 本年8月1日、滋賀県大津市で17歳の兄が小学校1年生の6歳の妹に内臓破裂、ろっ骨骨折を含め100か所ものあざを負わせるなど凄惨な虐待を数日にわたり加え虐待死させ、自らの犯行を隠ぺいするため、公園のジャングルジムの下に放置し、事故死に見せかけようとした事件が発生しました。

https://www.mbs.jp/news/kansainews/20210805/GE00039569.shtml

 報道等によりますと、本件家庭は、児童養護施設に別々に入所していた兄と妹が本年4月に退所し、はじめて母親と3人暮らしを始めた家庭であり、児童相談所が把握していた家庭でした。本年7月21日の未明に妹が兄に連れられコンビニに訪れたことから110番通報され、警察官が臨場し、妹を保護、自宅まで送りとどけ、警察が児童相談所に通告しました。しかし、児童相談所は家庭訪問し女児の安否確認することもなく、8月1日に虐待死させられたとされています。児童相談所は面会しようとしたが、母親と約束できたのは8月4日だつたと説明しています。

 警察からの通報を受けた児童相談所、あるいは警察が、2週間も間をあけずに速やかに家庭訪問し女児の安否を確認し(母親と約束がとれなくとも子どもの安否確認だけでもさせてほしいといって、訪問して女児の安否だけでも確認すべきでした)、その後も児童相談所、警察や学校等関係機関が協力・連携して、適切な頻度で家庭訪問し、女児の安否確認、兄、母への指導等を行っていれば、女児がかくも凄惨な虐待を受け虐待死させられることは防ぐことができました。

 兄が6歳の妹を未明に連れ出すなどしていることから、警察から兄に対して注意されたことが推測され、さらに兄がそのうっぷんを幼い妹に向け、凄惨な虐待に及んだとも推測されます(現時点ではあくまで推測で、事実関係が明らかになれば修正いたします)。

 そもそも虐待リスクはかなり高い家庭であることに加え、このような出来事があったのですから、さらに虐待リスクは高くなっていました。そのうえ、母親が面会拒否に近い態度にでているのですから、虐待リスクは大変高くなっていたと評価できます。それにもかかわらず、警察から通告を受けながら2週間も安全確認しないとは、児童相談所の虐待リスクの評価は甘すぎると指摘せざるを得ません。

 児童相談所は母親との面会の約束が2週間後とされてしまったという事情があったのでしょうが、それこそが虐待の危険な兆候なのですから、母親の言うがままに2週間もほったらかしにするのでなく、直ちに警察に連絡し、警察が家庭訪問しー警察が訪問すれば保護者はまず面会に応じますー女児が虐待を受けていないか速やかに確認すべきでした。高知県などでは、既にこのような連携態勢が児童相談所と警察との間に構築されています。滋賀県においてこのような関係機関の連携態勢が整備されていれば、女児はかくも残酷に殺害されることはありませんでした。

 そもそも、子どもを守るためには、児童相談所という一つの機関だけでなく、警察、市町村、学校など多くの機関の多くの目と足で子どもを見守る方が、子どもの安全が図られることは自明です。通告を受けても児童相談所だけで対応し、「これは緊急性が低いから、2週間ほっておいても大丈夫。他機関と連携しなくても大丈夫」などと軽信し、放置することなく、すべての案件につき、児童相談所、市町村、警察等関係機関で案件を共有の上、これらの機関で協力・連携態勢を構築し、多くの機関の多くの目と足で危険な兆候が見られないか、速やかにかつ継続的に子どもを見守らなければなりません。

 しかしながら、滋賀県では、上記のような協力・連携態勢は整備されていないことはもとより、児童相談所に通告がなされた虐待が疑われる案件についてすら、ごく一部しか警察に情報提供されていません(警察は自らに寄せられた案件はすべて児童相談所に通報しています。)。

 案件を警察と共有すれば、警察官がパトロールや巡回連絡等日常の警察活動を通じて虐待の兆候がないかどうか確認することができ、そのような兆候があれば、市町村や児童相談所に通報することができます。また、警察が市町村や児童相談所の把握する家庭について110番通報、DV等で対応する場合に、虐待の危険のある家庭であることを念頭に対応することができ、親から騙され虐待を見逃すという危険をなくすことができます(このような事案で子どもを虐待死に至らしめた事案として2014年東京都葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件があります)。また、警察から保有する保護者のDV・虐待歴や子どもの迷子・家出歴などを得ることができ、より多くの情報に基づき虐待リスクを評価できます。

 さらに、本件もそうですが、保護者の面会拒否(本件のように長期間家庭訪問の約束に応じないケースも含む)、威嚇的言動など虐待の危険な兆候が認められる場合には、緊急に出動できる警察に直ちに通報し、警察が家庭訪問し、子どもの安否を確認するという連携態勢を構築すれば、本件のように子どもの安否を確認できないにもかかわらず放置し、虐待死に至らしめるという事態を避けることができます。

 滋賀県知事には、役所の縦割りを排し児童相談所と市町村、警察、学校等関係機関がすべての案件を共有の上、協力・連携して活動する態勢を整備し、二度とこのような残酷極まりない方法で子どもが虐待死させられることのないよう要望してまいる所存です。