2021年4月9日、文科省は、都道府県教育委員会などに通知を発出し、その中で、児童生徒に対するわいせつ行為等の防止策として、① 児童生徒に対するわいせつ行為を行った教員への厳正な対処 ② 予防的な取組等の推進 ③ 採用前・採用段階における取組の推進 につき、全国の教育委員会に取組を求めました。
①については、
〇児童生徒に対するわいせつ行為を行った教員については原則として懲戒免職とするなど厳正な懲戒処分を行い、他校の児童生徒に対する場合についても同様に対処すること
〇児童生徒に対するわいせつ行為があったにも関わらず,懲戒処分を行わずに依願退職等とせず、退職手当についても不支給処分とするなど厳正に対処すること。
〇刑事訴訟法により公務員はその職務において犯罪があると思料する場合には告発しなければならないとされているが,精神的負担等を懸念する被害者やその保護者からの意向により,また,告発する必要があることを認識していなかったり,十分に検討することもなく犯罪に当たらないと判断したりしたことなどにより,教育委員会や学校から告発が適正に行われていない例も見受けられる。このため,当該事案が犯罪に 当たるか適切に判断を行った上で,告発を遺漏なく行うことを含め,警察機関等と連携して厳正に対応すること。
〇特に,平成 29 年7月の刑法改正により,強制わいせつ罪や 強制性交等罪等については非親告罪となっており,これらの犯罪に当たると思料される 場合には,被害者やその保護者等が告訴しない場合であっても告発する必要があること。
〇判断に迷うような事案については,警察機関等と連携して対応したり,弁護士に相談したりすることにより,本来告発すべき事案で告発されないということが生じ ないようにすること。
②については、
〇教育委員会の指針や通知等で,SNS等を用いて児童生徒と 私的なやりとりを行ってはならないことを明確化するとともに,業務上必要な連絡を行 う場合であっても,児童生徒や保護者との適切な連絡方法や学校管理職との情報共有等 について取扱いを明確化すること。
〇執務環境の見直しによる密室状態の回避や教育指導体制の見直しによる組織的 対応,教員や児童生徒を対象としたアンケートの実施などによる実態把握や効果的な研 修の工夫など,わいせつ行為の防止に向けた予防的な取組等を強化すること。
〇わいせつ行為等による被害の相談体制の整備や,警察機関等による性犯罪被害相談電話などの相談窓口の周知を行うとともに,相談者である被害児童生徒の精神的 負担の軽減・回復を図るため,スクールカウンセラーなど専門家等による支援や相談窓 口担当者の研修等を適切に行うこと。
③採用前・採用段階における取組の推進 については、
〇賞罰欄等に刑事罰のみ でなく,懲戒処分歴等の明示的な記載を求めたりすることなどにより,採用希望者の経歴等を十分に確認すること
〇文科省の官報に公告 された教員免許状の失効・取上げ情報を簡易に検索するための検索ツールについて,本年2月には,その検索可能期間を直近 40 年間に延長したところであり、教員免許状の失効・取上げに係る官報公告について,懲戒免職処分等の具体的 事由等を公告事項として規定する省令改正を行ったところであり、検索ツール等により採用希望者の過去の懲戒免職処分歴等が判明した場合,採用権者はその情報を端緒 として,採用面接等を通じ本人に対してより詳細な確認を行うことが重要であること。
〇採用関係書類の記載や採用面接等を通じ,例えば,採用希望者の経歴等に係 る自己申告の内容に疑義が生じた場合,当該者の過去の任命権者であった教育委員会に 対し,退職理由や懲戒処分事案の概要等の情報を適宜照会し、照会を受けた教育委員会も,これに適切に対応すること。
大変すばらしい内容です。私どもが本年3月3日に文部科学大臣、厚生労働大臣等に提出・記者会見した、下記の「子ども虐待・子どもへの性犯罪ゼロを目指す法改正を求める要望書」で要望した事項の多くが含まれています。誠にありがたく心から感謝申し上げます(下段はNHKニュース)。
https://www.thinkkids.jp/wp/wp-content/uploads/2021/03/20210303_youbousyo.pdf |
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210303/amp/k10012895291000.html |
文科省のこの取組みには、子どもをわいせつ教員から守るために強い意欲を感じ取れます。警察等関係機関との実質的な連携を図ろうとしていることからもそれは見て取れます。
私の1999年ころから数年間の警察庁、大阪府警勤務当時は、教員からではなく外部の不審者から子どもを守る取組が急務であったわけですが(1999年には京都市日野小学校事件が、2001年には大阪教育大学付属池田小学校事件が起こりました)、その当時は、文科省や大阪府の教育委員会に働きかけても、「なんでそんなことを警察に言われなりゃならんのか」というような扱いを受けました。何とか説得して、学校の安全対策などを定めた大阪府安全なまちづくり条例は制定できましたが、今とは異なり、子どもを守るためにベストの取組は何か、関係機関と連携すればより効果的に守れるのではないかと、という発想はなく、縦割りで、他機関排除の姿勢が残念ながら顕著でした。それがここまで、関係機関と連携して子どもを守るためにベストの対策を講じていく、という姿勢になっていただいたのは、大変ありがたく思います。
これに反して、いつまでも、縦割りで、他機関排除の姿勢が変わらないのが、児童虐待問題における厚労省、全国半数程度の児童相談所です。彼らには、文科省の取組みを見習い、縦割り、他機関排除ありきでなく、「虐待問題は福祉で対応すべきで、警察は可能な限り関与すべきでない」などの社会常識からかけ離れた「児童福祉ムラ」のドグマからいい加減に脱却して、今回の通知にみられる文科省のような、子どもを守るためにベストの取組は何か、関係機関と連携すればより効果的に守れるのではないかとという発想を持ち、警察等多くの関係機関と連携して、ベストの取組で子どもを守る態勢を整備するよう、働きかけてまいります。