ブログ182 東京都大田区・葛飾区ほか23区、東京都、厚労省等あてに要望書提出

1 2020年10月27日付で、東京都大田区稀華(のあ)ちゃん虐待死事件、葛飾区4歳男児虐待事件を機に、縦割りを排し要対協実務者会議で関係機関の全件共有と連携して活動する態勢の整備を求める要望書及び、埼玉、愛知、高知等連携の進んでいる他府県の取組についての資料を、大田区・葛飾区ほか23区、東京都・東京都公安委員会、厚労省・国家公安委員会あてに提出しました。

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 大田区の事件は、母親が3歳の稀華(のあ)ちゃんを自宅に放置して、脱水・飢餓状態に陥らせて死亡させたとして、母親が7月7日に保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件です。3歳児健診未受診で、大田区の担当者が2回母子に接触を試みたものの連絡がつかなかったにもかかわらず、そのまま放置されていました。本事案は大田区の要保護児童対策地域協議会(要対協)の実務者会議でメンバーとなっている関係機関で共有されていませんでした(そもそも警察は実務者会議の構成員とはされておらず、一切知らされていませんでした)。葛飾区の事件は、母親と父親と思われる男が、本年1月に4歳男児に暴行を加えたとして8月5日、14日に逮捕された事件です。男児は1月27日嘔吐とけいれんで救急搬送され、硬膜下血腫などと診断されています。また、男児は昨年2月には右腕を骨折し、保育園から虐待の疑いがあるとして葛飾区に通報がなされ、葛飾区の要対協実務者会議には報告され、メンバーである児童相談所(児相)を含む関係機関と共有されていましたが、母親が「自転車で転んだ」と説明したことから、警察にも連絡せず、特段の対応はとられていませんでした。警察は実務者会議のメンバーとはされておらず、警察には葛飾区からも児相からも連絡はありませんでした(警察には本年1月搬送された病院からはじめて連絡がなされました)。

2 いずれも、市区町村に設置される要保護児童対策地域協議会(要対協)の実務者会議の構成員に警察が入り、その場でその案件が共有され、警察等関係機関が連携して対応していれば、防ぐことが大いに可能な事件でした。
そこで、その旨要望しようと大田区長さん、葛飾区長さんとの面談を要望しておりましたが、いずれも拒否されてしまいましたので、時期的に遅れてしまいましたが、この度要望書の提出に至った次第です。ちなみに、最近では、京都市長、山梨県知事、新潟県知事に面談し、同様の要望をし、知事・市長さんにはいずれも受け入れていただいております。
 児童相談所のみならず市区町村が案件を抱え込み、警察にも知らせないまま、虐待死に至る事件が多発しております。案件を共有し連携を図る場として、市区町村ごとに、要保護児童対策地域協議会の実務者会議(代表者会議ではありません。代表者会議は署長等が集まる1年に1回程度の挨拶の場でここに入っているだけでは意味がない)があるのですが、23区では、大田区、葛飾区はもちろん、私の知る限りほとんど入っていません(荒川区では入っています)。そこで、区の実務者会議の構成員に警察を入れるとともに、その場で構成員と虐待案件をすべて共有し、連携して対応する運用とすることを求めるものです。
 1回の家庭訪問で虐待リスクの正確な判断など神ならぬ人間の身で不可能です。それにもかかわらず、児相や市区町村が安易に「これは大丈夫」などとして案件を抱え込み警察等と情報共有しない事案で、虐待死等が多発しています。そこで、事務局である区の虐待担当部局が実務者会議に出す虐待案件を「これは大したことないから他機関には知らせる必要はない」などと安易に判断することなく、把握している案件をすべて構成員と共有する(全件共有)ことが必要となります。
 このような取組は既に全国の多くの自治体では実現しております。しかし、東京都内の市区町村では、東京都の児相の閉鎖的な姿勢の影響かと思いますが、市区町村も全国に比し驚くほど閉鎖的です。

3 実は厚労省も実務者会議への警察への参加と連携については最近では大変理解していただいております(特に下記通達の下線部)。厚労省から下記のような、平成 30 年7月 20 日、 厚生労働省子ども家庭局長 「市町村子ども家庭支援指針」(ガイドライン)の一部改正についてという通達が出され、そこでは、最終頁に後記の通り記載され、自治体に警察を実務者会議に参加させることを求めています。

https://www.thinkkids.jp/wp/wp-content/uploads/2020/11/h30_manual.pdf

ところが、残念ながら、この通達では「必要に応じて」警察を参加させるとあることから、いまだ他機関との連携に消極的な自治体では、「国は警察を参加させなければならないとまでは言っていない」「われわれは必要とは認めない」などとして警察を実務者会議に入れようとしません。私は岡山市からはそう言われて拒否されています。厚労省がこの通達を変えれば、ほとんどの自治体で実現すると思います。そこで、ここの「必要に応じて」を削除するなどし、警察を実務者会議の構成員とするよう厚労省に以前から要望しております。警察庁からも働きかけていただいており、厚労省のご理解はいただけるものと確信しておりますが、いつ改正通達を出してもらえるか決まっているわけではありませんので、厚労省の通達改正を待つまでもなく、各自治体に実現していただくべく、全国に要望活動をしている次第です。

「市町村子ども家庭支援指針」(ガイドライン)抜粋

(3) 要保護児童対策地域協議会における連携
 現在、市町村に設置された多くの要保護児童対策地域協議会において、警察署が構成機関として参画しているが、警察署が要保護児童対策地域協議会の構成員となっていない自治体においては、 構成員となるよう働きかけることまた、要保護児童対策地域協議会のうちケースの進行管理等を行う実務者会議への警察署の参加 が必ずしも十分ではない状況が見受けられる。虐待事案については、事案の軽重を問わず、日頃から子どもと接する機会の多い医療機関、児童福祉施設、学校、警察等関係機関において積極的に情報共有がなされ、協働・連携・役割分担を図りつつ支援が行われることが効果的であるため、代表者会議のみならず、支援を行っている ケースについて定期的な状況のフォローを行う実務者会議や個別ケースについて具体的な支援の内容等を検討する個別ケース検討会議についても必要に応じて構成員として警察の参画を求め、警察との情報交換、意見交換が積極的に行われるよう努めること

4 大田区、葛飾区の事件の再発防止を図る必要性については、大田区、葛飾区はもちろん、近接する23区にはご理解いただけるものと考えております。是非、23区におかれてましては(警視庁もですが)、本要望の趣旨につきご理解いただき、実現していただきますようお願いいたします。また、厚労省にも一刻も早く、本要望を受け入れていただきますようお願いいたします。

 それにしても、児童虐待対策については自治体間で差がありすぎると痛感しております。今回参考資料として紹介した、埼玉県や愛知県、高知県の事例のみならず、大分県、広島県、京都府などなど多くの府県では、全市町村での要対協実務者会議に警察が参加し、全件共有しております。私が要望するまでもなく自主的にそうされています。昔から警察も構成員として参加し全件共有しているある府県の課長さんからは「え、要対協の趣旨からこうするのではないのですか。全国どこでもそうしていると思っていました。そうでないところもあるんだ・・・」と言われたことがあります。自治体の担当者、児相の方々がこういう方たちばかりなら、虐待問題は改善に向かうと思うのですが・・・。関係機関の連携に消極的な自治体に、進んでいる自治体の取組を紹介するなどしてご理解を得ていきたいと思っております。そのためには、自治体の首長さんにはせめて面談には応じていただきたいなと思っております。