1 政府が2月25日に出した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」にはとことん失望しました。「今が瀬戸際、1、2週間が勝負」というからもしかしたら感染防止に効果のある対策を打ち出すかと期待しましたが、いつまでも実効ある再発防止対策を出さない児童虐待防止対策と同様、出来の悪い役人のレポートのような代物でした。
前々メールで述べましたが、せめて、全国の学校の休校措置で子どもたちへの感染防止を図り、満員電車の混雑率を緩和するための一時的な企業の出社抑制、出社時間帯の分散、企業活動の縮小等が是非とも必要ですが、政府の「基本方針」では、「企業に対して発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇 取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかける」としか記載がなく、脱力するしかありません。
他国のように政府が、政治家がリスクを取って、効果ある対策を打ち出すものは全くなく、企業や自治体、学校、国民に「丸投げ」の内容で、安倍総理から企業、国民等への強い働きかけもありません。「今が瀬戸際。1,2週間で爆発的に拡大の危機」でありながら、政府の無策のまま、急速な感染拡大、死者増加が強く懸念されます。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200225/k10012300241000.html |
2 学校の休校措置については、萩生田文科大臣が2月25日、自治体に要請すると打ち出してくれましたが、前メールのとおり、限定しすぎ、条件付けすぎです。政府が検査の数を少なく抑えていることから、判明している感染者の数が少ないだけで、全国どこに感染者がいても不思議はなく、さらに、子どもの感染者がいなくとも、大人から子どもに感染するのですから、休校措置を「いま学校に判明している感染者がいる市町村」に限定することは、全く不合理です。
北海道では26日全校休校措置を打ち出してくれました。素晴らしい英断です。北海道だけが危険であるわけがなく、人口が多く、人口密度が高い東京都、大阪府、神奈川、千葉、埼玉等はよほど危険です。他の府県も同様です。是非全国の自治体で、全校の休校措置を実施していただきたい(離島など特別な事情がある地域を除いていいでしょう)。春休みや卒業式が近づいており、2週間程度の休校ですむのです。躊躇する理由はありません。長期間休校にしろと言っているわけではありません。
是非、文科大臣には、条件・限定を撤廃し、原則全国で今週中に休校措置を検討するよう、全国の教育委員会に発出していただきたいですし、全国の自治体の首長さんは北海道の英断にならい、全校休校措置をとっていただくよう強くお願いいたします。このままでは、「国、自治体によるネグレクト」です。
3 満員電車の混雑緩和対策が極めて重要です。「満員電車」の混雑率をたとえば半分、三分の一程度にするなど目標を設定し、それに向けて、具体的な方策を示し、企業・学校等に対して協力を強く要請するという具体的な踏み込んだ対策をとらないと、政府の「基本方針」のように、企業にテレワークや時差出勤を要請する、とあっさり発表するだけでは効果は期待できません。実効的な具体的な対策が必要です。学校の休校措置をとれば、これだけで何%かは減るでしょう。混雑率緩和のためにも学校の休校措置は必要です。
メインの対策は、サラリーマンの出社を抑制する、出社時間帯を分散するということです。出社の抑制は既に大企業で始まっています。資生堂が8000人、電通が5000人などです(読売2/26)。政府が、大企業にこのような先行する企業の取組に倣い、(単なる例ですが)出社する社員の数に応じて、千人単位、あるいは5割程度などと基準を示し、一時的な出社抑制(休暇取得を含め)を強く働きかけることが必要です。また、通勤時間の分散は、出社の抑制より容易ですので、政府が原則すべての企業に対して、基準を示し出社時間を数パターンに分散することを強く働きかけることが必要です。もちろんこれは単なる例で、他により有効な方策があれば何でもやってみるべきです。
そして、上記を経済団体や経産省、国交省、自治体等で企業に履行を促し、履行状況を把握し、不十分な企業にはさらに働きかける、というぐらいの取組が必要ではないでしょうか。
いずれにしても、政府は単に「方針」を出して、あとは企業に丸投げして、「企業にはテレワークと時差出勤をお願いしました」というだけでは、何もしないに等しいでしょう。これでは、1、2週間後にとんでもなく感染が拡大した後、「政府はお願いしたんですけどね。企業さんがあまりやってくれなかったんですよ」という言い訳づくりみたいなものです。
さらに、一時的な事業活動の縮小も必要です。サンリオピューロランド、ジブリ美術館など自主的に閉館するところも出始めており、大変評価できます。中小企業には難しいと思いますが、財務体力のある大企業を中心に、一時的な事業活動の縮小により、満員電車の混雑の緩和も期待できます。それには、政府がというよりも、政治家が、安倍総理が「今が瀬戸際だ。是非頼みます」と力強く企業に、経済団体に働きかけるしかないでしょう。そしてそれを受け、自治体でも同様の働きかけをしていく必要があります。
4 本来は、法律でこれらを政府が指示・要請できる仕組みが必要で、与野党はこの一か月の間にそのような法律の制定に努力をすべきでしたが何もしませんでした。その上に、「そのような法律がないから何もできませんでした、それで感染が爆発的に拡大し、死者も増えましたがしょうがないんです、反対する人もいますし」、というのは役人の言うセリフで、政治家の言うセリフではありません。反対意見があっても(なんにでも反対する人はいます。児童虐待問題ですらそうなのです。)、子ども・国民の命を守るためにベストの取組をする、たとえ後で大げさだったと言われても行う、という信念が政治家には必要だと思います。
しかし、このままでは、1、2週間後に爆発的に感染拡大したときに「政府としては「基本方針」を示して企業にやるべきことをお願いしました。しかし、企業があまりやってくれなかったんで効果なかったですね。でも私どもの責任ではありません」、と安倍総理や加藤厚労大臣が記者会見で言って、おしまい、ということになってしまうことを危惧します。
爆発的な感染が起る瀬戸際だと思うのですが、政治家が実効ある対策をリスクを取ってやろうとしない現状では、本当に爆発的な感染により「国家の危機」に突入してしまいます。
先ほど安倍首相は26日、「多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベントは大規模な感染リスクがある」と述べ、今後2週間はイベントの中止や延期、規模縮小を政府として要請する方針を表明したとされています。ようやく政府が、主催者に丸投げてなく、リスクを取る姿勢をとりました。安倍総理には、是非、学校の休校措置、満員電車緩和のため企業への強力な働きかけについても、自治体、学校、企業に丸投げでなく、リスクを取って、実効ある感染防止対策を直ちに打ち出すことを強くお願いいたします。