ブログ108 「児相ファースト」でなく「子どもファースト」を、小池都知事、厚労省にお願いします

 結愛ちゃんの死を無にしないためにも、児童相談所と警察の全件情報共有と連携しての活動を求める署名にご賛同お願いします。ネット署名と署名用紙による署名と用意しています。(本メルマガは後藤啓二が名刺交換等させていただいた方にお送りしております。)

https://www.thinkkids.jp/

 遅くなりましたが、6月17日の京都新聞に全件情報共有の必要性を書いていただきました。

https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/

 昨年には産経新聞社説にも全件情報共有の必要性を書いていただきました。ありがたい限りです。また、これまで全件情報共有と連携しての活動にご賛同していただいている方々の意見をご紹介させていただきます(私のも含めて)。下記をご覧ください。

https://www.thinkkids.jp/

1 さて、政府に関係閣僚会議が設置されたのはいいのですが、もともと全件情報共有しないといっている小池都知事に加え、厚労省が全件情報共有は難しい旨発言され、小池都知事は「ハイリスク」な案件だけ警察と共有すると言い出しています。
 これをお読みの皆様は既にお分かりの通りで長々と説明しませんが、児童相談所が案件を抱え込み、みすみす虐待死に至った子どもは10年で全国で150人、東京都で26人(区市も含む)に上り、そのほとんどで警察と情報共有すらしていない、結愛ちゃん事件もそう、となれば、警察との情報共有が不可欠で、共有する情報の範囲は「ハイリスク」な案件に限定せず、虐待の疑いがある案件すべてとならざるを得ません。 
 なぜなら、「ハイリスク」なものとして何らかの基準を作ることになると思いますが、どんな基準を作ろうと、何がハイリスクで、残りが安全だとは正確に判断できないからです。1回や2回家庭訪問しただけで正確な虐待リスクの判断など神ならぬ人間の身で不可能です。これまで児童相談所が知りながら虐待死させた案件は児童相談所が「虐待ではない、緊急性が低く警察との連携は必要ない」と判断したもので起こっているのです。「ハイリスク」でないと判断した案件で子どもが安全であるという保障など何もないのです。これまでの児童相談所が「ハイリスク」でないとして案件を抱え込み、みすみす虐待死に至った子どもは10年で全国で150人、東京都で26人(区市も含む)に上り、そのほとんどで警察と情報共有すらしていないことを全く教訓としないことは驚き、あきれ、怒りすら覚えます。高知県はこれと正反対で、平成20年に児童相談所が知りながら子どもを救えなかった事件を教訓に、児童相談所、高知市、警察、教育委員会などの関係機関で全件情報共有し連携しての活動に取り組んでいます。これが国民が役所や知事に期待する姿勢だと思います。

 他機関連携に消極的な児童相談所の職員ならともかく、なぜ政治家である小池都知事が、高知県のように考えないのか。小池都知事は役人の対応と一緒なのです。この4年間、厚労省や10前後の都府県・政令指定都市の役人にお願いし続けて、拒否され続け、知事に直接働きかけた結果短期間で実現していただいた愛知県、茨城県の経験からも、心底驚いております。推測ですが、小池都知事は、東京都の役人の「児相ファースト」に乗せられてしまったのではないでしょうか。もちろん、「児相ファースト」ではなく「子どもファースト」が必要なのですが。

2 私は、この4年間、官邸、厚労省、警察庁、東京都、大阪府・大阪市・堺市、愛知県・名古屋市、兵庫県・神戸市、千葉県・千葉市、埼玉県、三重県等を訪問し、局長や児童相談所の所長や県・市の担当部長等に会い、全件情報共有を要望し続けております。この中で、受け入れていただき実現していただいたのは、茨城県と愛知県でいずれも知事のリーダーシップによるものです。埼玉県と岐阜県の知事には本年中に実施する旨記者会見で表明していただきました。他のいずれの自治体は、副知事、部局長、課長、児相の所長に何度要望してもいずれも拒否され続けています。
だいたいこういうパターンです。私は、まず県庁の課長さんや部局長さん(児童相談所勤務の経験のない方が多い)のところに全件情報共有の要望に行くのですが、かなりのところで、
「いいですね。警察さんが一緒にやってくれると、子どもも今までより助けることができるし、うちの児童相談所も楽になるし。早速、児相の所長に話してみます」
と言われます。しかし、一週間後ほどすれば、
「すいません。児童相談所がいやだといっているもので、ちょっとこの話は・・・」
と断られます。私は、「あなたはいいとおっしゃったじゃないですか。何とか説得してくださいませんか」と頼んでも、
「私は個人的には賛成なんです。でも、警察ならトップがこの方針でといえば、それで動くのでしょうが、県庁はそうもいかないんですよ。特に児相は」(ある都道府県の局長)

とか、
「君の言う通りなんだけど、これは児童相談所の職員の心、メンタリティ、自分たちの仕事のやり方についての誇りの問題でもあるので、彼らが納得しないのに僕からやれとはなかなか言えないんだよ」(ある都道府県の先輩の副知事)
などと言われ、応じていただけません。しかし、児相職員がどんなに不合理な排他的なことをしていても、彼ら自身が自主的に改める気にならない限り連携しないというのではいつまでも子どもが救われません。こんなお役所の論理を言われて「はい、そうですか」、と引き下がるわけにはいきません。

 一方、愛知県の大村知事は、私が要望に行くと、知事室に担当部長を同席させておられ、部長さんに「全件情報共有はもっともだと思うんだが、なんでうちの県はやってないの」とお聞きになり、部長さんが「児童相談所によると、虐待には程度があって警察と連携する必要がないものもあるので、全件情報共有は必要ないと言っています」と回答すると、「それは危ないでしょう。一回家庭訪問しただけで緊急性は低いなどと断定できるはずはないでしょう。子どもの命を最優先で、関係機関が幅広く連携するよう検討してください」と指示され、直ちに警察との全件情報共有を実現していただきました。

 私は、これが、役人と政治家の違いだと感じており、小池都知事や都議会議員の方にもそう言っていただけると確信していましたので、「子どもを守る」方向でなく、「児童相談所の職員を守る方向」の対応をされて、心底驚きました。

3 上記の県の局長、副知事の言葉どおり、さすがに全件情報共有したほうがいいとわかっている役人がほとんどだと思います。特に上層部は。しかし、児童相談所の職員がいやだといえば、説得してやらせることはしないのです。これがお役所仕事です。お役所の第一優先順位は「職員の福利厚生」であり、「しんどいことはしない、させない」「余計なことはしない」「ましてや他機関との連携なんてめんどくさいよね」というのが鉄則です。「子どもを守る」なんてはるかかなた後方の順位です。
 先に触れましたが、私はこれを役所の「児相ファースト」と呼んでいます。「児相ファースト」でなく、「子どもファースト」だろうが、どこの国にこんなお役所仕事が蔓延し、救えるはずの子どもを救えない取組を続けている国があるんだ、という思いでいます。

 「児相ファースト」を「子どもファースト」へ。できるのは知事、大臣しかないのです。私が直接見聞したのは愛知県の大村知事ですが、茨城県、埼玉県、岐阜県の知事さんも、知事のリーダーシップで、「役人の福利厚生―今までどおりやらせてあげるよ、他機関との連携なんていやだよねー」という、役人同士の鉄則を破り、児童相談所に全件情報共有に応じるよう指示していただいたんだと思います。
 小池都知事、都議会議員の方には、ぜひ「児相ファースト」でなく、「子どもファースト」へ、他の多くの知事さんと同様方針転換していだたきますよう、国は「全件情報共有と連携しての活動」を打ち出していただくよう心からお願い申し上げます。