1 平成29年4月28日、衆議院厚生労働委員会で民進党の井坂信彦議員は、
①児童相談所と警察等関係機関の情報共有をすべきでないのか、
②転居等で不明となった虐待を受けている子どもたちを探すため、ビッグデータを分析し、虐待の有効な対処方法を研究するためにも全国データベースを整備すべきでないか
と厚労大臣等に質問されました。これに対し、厚労省の吉田雇用均等・児童家庭局長と塩崎厚労大臣は、
いろいろな工夫をするなりなんなりをす ることによって、警察だけじゃなく、関係機関が 広く情報共有をするという取り組みをそれぞれの地域で進めていきたいというふうに思っております。(吉田局長)
昨年の附帯決議(※)の中にも情報共有について御指摘をいただいておりますので、こうした提言、そして附帯決議を踏まえて、児童虐待の原因や背景を把握するためのデータ、そしてその収集方法について、今年度、必要な調査研究を行うというふうにしておるところでございまして、積極的に考えていきたいというふうに思います。(塩崎大臣)
(※昨年の附帯決議とは、児童相談所と警察が虐待案件に関する情報が「漏れなく確実に情共有されるよう」政府は検討せよ、という平成28年5月26日の参議院厚生労働委員会の附帯決議をいいます。)
と答弁されています。質疑の全体は添付のとおりですので、是非ご覧いただければと存じます。
私が今年の2月に厚労省の山本審議官をお訪ねし、児童相談所と警察の情報共有を規定する法改正をお願いした際には、拒否されました。考えを変えていただいたのでしょうか。
2 児童相談所と警察の情報共有がなくては全く意味はないのですが、情報共有の仕組みとして、児童相談所と警察で共通のデータベースを整備し、それぞれが通報を受けた虐待案件を入力することで、常に情報共有を実現する仕組みとすることが必要です。
高知県では先進的に関係機関の情報共有が進んでおり、井坂先生もご指摘のように、毎月児童相談所が会議を主宰し、警察や教育委員会などとフェイストゥフェイスで月20~30件の虐待案件の情報共有をしているわけで、これが最も優れたやり方だと思います。しかし、年間1万件あるような大府県ではこのようなやり方はできません。共通のサーバに児童相談所と警察がそれぞれ把握した案件を入力することで、常時情報共有するという仕組みにしなければ、到底業務が行えません。また、こうすることにより、現在は書面で行われている警察から児童相談所への通告もデータベースでの入力で行えることになり、多大な業務軽減となります。
これをまずは、都道府県レベルで整備することが必要です。そして、データベースに虐待対応の中核となる病院あるいは市町村の母子保健部局や福祉部局がアクセスし、懸念のある家族について検索してヒットした場合には、虐待を念頭に子どもの保護を第一に対応することができるようにすることも必要です。情報共有しても、簿冊にとじこむだけでは、実際にはそのような事案であった場合でも担当者は分からず、見逃してしまうのです。簿冊にとじこむような情報共有は意味がないのです。データベース化して検索できるようにしなければ実務では機能しません。イメージ図と考え方は次のようになります。
児童相談所と警察、市町村、病院との情報共有ネットワークシステムの整備について
(情報共有ネットワークシステムの整備)
1 児童相談所、警察間で情報共有のためのネットワークシステムを整備する。
(「虐待・所在不明案件データベース」の整備による情報共有の実現)
2 警察又は児童相談所に設置するサーバに「虐待・所在不明案件デー
タベース」を設け、警察、児童相談所が把握した虐待案件、乳幼児健診未受診等で子どもの安否が確認できない案件をその都度入力する(現在書面で行われている警察から児童相談所への通告もこの入力により行う。)。
(連携しての活動と常時情報共有の実現)
3児童相談所、警察で共同作成するマニュアルに従い、連携して虐待家庭への訪問、安否が確認できない児童の捜索・保護活動を行うとともに、把握した状況をその都度各機関が同データベースに入力することにより、常時の情報共有を図る。
(市町村及び地域中核病院による同データベースの利用)
4市町村及び地域で児童虐待対応の中核的な役割を果たす病院から同データベースへのアクセスを認め、来所した児童が被虐待児あるいは安否が確認できない児童であるかどうか確認できるようにし、保護を図ることができるようにする。
そして、 速やかに「全国虐待・所在不明案件データベース」を整備します。その狙いは二つあります。
まず、転居等により所在不明となった被虐待児その他の安否が確認できない児童の発見・保護に活用します。現在は、信じられないことに、児童相談所は把握している虐待家庭が住民票を残したまま転居した場合には、他の児童相談所にファックス1枚送るだけです。受け取ったほうは簿冊にとじるだけでしょう。警察にも連絡しません。要するに、ほったらかしで、何もしていないのです。
次に、全国データベースを大学等に提供し、データの調査・分析を依頼します。それにより、虐待予防、虐待対応、医療費の削減等の方策について有効な提言が得られることが期待できるのです。現在は、このような分析は何一つやられていません。
今国会で、井坂議員の質問で厚労大臣から、情報共有とデータベースの整備につき前向きな答弁を引き出すことが出来ました。是非心ある議員の方には引き続き、国会で質問していただき、厚労省に子どもを虐待から守るために必要不可欠な児童相談所と警察の情報共有とデータベースの整備を進めさせていただくようお願いいたします。それでも厚労省が動かない場合には、心ある議員の方にお願いして、議員立法で成立させていただきたいと考えております。