いつも「子ども虐待死ゼロを目指す法改正を求める署名活動」にご理解賜っておりますことに厚くお礼申し上げます。
1 今国会での「児童相談所と警察 の情報共有と連携しての活動」 を規定する法改正を求める緊急ネット署名運動を始めました。下記をクリックしていただき、ご賛同いただきますようお願いいたします。氏名・アドレス・郵便番号を入力し「賛同!」ボタンを押すだけで完了です。
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2 さて、児童相談所と警察の情報共有については、アメリカやイギリスでは当然と申し上げておりましたが、その詳しい内容について、ご紹介させていただきます。
拙著「子ども虐待死ゼロを目指す法改正の実現に向けて」に引用させていただいたご論文の引用と、ご賛同者である認定NPO法人チャイルドファーストジャパン理事長の山田不二子先生からご提供いただいた、アメリカの担当官の説明と児童保護部局や警察などの多機関の「子ども虐待機関協定書」です。
https://www.thinkkids.jp/wp/wp-content/uploads/2016/04/oubei.pdf
「子ども虐待機関協定書」のごく一部を紹介します。
「一般的に、犯罪へと発展する要素のある通報に対して、 ワーカーと法執行機関とは一緒に介入する (たとえば、最近外傷を負ったばかりの身体的虐待、加害者が被害児に接触できる状況にある性虐待、身体的な危害が加えられると脅 されている子どもやひとりで置き去りにされている乳幼児などといった極端なネグレクトや危害の怖れ)また、 ワーカー、子ども本人、その他の人物が危機に曝されているときにも ワーカーと法執行機関とは一緒に出動する。
法執行機関へのクロス・リポーティング
スクリーニングを実施する職員が子ども虐待の新規申し立てであると認定した通報は全て、所轄の法執行機関にクロス・リポーティングされなくてはならない。」
これらを見れば、日本の児童相談所が警察に情報提供しないシステムというのは、子どもを守るために到底あり得ない、アメリカやイギリスでは、全件情報共有の上、原則共同対応であるのに比べると、アンビリーバブルなほど遅れていることがお分かりいただけると存じます。
今回、厚労省のみならず警察庁にもご理解いただけなかつたことは、警察庁OBである私にとり誠に残念至極です。せめて、警察庁からは情報共有を申し入れたが、厚労省が拒否したのなら、まだ私も救いがあったのですが、(確かな話は知りませんが、)どうもそうでもなさそうです(詳しい経緯をお知りの方はお教えください。もし違うなら喜んで訂正します)。そうだとすると、警察と児童相談所は同じ穴のムジナになってしまいます。例外なく情報共有に反対した多くの都道府県(児童相談所)と異なり、いくつかの都道府県警察の本部長にはご理解していただき、前向きな姿勢を示していただいたことが無になってしまいます。
アメリカでもイギリスでも、多機関が情報共有して連携して活動するには、時間と労力がかかることが他の論文でも紹介されています。しかし、それを嫌がっていては、いつまでも虐待死させられる子どもが増えこそすれ減ることはないのです。
警察庁は、虐待死させられる子どもを少しでも少なくするために、そして、国民の信頼を失わないためにも、是非、今からでも、警察庁から厚労省に働きかけていただいて、早期に情報共有を実現していただきたいと強く望みます。
3 フェイスブックでは紹介しましたが、4月30日午前7時半からのTBSラジオ「大宅映子の辛口コラム」で、ご賛同者である大宅映子さんから、拙著「子ども虐待死ゼロを目指す法改正の実現に向けて」をご紹介いただいて、私どもの求める法改正、特に、児童相談所と警察の情報共有の必要性について、東京都葛飾区あいらちゃん虐待死事件を例に挙げ、ご説明いただきました。15分近く詳しくお話しいただきました。多分拙著をすべて読んでいただいた上でのご紹介と拝察いたします。大宅さんのような方にそこまでご協力ご尽力賜りましたことに、心より御礼申し上げる次第です。多くの方に聴いていただいたと思います。
また、5月2日には「法学館憲法研究所」のホームページに、「子ども虐待死ゼロを実現するための緊急ネット署名にご賛同ください」を掲載していただきました。
https://www.jicl.jp/index.html https://www.jicl.jp/hitokoto/index.html
いろんな立場の多くの方から、ご賛同いただき、ご紹介、訴えの場をいただいております。反対するのが「お役所」だけであるにもかかわらず、実現しないなんて、独裁国家、共産主義国であればともかく、この日本であっていいのかと思います。
憲法との話でいえば、なぜ日本で子どもを虐待から守る取組が甚だ貧弱なのかという点については、拙著「子ども虐待死ゼロを目指す法改正の実現に向けて」でも引用させていただいている東北大学法学部教授の水野紀子先生の下記ご指摘のとおりだと思います。要するに、「国家権力が介入するよりも、家庭内の弱者よりも強者が守られるのが人権の正しい在り方」、「国家権力に子どもが助けられるくらいなら、子どもが殺されても仕方がない」、という考え方に固執していることだと思います。そのような考え方に、本来、子どもを守るべき機関である「お役所」が、これ幸いと、不作為を決め込んでいる、子どもを守る取組など大変でやりたくないから、というのが、悲しい日本の実情と考えます。
「欧米諸国では、子の奪い合いのみならず、扶養料請求等についても伝統的に刑事罰が活用されてきた。つまり家庭内における弱者保護のために必要とあれば刑事罰の脅しをもって国家が積極的に介入することは、憲法の人権擁護の要請に合致するものと理解される。これに対して日本においては、戦前の状態への警戒心から、憲法は主に国家権力からの自由の保障として機能し、家族内への国家介入については、それを否定する論拠とさえされる。児童虐待に関しても、欧米諸国では、国家が有効な救済を行わないことは、人権を守る任務を負う国家の憲法違反として、その責任が問われる。日本においては、児童相談所は、通報される虐待ケースに対応しきれない状態であり、多くの子どもたちは虐待される家庭の中に放置されているが、そのことの国家責任は問われない。」(水野紀子「児童虐待、配偶者間暴力、離婚」「児童虐待の予防と対応」町野朔(編)所収)
今国会での法改正の実現に向け、最後まで取り組んでまいる所存です。何卒よろしくご理解賜りますようお願い申し上げます。