ブログ50 情報共有した上で連携しての活動を義務付けないと再発防止は不可能

1 いつも子ども虐待死ゼロを目指す法改正の署名活動にご協力賜っておりますことに厚くお礼申し上げます。

 2015年3月4日日本経済新聞では、「事件8日前の2月12日。上村君への暴行をめぐり、18歳の少年宅に昼頃、知人らが集まった。少年の家族が「押しかけているので帰らせてほしい」と110番した。駆け付けた署員に、少年宅前にいた一人が「友達の弟の友達が殴られた」と伝えた。署員が中に入り18歳の少年に話を聞くと、殴ったのを認め、上村君の名前を出した。このため、まず少年が上村君に電話をして話をし、その後、署員に代わった。上村君は署員に「1カ月くらい前に殴られたけど、仲直りしているので大丈夫」と話した。・・・所員は上村君の名字は確認したが、名前は聞かず、そのままになった。」と報じされています。
 事前に警察官が主犯として逮捕された少年による上村君への暴行を把握していたわけで、このことをもって何とかならなかったのかというテレビのコメンテーターのコメントもありました。

2 しかし、現場の警察官は、上村君の深夜はいかいや不登校の事実及び不登校に関する家庭の対応状況等の情報は得ておらず、そのような状況で「普通のトラブルとして扱った」(同紙)とする対応は、警察の現場を知る者としてはやむを得ないと考えます。現場の警察官が的確に対応するためには、組織としての警察と学校が情報を共有し、情報を組織として照会可能なように管理していなければ不可能なのです。
 本事件でいえば、学校から警察署に対して、上村君の不登校の事実とそれに対する家庭の対応状況、深夜はいかいや非行グループとの交友関係等把握している情報が提供され、警察署少年係でその情報が、たとえば「虐待ネグレクト・不登校懸念」情報として登録され、現場の警察官が110番通報を受け臨場した場合に、警察署に照会することにより事案の全容が把握できるようにし、警察が組織として、上村君の保護のために必要な対応がとれるようにしておかなければならなかったのです。
 全国で何万人いるか分からない、このような環境にいる子どもを守るためには、全国のすべての学校と警察、児童相談所もですが、それぞれ有する情報を共有しておく必要があるのです。そして、そのためには、法改正をしてこれらの機関に情報共有を義務付けなければ、到底スムーズに行われず、同様のケースの再発防止を図ることができません。

3 警察はこのように110番で突然対応する場面があるわけですから、必要な情報を有してさえいれば、子どもを守るために有効な対応ができるのです。ところが、現状は、学校からも、児童相談所からも情報の提供がないので、子どもを守ることができないことがみすみす生じています。
 虐待案件で言えば、虐待家庭で子どもが激しく泣いている、虐待ではないか等の110番通報を受けても、警察が児相から情報の提供を受けず、現場に向かう警察官も当然そのような情報を有していないため、親に「夫婦喧嘩である」などと騙され、虐待の有無を詳しく調査せず、虐待を見逃し、虐待死を防ぐことができなかったという事例が生じています。児相が把握していながら警察に情報提供せず、虐待死させられてしまった事案として2014.1東京都葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件が、児相は把握していなかったが小学校が把握していた事案として2009.4大阪市西淀川区松本聖香ちゃん虐待死事件があります。
 また、警察がDV事案や子どもの非行や家出事案などで対応する場合も、その家庭が虐待家庭であるという情報を有していれば、児相への通報も含めより子どもの保護のための活動を行うことができますが、現在はそのような活動を行うことができず、たとえば、虐待に耐えかねて家出した子どもをそのまま家に戻してしまうことにもなりかねません。

4 虐待情報はもちろんですが、不登校の事案でも虐待・ネグレクトの疑い、犯罪被害に逢うおそれがあるなどの情報については、学校・児童相談所は警察に情報
提供しなければ、今後も、警察が救うチャンスがあっても、みすみす子どもを虐待死・犯罪死させてしまうことになってしまうのです。
 私は、東京都葛飾区愛羅ちゃん事件が起こりながら、1年以上たった今も情報共有しようとしない東京都と警視庁に子どもの命を守るため、再発防止のための義務を履行していない旨指摘していますが、上村君事件により、川崎市教育委員会と神奈川県警察は、直ちに不登校のうち対応が必要なものについて、情報共有して警察官が的確に対応できるようにしておく義務が生じていることを指摘しておきます。そして、このことは、当然、川崎市教委と神奈川県警察のみならず、全国すべての教育委員会、警察にも当てはまるものです。
 もちろん、虐待情報の共有についても、東京都と警視庁以外のすべての都道府県の知事部局と警察本部の間でも同様です。私の知る限り、虐待情報については高知県で児童相談所と警察との間で情報共有されていますが、それ以外については承知していません。
 いずれの機関もこういう態度ですから、やはり法改正により虐待情報・不登校のうち対応が必要なものについて、各機関で情報共有を義務付け、さらに、連携して子どもを守る活動をとるように義務付けしなければ、再発は防ぐことができないことを、このメルマガでも何十回言ったか分かりませんが、上村君事件を受け、さらに声を大にして訴える次第です。
 私どもの「子ども虐待死ゼロ」を目指す法改正を求める署名活動に何卒ご理解ご支援賜りますようお願い申し上げます。