最近の主な死亡事例
小山氏兄弟殺害事件
概 要
平成16年9月、栃木県小山市で当時4歳と3歳の小林一斗くんと隼人くんの兄弟が、父親が兄弟とともにその身を寄せていた父親の友人に橋の上から川に向けて投げ落とされ殺害された事件。
経 緯
男が兄弟に対して負わせた傷をコンビニの店長が警察に通報し、警察が保護し、その後児童相談所が保護し、祖母宅に引きとられた。
その後児童相談所は父親の強い要求を受け、兄弟を受け引き渡してしまい、再び男と同居生活をおくるようになった。
問題点
児童相談所が、父親の強い要求を受け、虐待が継続するおそれがきわめて強いにもかかわらず父親に引き渡してしまい、かつ、引渡しの条件である父親の友人宅に戻さないという条件も守られていなかったにもかかわらず、一時保護をせず、みすみす殺させてしまった。
岸和田市中学生餓死寸前事件
概 要
平成16年1月、大阪府岸和田市で当時15歳の中学生の男子が、父親と同居の女から食事を与えられず餓死寸前で救出されたが、重度の知能障害、身体障害が残った事件。
経 緯
中学校を平成14年10月から不登校になったことから、担任教師が家庭訪問をしたが、父親と同居の女から「寝ている」などと言われ、中学生に会うことができず、それ以上安全を確認する手段を講じなかった。中学校は児童相談所に2回相談したが、児童相談所は何の対応もとらなかった。
問題点
不登校が続き、同居する親が会わせようとしない状況が1年以上も続いているのに、学校はただ家庭訪問を繰り返すのみであった。児童相談所に至っては、何もしなかったばかりか、事件発覚後、中学校から相談を受けていながら、児童虐待防止法上の「通告」ではなく「連絡」であったので安全確認をしなかったと、責任逃れの言い訳をした。近所の住民が虐待を知りながら誰も通告しなかったことも、大きな問題であった。
福島県泉崎村3歳児餓死事件
概 要
平成18年5月、福島県泉崎村で当時3歳の白髭広ちゃんが、父親と母親から食事を与えられず餓死した事件
経 緯
本事件では、広ちゃんの姉と兄に対する虐待により、姉と兄が児童相談所に一時保護され、児童養護施設入所措置がとられていた。
広ちゃんに対しても虐待行為がなされていることは児童相談所も警察も知っていたが、ある時期以降、安否の確認もしなくなり、死亡するに至った。
問題点
児童相談所が数回の虐待が強く疑わせる情報の提供を得ながら、ある時期以降、安否の確認をせず、電話しただけで、みすみす死亡させるに至っている。警察も虐待がなされていることを知りながら、保護も捜査もしていなかった。
長岡京市3歳児餓死事件
概 要
平成18年10月、長岡京市で当時3歳の佐々木拓夢ちゃんが、父親と同居の女から食事を与えられず餓死した事件。
経 緯
本事件では、同年3月、拓夢くんの姉が夜中に自宅から放り出され、近所の住民が110番通報し警察が保護し、その後児童養護施設入所措置としたが、拓夢君は保護しなかった。
6月に、近所の住民からの3件の情報を民生児童委員が児童相談所に連絡。
9月から食事をほとんど与えなくなり、民生児童委員が「拓夢ちゃんがほとんど外に出ていない」と児童相談所に連絡。
児童相談所が父親に電話で問い合わせるが、父親から「外に出るのを嫌がる」と言われそのままに。
10月に入り民生児童委員が「拓夢ちゃんがしかられて泣いている声が聞こえる」との児童相談所に連絡するが、児童相談所はまったく動かず、その直後死亡。
問題点
児童相談所が数回の虐待が強く疑わせる情報の提供を得ながら、一度も家庭訪問もせず、電話しただけで、みすみす死亡させるに至った。岸和田事件と同様に、児童相談所は、寄せられた情報を「通告」ではなく「報告」として処理していたとされている。通告だと安全確認などの義務が生じるので「通告」ではないとして処理していたようで、多くの児童相談所でこのような対応をしているのでないかとの疑念が生じている。
蕨市4歳児餓死事件
概 要
平成20年2月、埼玉県蕨市で当時4歳の新藤力人ちゃんが、同居していた父親と母親から食事を与えられず餓死した事件。
経 緯
力人ちゃんは生後すぐに乳児院に預けられたが、平成18年1月に保育所に通わせるという条件付で両親に引き渡された。しかし、一度も保育園に通わせなかった。市や児童相談所は自宅訪問を繰り返し、蕨警察署には住民から「大きな泣き声が聞こえる」と110番通報が寄せられていた。死亡の3カ月前に市職員がやせすぎを確認。死亡直前の1月下旬、2月上旬には両親から面会を拒絶され、その直後死亡。
問題点
児童相談所が虐待が強く疑わせる情報の提供を得ながら一時保護せず、警察も110番通報を受けながら「明確に虐待を示すあざやけがは発見できなかった」として保護も捜査もしなかった(朝日新聞平成22年3月6日)。児童相談所は一時保護しようとしたが、さいたま家庭裁判所に相談したところ「明確な虐待が認められなければ難しい」とする回答を受けて、保護を断念していたとされている(読売新聞平成22年3月5日)。児童相談所、警察、家庭裁判所のいずれもが、虐待を知りながら見殺しにしてしまった。
大阪市岬町乳児虐待死事件
概 要
平成20年2月、大阪府岬町で生後5カ月の大道景介ちゃんが父親に殴り殺された事件
経 緯
本事件では、平成19年12月に、右足骨折した乳児について骨折の原因が不明として虐待の通告があり、家庭センターの職員が父母と面接を実施。
検討会議で虐待と事故の双方の可能性があるとして、調査の実施と見守りを行う方針とした。
その1ヶ月後の平成20年1月に、病院から景介ちゃんが頭部骨折で入院しているが原因不明であるとして二度目の虐待通告がなされた。
診断に当たった医師は虐待が疑われるから一時保護すべきと家庭センターに伝えたが、家庭センターは対応会議で「原因の特定に至らないから」として一時保護を取らず在宅指導措置を続けた。
その約2週間後に、景介ちゃんは父親に殴り殺された
問題点
児童相談所が医師の一時保護すべしとの意見を無視して、一時保護せず、子どもが虐待死させられた事例である。
児童相談所は、医師が虐待が強く疑われるとしながら、両親が否認したことから「虐待が原因とは決められない」と判断し、「両親に対し指導に従うことを条件に一時保護せず在宅指導とする。指導を拒否すれば一時保護する」という方針を決定している。
しかし、0歳児が短期間に右足骨折と頭部骨折を続けて負うという事案について親が否認しているからといって、医師の意見も無視して一時保護しなかった児童相談所の行為は、たんなる過失を超えて、信じられないほどの重大な過失があったことは明らかである。一時保護という権限の不行使が妥当でないというレベルを超え、違法に至っている。
寝屋川市6歳保育園児虐待死事件
概 要
平成20年2月、大阪府寝屋川市で6歳の女児が母親の同居の男に殴り殺された事件。
経 緯
平成19年10月、寝屋川市家庭児童相談室は保育所から虐待の通告を受けていたが、安否確認も親との面会もしないまま放置した結果、殺害された。
問題点
本事件では、寝屋川市は、保育所から女児の顔に青あざがあること、母親と同居する男性がいる、養育困難であるという情報が何度も寄せられていながら、「軽度」と判断した。家庭訪問もせず、保育所に親に注意してくれ、とか主任児童委員に見守り依頼をしただけであった。
母親と同居男性がいるという虐待リスクが大いに疑われる家庭で、繰り返し傷を負わされているという通報を何度も受けながら、「軽度」と判断し、何の対策も講じていなかった。一般人でも危険と判断できるだろう。職務怠慢か判断能力がないのか、理解に苦しむ。
伊丹市5歳女児虐待死事件
概 要
平成20年4月、伊丹市で菅明日香ちゃん(5歳)が母親から暴力的に揺さぶられ、揺さぶられ症候群で死亡した事件。
経 緯
明日香ちゃんは、生後すぐネグレクトにより乳児院に保護され、その後家庭に戻されたが、右腕骨折により虐待として一時保護され、児童養護施設に入所していた。20年2月、自宅に戻されたがその直後から、首付近にあざがあるなどとして住民から3回虐待の通報があり、児童相談所が母親と面接していたが、一時保護はされていなかった。
問題点
二度も虐待により親子分離していた案件でありながらなぜ、再々度、親に引き渡すのか。いかなる根拠でそのような判断をしたのか説明できるのだろうか。さらに、引渡しの直後から虐待の通報がありながら保護しなかった。どうすればこういう判断になるのか。いたずらに家族再統合を目指したのか二度も虐待により親子分離していた案件でありながらなぜ、再々度、親に引き渡すのか。いかなる根拠でそのような判断をしたのか説明できるのだろうか。
さらに、引渡しの直後から虐待の通報がありながら保護しなかった。どうすればこういう判断になるのか。いたずらに家族再統合を目指したのか。もしそうだとすると、明日香ちゃんは家族再統合という理念の犠牲になったといえる。
川崎市3歳児虐待死事件
概 要
平成20年11月、川崎市で市川愛芽ちゃん(3歳)が実母と同居男性から殴り殺された事件
経 緯
母親は平成20年3月から男性と同居をはじめ、その頃からしつけ名目で殴るける、水風呂に長時間つける、水の入ったペットボトルを持った手をガムテープで固定し立たせたままにしたり、ひもで縛りカーテンレールに縛るなどの虐待を繰り返していたが、11月、腹部を強打し、医療機関に受診させないまま死亡。
問題点
児童相談所は、保育所から通告がなされ、その後も、けががある、通園しなくなったなどと度重なる通報がなされ、男性との同居なども知りながら、リスクアセスメントの見直しもしなかった。
三田市5歳児虐待死事件
概 要
平成21年11月、兵庫県三田市で、寺本夏美ちゃん(5歳)が継母により頭部を強く揺さぶられ硬膜下血腫により殺害された事件。
経 緯
平成21年6月、同居する継母による身体的虐待により、夏美ちゃんを児童相談所が一時保護した。7月に一時保護を解除し、その後家庭訪問などをしていたが、11月に継母により殺害された。
問題点
児童相談所は、虐待により一時保護しながらわずか一月で解除している。保護を解除し自宅に戻した後も、二度子どもに傷があることを確認しながら、特段の対応を取らなかった。なぜこのような判断・対応となるのか理解に苦しむ。虐待の危険があることは明白だったはずだ。本事件も家族再統合の理念により引き起こされたものなのだろうか。
久留米市5歳児保育園児虐待死事件
概 要
平成22年6月、福岡県久留米市で母親と二人暮らしの保育園児(5歳)の江頭萌音ちゃんが、マンションで母親に首に7㎏ものペットボトルをかけられ、苦しみのあまりもがいて心臓が破裂し死亡した事件。
経 緯
母親は夫と離婚後、萌音ちゃんと二人暮らしを始め、虐待行為を行うようになった。萌音ちゃんは、タオルや腕で首を絞めたり洗濯機に入れられるなど拷問ともいえる虐待行為を受けていた(朝日新聞平成22年7月22日)。
保育園から児童相談所に虐待通告され、保育園が見守りを行っていたが、その間も、何回もあざができたり、母親が虐待と思われてもいいかと思って頭をたたいたと発言したりしていながら、久留米市は、重症度を最初が「軽度」、その後「中度」とするのみで、一時保護措置しなかった。
問題点
繰り返し傷を負わせ、母親も虐待行為を自認し、アルコール依存症のおそれもあるなど虐待が続く危険な状態であることが明らかであったことから、児童相談所は、一時保護すべきであった。
東京都江戸川区小学校1年生男児虐待死事件(事件K)
概 要
平成22年1月、東京都江戸川区立小学校1年生であった岡本海渡君が食事に時間がかかることに腹を立てた両親から暴行を受け、意識不明になり病院へ搬送されたが死亡した事件。海渡君の体にはヤケドや古い傷、痣があり、長期にわたって虐待を受けていた可能性がある。母は当時22歳で、15歳で海渡君を出産。父は当時31歳で電気工。平成21年2月海渡君の母と結婚し海渡君と同居していた。
経 緯
平成21年9月、海渡君が歯科を受診。歯科医があざに気づき、江戸川区子ども家庭支援センター(以下、「センター」という)に通報。センターが小学校長に連絡し、状況を担任が確認したところ、外傷はなかった。
その後海渡君が欠席し、自転車で怪我と連絡があり、担任が家庭訪問。その際、海渡君の様子に異変を感じ、学校に戻り、学校長に報告。状況を把握するため、学校長・副校長・担任が再度家庭訪問したところ、同居男性が暴力を認め、二度と殴らないと約束する。学校は家庭訪問時の状況をセンターに報告。センターが児童相談所に文書で情報提供。同月末、センターが学校長に連絡し、海渡君の状況について、とくに問題ないことを確認。今後、変わったことがあれば連絡するよう伝える。
その後、海渡君は墨東病院に脳内血腫で入院したり、長期欠席や欠席を繰り返す状況であった。
問題点
【学 校】
子どもが怪我で長期欠席や入院という事実がありながら、別段なんの対応もとらず、漫然と放置し、子ども家庭支援センターから継続の問い合わせがあった際、虐待という認識はなく、「日常生活に変わりはない」「元気で生活している」という情報提供をしてしまった。母親からの情報や血腫が以前の怪我によるものではないかと学校だけで判断し、センターへの情報提供を怠った。また、家庭訪問(9月16日)において、父親との話し合いの中で、「もう二度としない」「もう殴らない」という言葉を受け、一見解決したように思ってしまった、とされている。
校内態勢も不十分で、「生活指導連絡会」や「朝の打ち合わせ」には情報提供がされていたが、児童虐待の認識・感度の甘さがある情報提供なので、「みんなで見て行こう」の合意だけで危機感がなかった。
【子ども家庭支援センター】
歯科医からの確かな情報であり、顔にあざや他にも複数のあざがあること、同月に2回、首から上の身体的虐待があり、顔がはれあがる状況で本人が虐待について訴えていること、母親が虐待を黙認していること、若年出産であったことを把握していたのであるから、ハイリスク家庭と認識すべきであったにもかかわらず、学校に対応を任せた。前住所地の関係機関に情報収集していなかった。また、近隣情報を民生・児童委員等に確認していなかった。
そもそも、センター職員が、学校等で海渡君に直接会い、面接するべきだった。また、顔がはれあがっているとの学校情報を受け、センター職員が、海渡君の状況を確認するべきだった。学校からの家庭訪問の情報を受けたことにより、再度アセスメントを行い、支援方針を見直す必要があった。
以上は、江戸川区の検証報告書の要約であるが、学校は、保護者の申し訳ないという言葉を信じてしまうという根拠のない楽観論にのりかかり、「見守り」という結果的に何もしない対応に終始し、江戸川区は自ら面接もせず、何もしないというずさんきわまりない対応であった。
大阪市西淀川区小学4年生女児虐待死事件
概 要
平成21年4月6日、大阪市立小学校4年生であった松本聖香ちゃんが母親の同居人の男から暴行を受け、殺害された事案。母親は平成20年11月に離婚し、母親、聖香ちゃん、妹が、同居男性とその実子が生活するマンションに転居した。母親と同居男性は内縁関係にあった。
経 緯
平成21年1月15日に担任が頬のあざを発見、翌日複数の関係教職員によりあざが確認され、学校は、この時点で虐待の可能性があると認識していた。協議の結果、他校から転校して間もないことなどから「先入観を持たずに指導する」という考えを優先し、「見守り」を行うことを決定した。
3月18日、24日、25日は担任が家庭訪問を申し出るも、同居男性から「和歌山の父母のところに預けている」「今から出かけるので無理」「自分も母親も夜遅くまで働いている」などして、訪問、接触を断られている。
3月23日、聖香ちゃんの住むマンションの階下の住民が前夜から上の住民が騒がしいのでDVではないかと110番通報し、西淀川警察署の署員が家庭訪問するが、母親がただの夫婦げんかと釈明したため、注意のみで引きあげた。
3月23日から31日にかけ、付近の人が、連日ベランダにいる聖香ちゃんを目撃。
4月3日、マンション付近で働く男性らが怒声と平手打ちの音を聞き虐待と思い、こども110番の旗が立つ家を訪ね、様子を伝えた。
問題点
学校は、虐待の被害を受けているおそれがあることを早期に認識していながら「見守り」と判断し、その後「妹の転校」「3月11日以降の欠席」「欠席の際の保護者の発言や態度」等があったにもかかわらず、学校内で再度検討する機会がもたれず、教育委員会、大阪市児童虐待防止支援委員会、西淀川区子育て支援室、中央児童相談所等の関係機関に相談しなかった。
また、警察に対して情報提供がなされていなかったことから、警察がDVではないかとの110番通報を受け当該家庭を訪問しながら、女児を救うことができなかった。
大阪市西区マンション放置2児餓死事件(事件M)
概 要
平成22年6月下旬、大阪市西区のマンションで23歳の母親に養育されていた羽木桜子ちゃん(3歳)と羽木楓ちゃん(1歳)を、母親が置き去りにして、鍵をかけて外出し、1カ月間も戻らず、7月に餓死しているのが発見された事件。
経 緯
名古屋市内に居住していた平成21年6月、ネグレクトで桜子ちゃんが愛知県警察中警察署に保護され、児童相談所に通告。平成22年1月、名古屋市内から大阪市西区のマンションに転居。母親は大阪では風俗店に勤務していたが、6月下旬、幼児2人を家に残したまま鍵をかけて外出し、1カ月の間友人と遊ぶなどし、一度も家に戻らなかった。本家庭は父親不在で、母親の両親等の親族とも交流を絶っていた状況であった。
問題点
本事件では、近隣の住民(匿名・同一人)から3回にわたり「ぎゃーぎゃー」という声が聞こえるなどと通告があり、大阪市は調査のための訪問を5回実施した。3回は建物玄関のオートロック外からインターホンを鳴らす、建物外部からベランダの様子をうかがうなどの調査にとどまった。また、2回は他の住人の出入りにあわせてマンション内に入り、玄関のインターホンを鳴らしたり、声かけや物音を聞く、郵便受けに不在箋を残すなどの対応を行ったが、居住の有無は確認できなかった。
5回も訪問して安全確認が不成功の結果になっているにもかかわらず、会議による機関(センター)としての検討がなされないまま、ケースは以降保留となってしまっている。
数回の任意調査が不成功に終わった状況をふまえれば、立入調査権発動による家屋内調査の必要性があったと考えられるが、担当者レベルの判断にとどまり、立入調査の検討や、臨検・捜索の要件である出頭要求書面を差し置くなどの検討がなされていない。
事態の把握が困難であれば、近隣等への調査、協力要請等、あるいはマンションの権利関係を問い合わせる、区や警察が有する情報の提供を求めるなど、より進んだ詳細な調査が必要であった。
センターから西区子育て支援室に対して、主任児童委員への聞き取り依頼を行った際に、2名の主任児童委員に対して住所のみを教え、「何か聞いたことがあるか」調べてほしいとの依頼であり、マンション名や号室などの情報は伝えられていなかった。
地域にとって最も身近な存在であり、実情を把握している地区児童委員への調査依頼や聞き取りも実施されていない。
以上は、大阪市の検証報告書の要約であるが、マンションで不在の場合の現行法での対応の困難性が明らかになった事件である。現行法ではドアを解錠して臨検・捜索するために、出頭要求書面の差入れやその返事がないことを確認してからの裁判官の許可状の入手などの手続きが必要であるが、こんな手続きが必要であればどんなに迅速に対応したとしても、子どもは助からない。不要な手続きを課した法律を制定したことにより子どもを救えなかった事例といえるのでないか。