1 いつも署名運動にご協力賜っておりますことに厚くお礼申し上げます。
このたび、次の皆さまにご賛同者におなりいただきました。
衣笠喬史さま
牛尾奈緒美さま(明治大学情報コミュニケーション学部教授)
古賀信行さま(野村ホールディングス(株)、野村証券(株)会長)
誠にありがとうございます。心よりお礼申し上げます。
2 女性の社会進出を進める施策が推進されており、それには大いに賛成するものですが、そのためには、子ども、特に幼い子どもの安全が確保されることが大前提です。母親が働くためには、親に子どもを頼めない場合には、ベビーシッターを利用し、あるいは保育所、学童保育施設等に預けざるをえないことがほとんどだと思いますが、ベビーシッターやこれらの施設の職員による子どもに対する性犯罪その他の犯罪が相次いでいるという現実があります。女性の社会進出推進の施策とあわせて、同時に、子どもの安全を守る対策を推進しなければなりません。
3 204年10月21日朝日新聞に、小学生が放課後を過ごす学童保育施設で子どもが性的被害にあう事件が相次いでいる、政府は学童保育の定員を大幅に増やす方針を打ち出しており、現場や保護者に波紋が広がっている、と報じられています。
同紙によると、本年に入り、札幌市の学童保育所の指導員の男が9歳の女児に対する強制わいせつ容疑で逮捕、函館市の職員の男の女児に対する同容疑で逮捕されています。また、横浜では11年8月、男児が性的被害を受け、指導員の男が逮捕されたが、昨夏、この男が別の学童保育施設で働いていることがわかった、同市は採用時の職歴チェックを強化、児童へのわいせつ行為などで解雇・処分されたことがないと誓約させることにした、とされています。
以前から、同じようなことが、小学校のボランティアや補助員に応募してきた者により行われています。神戸市の小学校支援学級の補助員になった男による教室での男児に対する性犯罪(2010年8月1日産経新聞)、西宮市の小学校の自然学校に随行するボランティア(有償ボランティアの指導補助員)に応募してきた者による男児多数に対する性犯罪(2010年12月8日毎日新聞)、横浜市の小学校の学校で、教員志望で教育ボランティアになった大学生による女児に対する性犯罪(2010年9月8日読売新聞)などか起こっています。教育委員会の非常勤嘱託員の男によるものまで発生しています。大阪市教育委員会の非常勤嘱託職員が学校支援ボランティアの訪問先で児童にわいせつな行為をしたとして逮捕されたが、この男が大学生時代にボランティアで参加した野外活動中にも同様の行為をしたとして強制わいせつと児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕された、と報じられています(2012年9月2日読売新聞)。
学童保育施設の職員には性犯罪歴があるものを排除する資格制限を定めた法律の規定はありません。誰でもなれるのです。小学校のボランティアももちろんそうです。ベビーシッターも同様です。本年6月埼玉県富士見市でインターネット仲介サイトを通じて自称ベビーシッターの男が預かった2歳児を死なせ、保護責任者遺棄致傷罪、児童ポルノ禁止法違反(製造罪)で起訴されました。私はこの事件直後に、ブログで、ベビーシッターから児童性虐待者を排除するための資格制限やインターネット仲介サイト規制を法律で導入すべきと主張しました。
■ブログ13 ベビーシッター幼児死体遺棄事件を踏まえ直ちに必要な対策を https://www.thinkkids.jp/archives/735 ■ブログ14 ベビーシッター幼児死体遺棄事件を踏まえ直ちに必要な対策を(その2) |
しかし、全く無視されたまま、その後、厚生労働省に設置された専門委員会の「議論のとりまとめ」ではベビーシッターから児童性虐待者を排除するための資格制限については何ら言及せず、インターネット仲介サイト及びシッターとして登録しようとする者に何の規制もなく(2014年11月19日公表)、厚労省ももちろん法改正して排除しようという動きはありません。これでは、この男が出所すればまたまた仲介サイトに登録しベビーシッターをできることになりますし、ベビーシッターを装う児童性虐待者が容易に子どもを自分の支配下に置き、性犯罪等の凶悪犯罪を起こせることになるのです。
また、本議論のとりまとめでは、「マッチングサイト(インターネット仲介サイトのことー後藤注)の運営者は、自ら子どもの預かりサービスを行っているわけではなく、単に保育者と保護者との出会いの場としての掲示板等を提供しているに過ぎないため、マッチングサイトの運営者に対して、児童福祉の観点からの規制や法令上の義務付け等を行うことは困難」とされています。しかし、「単に保育者と保護者との出会いの場としての掲示板等を提供しているに過ぎない」にしても、このような場の提供により、子どもが死に至らしめられる危険があるわけですから、法令上の義務を課すことはもちろん可能ですし、現実に悲惨な事件が起こっているのですから、課さなければならないでしょう。子どもの命を著しく軽視する一方で、インターネット上の発信者の責任を軽く見る不当な判断と言わざるを得ません。今後同じような犯罪が起こった場合、厚労省や専門委員会はどう責任を取るつもりなのか、度胸があるのか、責任などとるつもりもないのか、不思議でなりません。
学童施設職員や小学校のボランティアに至っては、検討すらされていないと思います。こちらは文部科学省の所管でしょうか。
4 教師や保育士の子どもに対する性犯罪も多発しています。教師については連日のように報道され、教員の中に児童性虐待者がかなり入り込んでいることは周知のこととなっていますが、保育士についても同様です。豊橋市で勤務する保育園で男児の陰部を触り、写真に撮っていた保育士、札幌市で昼寝している女児の下着を脱がせ写真を撮影した保育士、浜松市の児童養護施設で女児の体を触った保育士などが逮捕されるという事案が起こっています(2012年9月20日、2013年5月14日、2013年3月1日いずれも朝日新聞)。
教師や保育士には、法律で欠格事由が定められていますが、いずれも甘い規制です。教員免許は禁固以上の刑に処せられた者には与えないものとされ(教育職員免許法5条4号)、保育士はそれに加え(正確には、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者)、児童福祉法、児童買春・児童ポルノ法等の違反で罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることができなくなった日から起算して2年を経過していない者(児童福祉法18条の5、児童福祉法施行令4条)、はなれないとされています。
これでは、児童買春・児童ポルノ禁止法違反や盗撮行為・卑猥行為等で罰金刑に処せられても教師になることもできますし、保育士はこれらの違反で起訴猶予にされた場合はもちろん問題にされませんし、禁固以上の刑や罰金を受けても、わずか2年で保育士になることができます。これで子どもは守られるのでしょうか。
しかも、それすらちゃんとチェックされていないようです。2010年3月6日朝日新聞では、児童買春禁止法違反で有罪判決を受けた教師が、判決後も教員免許を返納せず、執行猶予中に講師の採用試験を受け、「禁固以上の刑に処せられたことがない」とする誓約書にサインした上で採用され、その後女子生徒に対する強制わいせつ事件で逮捕・起訴された、文部科学省の初等中等教育局職員課は「採用時の確認方法について国として指針があるわけではない。都道府県教委は個人情報の壁もあり自己申告に頼らざるを得ない」とコメントした、と報じられています。
この文科省のコメントには耳を疑います。法律で欠格事由が定められているのに調査せずに採用し子どもが性犯罪被害にあったにもかかわらず、全く問題意識がありません。ここでも「個人情報」を言い訳としていますが、法律で定められていることを調査しないことを正当化する理由になるわけがありません。
5 インターネットで児童ポルノがまん延したことにより、また、民主党の執ような反対で児童ポルノの単純所持の禁止が大幅に遅れたこともあり(本年6月にようやく禁止されました)、児童性虐待者がインターネットの普及前に比べ格段に増えています。欠格事由が定められている教師や保育士による子どもに対する性犯罪も続発しています。ベビーシッターや学童保育施設の職員、小学校のボランティアによる子どもに対する性犯罪もこのままではこれから益々増えるでしょう。
速やかに、法律を改正し、ベビーシッター、学童保育施設の職員、小学校でのボランティアなど子どもに接する業務に携わる者について、欠格事由を定め、それに該当しないか本人の自主申告に委ねるのでなく、公的機関に照会して調査し、確実に排除しなければなりません。
しかし、前科のない児童性虐待者はこれでも排除できません。そのような者を採用しないようにしなければならないのですが、採用時に見分けることはほとんど不可能です。したがって、ベビーシッター、学童保育施設の職員、小学校でのボランティアに応募してくる男性については極めて慎重に判断し、安易な採用は避けなければならないと考えます。
前記の神戸の小学校で男児に対する性犯罪で逮捕された男は、「男児へのわいせつ目的で4,5年前から3つの特別支援学校や特別支援学級でボランティアした」と供述しています(2010年8月1日朝日新聞)。明確な子どもへの性犯罪の意図をもって、このような児童性虐待者が小学校のボランティアや、ベビーシッター、学童保育施設の職員に入り込もうとしているのです。一体何人いるのか、何百人か、何千人か、何万人か、いずれにしても放置できない問題なのです。
また、教師や保育士の欠格事由についても見直すとともに、欠格事由に該当しないかどうか調査確認は最低限行わせる必要があります。前記横浜市の事件のように、児童性虐待者が教師や保育士になろうとするケースも当然少なくないと思われますので、欠格事由がない児童性虐待者をいかに採用しないようにするかという方策についても検討しなければなりません。
6 児童虐待問題に関する日本の国会、行政の不作為については、縷々述べてきたところですが、性犯罪から子どもを守るということについても、このように無関心です。
法律をちゃんと作って、ちゃんと運用する。それしか子どもを性犯罪者から守ることはできないのです。自己申告させる、誓約書を出させる、なんて取組では効果は期待できません。横浜市の取組は現場の苦渋のあらわれであり、何もしない厚労省よりも格段に評価されると存じますが、本来は、厚労省、国会に強く要望すべきでしょう。
インターネットの普及による児童性虐待者の著しい増加という現実と女性(母親)の社会進出の推進という施策の必要性に鑑みると、ベビーシッターや学童保育施設の職員、ボランティア、教師や保育士等子どもと接する業務に就く者から、これまで以上に児童性虐待者を排除しなければならないことは明らかです。
子どもを守るためには、国民や現場の自治体が無関心でいることなく、何もしないでいるのではなく、政治に対策を、法改正を求めることが必要です。厚生労働省が児童虐待問題、ベビーシッター問題をはじめ子どもの安全に驚くべき無関心を示していることは、本ブログをお読みいただいている方にはご理解いただけると思います。厚労省(あるいは文部科学省)に要請してもこれまでの経験から全く期待できません。政治に直接、必要な法改正を求めていくことしかないのです。