1 警察が児童相談所に虐待通告した子どもの人数は、2013年には21,603人で、そのうち心理的虐待は12,344人に上ります。実態としては、DVで110番通報があり、その家庭に子どもがいる場合に、児童相談所にDV家庭にいるということで心理的虐待に当たるとして(子どもへの身体的暴力があれば身体的虐待としても)通告がなされています。
DV家庭で暮らすこと自体、父親による母親に対する暴力を日常的に見らされることであり、それが心理的虐待に当たりますし、DV家庭での子どもに対する直接的な身体的暴力や性虐待は約半数にも上るといわれています。DV家庭での子どもの虐待死事件も起こっています。したがって、DV家庭の子どもに対しては、児童相談所による子どもの安否確認と親への虐待・DV両面にわたる指導支援が必要なことはいうまでもありません。
しかしながら、児童相談所は、警察から通告を受け家庭訪問しても、子どもへの直接的な暴力なり性虐待が認められない限り、そこで「心理的虐待」としてフォローはしますが、親のDV問題についてはかかわらないという姿勢のところが多いようです。
しかし、子どもに対する直接的な虐待がない場合でも、父親の母親に対する日常的な暴力を子どもが見らされ続けることは、子どもに大変な悪影響―日々心が恐怖感で満たされ常に不安になる、家が安心な場所でなくなり情緒的に不安定になる、家出を企図しやすい、男の子の場合は女性に対する暴力を肯定的なものとしてとらえ、女の子の場合は暴力被害を受けることを仕方のないことだととらえてしまう、暴力の連鎖を生むーを及ぼします。
したがって、児童相談所はDV問題がある限り、継続的に子どもの安否確認をする必要がありますし、子どもに悪影響を与えるDVを父親(夫)にやめさせるために、都道府県DVセンター及び市町村DV担当部局(以下「自治体DV担当部局」という。)に通告し、自治体DV担当部局の女性相談員とともに、父親・母親への指導をしていく必要があります。現在、都道府県DVセンターは被害者のシェルター保護など深刻な案件を主に対応し、市町村の担当部局が在宅のDV案件を担当しているところが多いようですので、市町村のDV担当部局にも通報がなされる必要があります。そして、この情報は、市町村の要保護児童対策地域協議会にも通報される必要があります。
ところが、児童相談所では自治体DV担当部局には通告していないところが少なくないようです。DVは担当外ということなのでしょうが、縦割りも極まれり、というところです。母親に対しては自治体DV担当部局からの支援を行い、父親に対してDVをやめさせるようにすることが、子どもにとっても重要であり、これは児童相談所の責務です。
2 次に、警察からDVセンターへは被害女性(子どもの母親)の同意があれば通告されているようですが、被害女性(母親)の同意がなければ通告していないようです(もし違っていたら警察庁ご指摘ください)。
しかし、被害女性(母親)がDVを受容しても、子どもは受容していないのです。子どもは助けを求められないだけなのです。子どもが大変な悪影響を受けないようにするのが、社会の務めです。母親が我慢しているから、子どものことに社会は口出ししないということでは、子どもは救われません。これは、まさに「子どもは親の所有物」という考えに基づいた運用といわざるを得ません。被害女性(母親)は暴力夫の暴力によりマインドコントロールを受け正常な判断をなくしていることも少なくないのです。そのような場合に、子どもまで道連れにすることなど許されるはずはありません。
3 以上から、DV家庭に子どもがいる場合には、子どもの保護を図るために、
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こととし、その旨を、DV防止法ないしは児童虐待防止法に明文で規定することが必要と考えます。