4・居所不明児童の発見・保護に全力を

投稿日:2013年4月10日|カテゴリ:有効な対策を講じない政治・行政への怒りのブログ

2013年2月、大阪市東住吉区で、6歳の女児として住民票に記載されていた子どもの所在が分からいまま児童手当を詐取していた夫婦が詐欺罪で逮捕されましたが、実際には、母親が生まれてすぐ女児を殺害していたことが明らかになりました。東住吉区は女児の安否を確認しないまま、児童手当を支払い続けていました。

住民票を残したまま行方不明となり学校に通っていない居所不明児童は文部科学省の調査では、約1000人にも上るとされています(平成23年度1191人、うち小学生855人、中学生336人)。この中には、夫のDVから子どもを連れて逃げているケースや外国に出国しているケースなど、子どもの安全が確保されていると思われるケースもあると思いますが、子どもが殺害されているケースや養育放棄(ネグレクト)されているケースも少なからずあることは否定できないと思います。

本来、親は子どもに義務教育を受けさせる義務があり(学校教育法17条)、督促を受けても就学させない場合には罰金刑が科せられます(同法144条)。親が子どもに義務教育を受けさせないというのは、養育放棄(ネグレクト)であるばかりか、刑罰が科せられるような行為であり、子どもはネグレクト状態で、死に至らしめられる危険も少なくないのです。

「誰も知らない」という映画の題材となった事案ですが、東京の巣鴨で1988年に発生した、母親が養育放棄し、一番上の長男が14、5歳、一番下が2、3歳の兄弟姉妹4人だけで生活していた家庭において一番下の妹が長男の遊び友達らに殺害された事案では、一番上の長男が小学校・中学校に一切通っておらず、付近の住民もおかしいとは思いながら長い間放置していました。

そういうことが懸念されるケースが1000事例もあり、1000人もの子どもが教育を受けることもできず、もしかしたら殺されているかもしれない、劣悪な環境で辛い生活を強いられているかもしれないという事実に対して、国、自治体、警察等の関係機関は深刻に受け止め、可能な限りの対応を全力でしなければならないにもかかわらず、対応は鈍いと言わざるを得ません。

学校や市町村等の自治体が居所不明児童を把握した場合には、子どもの生命が危険にさらされているという認識を持ち、発見、安否の確認に全力をあけなければなりません。住民票記載の住所やその付近、親族・知人等の関係先を調査する、あるいは乳幼児健診の段階から未受診家庭を把握し、継続的に受診を働きかけるなどにより、未就学に至るリスクを減らすなどの取組が望まれます。ただ、学校や市町村等の自治体がその能力からして、子どもの発見活動に向いているとは思えません。そのような活動は警察が最も適した組織であることは明らかです。そこで、学校や市町村等は、居所不明児童を把握した場合、あるいは子どもの安否が確認されない場合には、直ちに警察に通報し、それを受けた警察は全力でー大人の家出事件と同様に扱うことなく全力でー発見・保護に当たるべきです。

現時点(平成25年4月10日)で、警察庁からそのような方針を記載した通達が発せられたという情報には接しておりませんが(警察庁のHPには掲載されていません)、早急にそのような方針で全国警察が居所不明児童の発見・保護活動に当たるべきと考えます。

学校(教育委員会)、保健所、市町村・都道府県、児童相談所等も、居所不明児童や乳幼児健診未受診等で子どもの安否が確認できないケースは、直ちに警察に通報することが必要です。子どもを守るためには、それぞれの機関が情報を抱え込まず、関係機関と情報を共有し、組織の特性に応じた役割分担をして、命の危険が危ぶまれる子どもの発見・緊急保護(この活動分野は警察が最適)、その後の支援やケア(この活動分野は市町村、学校、保健所、児童相談所が最適)に当たるという多機関連携が必要です。

その上でさらに必要なことは、居所不明児童の発見・保護のために必要な法制度の整備です。現行法では、学校、市町村、児童相談所、警察とも、居所不明児童の発見、保護のための調査権限は何も与えられていません。警察ですら、犯罪の疑いがない限り、捜査活動して認められる捜査関係事項照会、捜索・差押え等を実施できないことから、任意で関係先を聞いて回ることぐらいしかできません。有力な調査方法である架電先の調査は捜査、しかも令状がなければ事業者が回答に応じませんし、事業者による位置情報の提供も大変大きな制約がなされている現状であることから、現行法の下では発見・保護活動は全く十分に行うことができません。そこで、学校、市町村、児童相談所、警察などの関係機関に居所不明児童の発見・保護に全力で当たることを義務付け、事業者にも当然のことながら調査に協力すべきことを義務付けるとともに、そのために必要な調査権限を付与すべきであると考えます。子どもの生命がかかっているのですから、最低でも捜査で認められる方法は付与されるべきであると考えます。

居所不明児童が1000人もいるという事実に、驚かない、特段の対応をしない、というのは、国、自治体、関係機関の「ネグレクト」と言わざるを得ません。緊急に、文部科学省、警察庁、厚生労働省、事業者等で検討会議を開き、直ちに必要な対策をとるとともに、抜本的な制度整備のために必要な法制度の整備に着手するべきです。