本年6月19日、橿原市で4歳の星華ちゃんが母親の交際相手の男から暴行を受け死亡し、9月6日に、警察に傷害致死罪で逮捕される事件が起こりました。本事件は、児童相談所が通告を受け、母親の交際男からの暴力が極めて疑われる事案でありながら、児童相談所が母親の「男による暴力ではない」旨の説明をうのみにし、交際男から事情聴取もせず、虐待でないとありえないほど甘いリスク判断をし、警察にも連絡せず、そのまま放置していた事件です。
奈良県の児童相談所は、現在でも警察との全件共有を拒否し、一部の案件しか警察に情報提供しておらず、現在、近畿で警察と全件共有していない自治体は奈良県だけです。
私どもは、本年5月1日、奈良県庁を訪問し、子ども家庭課の課長、課長補佐と面談し、このままでは、児童相談所が案件を抱え込み、甘いリスク判断を行い、救えるはずの子どもの命が救えない事件が起こってしまう、是非、児童相談所と警察が全件共有の上、連携して活動する態勢の整備、特に、常時リアルタイムで最新の情報を共有するシステムの整備をしていただきたい旨要望いたしました。しかしながら、奈良県からは今に至るまで「検討中」という回答を続け、受け入れようとしません。本件につき、歯科医師から児相に虐待通告があったのが5月12日ですから、奈良県が速やかに私どもの要望を受け入れ、警察に本件を通報していれば、警察は交際男の所在を調査し、暴行の有無について事情聴取し、事実関係に応じて虐待抑止のためしかるべき対応をとりますから、星華ちゃんが虐待死させられることはありませんでした。
本事件は、奈良県の児童相談所が警察との連携を拒む縦割りの体質が生んだものといえ、県の責任は決して免れるものではありません。私どもは、現在、奈良県のほかにもいまだ全件共有を実施していない自治体を訪問し、奈良県同様全件共有と情報システムの整備を要望していますが、いくつかの自治体からは、奈良県同様「検討中」という回答しかきていません(回答すらしない自治体もあります)。これらの自治体では、是非とも、本事件を教訓に、今の縦割りの態勢のままでは、いつ自分たちの県でも同様の虐待死事件が起こるか分からないことを強く実感していただいて、速やかに私どもの要望に応じていただくことを強く希望いたします。
本事件につきましては、奈良県知事に要望書を提出・記者会見するなど(現在、担当課に知事に直接要望書を交付し、先進的な他県の取組なども説明し要望したい旨伝え、調整中です)、粘り強く働きかけていく所存です。