ブログ207 神戸市修くん死亡事件につき③―神戸市長あて要望書提出・記者会見

1 本日7月4日に神戸市長あてに再発防止を求める要望書を提出し、記者会見
いたしました。久元市長さんに直接要望したいとお願いしたのですが、かなわず、児童相談所の副所長さんに受け取っていただきました。

悲劇を繰り返さないために…神戸・6歳男児が遺体で見つかる NPO法人が市と警察の連携求め要望書(読売テレビ) – Yahoo!ニュース

要望書は次のとおりです。

https://www.thinkkids.jp/wp/wp-content/uploads/2023/07/20230704koubeshi-youbousyo2.pdf

今年の3月に神奈川県の黒岩知事に要望した際は、マスコミも入れて直接お話を聞いていただき、6月には補正予算で児童相談所と警察との情報共有システムを整備すると発表していただくなど極めて迅速にご対応いただきました。

写真で見る!「黒岩日記」-令和5年3月17日 – 神奈川県ホームページ (pref.kanagawa.jp)

今回は市長さんにお会いさせていただけなかったわけですが、もちろん市長さんが会っていただかなくとも、神戸市の役人の方が速やかに受け入れていただければいいわけで、今後ご理解を得るべく働きかけて参ります。

2 警察と全件共有しているはずの神戸市が、なぜ本件を警察に通報しなかったのか、これが、神戸市の対応の最大の問題点ですが、報道によると、①「虐待とは考えなかった」という説明と、②神戸市は保護者からの相談案件は警察との全件共有の例外とする方針であつたから、という説明がなされています。
要望書では、かなり危険な兆候が認められる本件で「虐待でない」と判断することは、リスク判断としてありえないほど甘いことを指摘するとともに、保護者からの相談案件は警察と共有しないという対応は、保護者からの相談案件であれば、子どもは安全であるという何の保証はないことが明らかで(本件でまさにそれが証明)、子どもの安全を二の次にするような対応は直ちに改めるよう求めました。
また、上記について改め、全件共有を確実に実行した上で、連携した活動をするためには、常時リアルタイムで最新の情報を共有することが必要ですので、そのための情報共有システムの整備を求めました(神奈川県に要望したものと同じ。神奈川は本年補正予算で対応していただけることとなりました)。
このほか、子どもの安否が確認できない場合には放置せず、警察に連絡して警察と一緒に家庭訪問する、一時保護解除後には警察等多くの機関が連携して子どもを守る活動を行う、要対協実務者会議に警察を参加させる、ことなどを求めました。いずれも、連携の進んでいる自治体では既に行われていることですが、本事件を貴重な教訓として、このような「縦割り」の対応を改め、二度とこのような悲惨な事件を起こすことのないよう強く要望しました。

3 神戸市には速やかに応じていただくことを期待していますが、懸念されるのは、正式発表はまだないと思いますが、神戸市が「第三者による検証委員会」を設置して、問題点を検討すると報道されていますので、これを理由に1年近く対策が先送りにならないかということです。
岡山市真愛ちゃん虐待死事件の折には、事件直後、岡山市長さんにお会いしてお願いしたのですが、「第三者で構成される検証委員会で検討していただいているから、それが出たら、他の対策とも含めて・・」みたいな感じで、先延ばしにされ、結局、全件共有は拒否されたままです。
神戸市では、こんなことにならないように強くお願いします。「検証委員会」の検討を待たずとも、神戸市がとるべき必要な対策は明らかです。第三者の意見を聞かないと分からないということでは困ります。その間、いまの「縦割り」の対応を放置するのか、極めて不十分な警察との情報共有の在り方を放置するのか、ということです。子どもの命を守るために必要な対策は、神奈川県の黒岩知事のように、子どもの命を守ることに責任を負っている知事・市長が決定できる、決定すべきことなのですから、市長さんには、「第三者委員会の検討を聞いてから・・・」などとおっしゃることなく、速やかに実現していただきますようお願いいたします。これは、要望書には記載していませんが、本日の要望書提出の際、マスコミ各社が取材されている中、副所長さんに口頭で強く要望しました。

4 なお、検証委員会の在り方についても要望いたしました。これまでの全国の多くの検証委員会では、児童相談所OBや児童相談所と密接な関係にある児童福祉の「専門家」といわれる方々が多数を占め、あるいは主導的立場に立ち、「部外」というよりも児童相談所の「身内」のような立場から、検証がなされてきました。そして、多くの検証報告書を読む限り、警察等関係機関との連携の必要性といった虐待死を防ぐことができなかった真の原因に踏み込まないまま、毎回毎回、職員の増員や研修の増加・高度化等の提言はなされるものの、児童相談所が受け入れたくない「警察との連携」という提言は避けられ、これまでどおりの対応を望む児童相談所の意向に沿った提言内容となっていると指摘せざるを得ません。そのためいつまでも、再発防止のために必要な警察等関係機関との連携態勢の整備が十分に図られないまま、連携していれば救えたはずの子ども命が救えないという事件が繰り返されています(例外として平成20年高知県南国市男児虐待死事件の検証があります。本検証では警察との緊密な連携が提言され、それを受け高知県では児童相談所と警察との全件共有と連携した活動が実現しました。)。
そこで、本事件の検証に当たっては、子どもを救えなかった真の原因を分析し、提言していただくため、検証委員会の構成につき、児童相談所から独立した立場から、幅広い視野で判断できる有識者・一般住民の方や他分野の研究者等を多数とする構成とするなど、「第三者性」、「部外性」を確保したものとしていただきますことも、要望書には記載しておりませんが、本日、要望書提出の際、副所長さんにお願いいたしました。
なお、この問題は、全国的な問題ですので、他の自治体や子ども家庭庁にも要望してまいります