ブログ206 神戸市修くん死亡事件につき②―兵庫県が全件共有

1 本事件については、前のメール発信時よりあまり事実関係が公表されておりませんが、7月4日に神戸市長あてに再発防止を求める要望書を提出し、記者会見することといたしました(久元市長さんに直接要望したいとお願いしたのですが、児童相談所の副所長さんがご対応されることとなりました。)
この間、本事件を受けて、6月29日、兵庫県の斎藤知事が記者会見され、本事件を教訓として、警察と全件共有すると発表していただきした。こんなに早く、全件共有をお決めいただくとは誠にありがたい限りで、心より御礼申し上げます。

児童虐待の相談、兵庫県が県警と全件共有へ 神戸6歳男児死亡受け、斎藤知事「小さなシグナルを共有」 | 総合 | 神戸新聞NEXT (kobe-np.co.jp)

本年3月、神奈川県に対して、昨年の厚木市2児熱中症死亡事件等を受け、私どもから、児童相談所と警察とが常時リアルタイムで最新の情報を共有するシステムの整備を要望させていただきました。その際、黒岩知事は、マスコミも入れた場で直接お会いいただき、その場でその方向で検討しますと言っていただき、6月には、補正予算でシステム整備を行うと発表していただきました(添付ご参照)。
いずれも知事さんの素早い決断、リーダーシップのおかげと厚く感謝申し上げます。

 

2 さて、神戸市長へも要望する予定の、神奈川県に対して要望した、「児童相談所と警察とが常時リアルタイムで最新の情報を共有するシステムの整備」は、児童相談所と警察とが連携して子どもを守る活動を行うには、絶対必要なシステムです。
現在、警察と全件共有を行う自治体は40以上に上り、最近特に増えてきておりますが、神奈川県や神戸市をはじめ多くの児相から警察への虐待案件の通報は、通告を受けた直後に、その概要につき一覧表で連絡を送るような方法で行われており、常時最新の状況が共有されていません。通告を受けた時点での情報しか、児相は警察に連絡しないのです。ですから、警察はその後その案件がどうなったのか、リスクは悪化していないのかなど正確なリスク判断ができない状況で、危険な状況にいる子どもを把握することができず、児童相談所と連携して速やかに家庭訪問するなど必要な対応をとることができない状況となっています。
連携した活動を行うためには、児相と警察の双方が、リアルタイムで常時最新の状況を共有しておくことが必要です。連携すべき複数の機関の保有する情報に差があれば、リスク評価が異なることとなり、すれ違いが起こり、十分な連携活動ができないからです。
そこで、児相と警察の双方が、お互いに虐待の疑いのある案件を把握すれば直ちに必要な情報をパソコンに入力することで(その後さらに情報を把握した場合も同様)、互いに最新の状況をリアルタイムで共有するというシステムとすれば、共有の漏れも遅れも生じません。
このようなシステムがあれば、児相のリスク判断が甘く、必要な子どもの安否確認をしていないような状況では、警察が連携を働きかけ、子どもの安否確認等必要な対応をすることが可能になります。
今回の事案についていえば、警察は、パソコン端末で、児相が家庭訪問したが子どもには会えなかった(4月24日)、その後も1回しか会っていないという、神戸市の対応状況を知れば、警察から一緒に家庭訪問しましょうかなどと連携を働きかけ、警察が家庭訪問することで、子どもの安否が確認でき、けが、衰弱している状況であれば直ちに保護することができましたし、警察が家庭訪問することで同居家族に対する虐待の抑止にもなったと思います。神戸市でこのようなシステムが整備されていれば、こんな悲惨な結果にはならなかったと思います。
また、このようなシステムにより、児相、警察とも、情報共有のために必要な業務負担は全くなくなるのみならず、現在では、警察に虐待ではないかとの110番通報が入った場合には、夜間も含めて必ず、警察から児相に取扱い歴がないかの電話確認を行っていますが、そのやりとりも不要になることから、児相の業務負担が大幅に軽減され、業務の効率化を図ることができます。このようなシステムは、既に、埼玉県・さいたま市、千葉県、三重県等で整備されており、上記のとおり、神奈川県では本年補正予算で整備すると知事さんがご発表いただいたところです。

 

3 全件共有は当然のこととして、虐待事件があふれかえっている中で、複数の機関が情報を共有し連携して子どもを守る活動を行うためには、関係機関での情報共有を職員の負担なくリアルタイムで行うなど業務を省力化するしかありません。書類を持参する、電話でいちいち確認するという対応では、情報共有すら十分にはできません。そのためには、上記のようなシステムを整備することが絶対に必要不可欠です。
 このようなシステムは、埼玉県がいち早く整備していただき(下記埼玉県大野知事記者会見)、

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/room-kaiken/kaiken20200115.html

全国に急速に広がりつつあります。多くの自治体で、実質的な連携を行うためには、虐待通告を受けた時点でのみの情報共有は全く意味がなく、その後もリアルタイムでの情報共有による正確なリスク判断と連携しての対応が必要という認識が広がってきているなと感じております。誠にありがたい限りです。

また、神戸市の今回の対応のように、全件共有するとの方針をとりながら、明らかな虐待の疑い案件を警察と共有しないという現場の不適切な運用をなくすためにも、このようなシステムの整備は極めて重要です。
是非、神戸市長さんにもご理解いただけるよう、お願いしてまいる所存です(面談はさせていただけないようですので、職員の方を通じてということになってしまいそうですが)。