ブログ203 シンポジウム「こども家庭庁への期待」の開催と神奈川県知事への要望について

1 シンポジウム「こども家庭庁への期待」に会場参加、オンライン参加いただき、誠にありがとうございました。おかげさまで、無事行うことができました。自治体・警察の方も多数ご参加いただきました。25都府県、8政令市、8特別区、5市の自治体からと40都府県の警察から、会場あるいはオンラインでご参加いだきました。ありがとうございました。

〇菅前総理の基調講演
〇三重県一見知事の講演
〇三重県、岐阜県、大阪府の担当者からの報告
〇パネルデスカッション

これらの配布・発表資料は下記HPに掲載しております。ご高覧いいただければ幸いです。

Think Kids(シンクキッズ)こどもの虐待・性犯罪をなくす会

(1)菅前総理は、本シンポジウムで、児童虐待対応の縦割りの問題について、次のように述べられました(概要・要約)。

菅前首相 虐待を防ぐため“児童相談所と警察で情報共有を”政府に対応求める(日テレNEWS)|dメニューニュース(NTTドコモ) (docomo.ne.jp)

〇児童虐待を例にとれば、内閣府、厚生労働省だけでなく警察や文部科学省、法務省、総務省など、多くの省庁が関係していました。さらに現場では、児童相談所、学校、教育委員会、保健所、警察など、多くの関係機関にまたがっていました。こうした縦割りによって、必要な連携がとられず、有効な対策がとられていないというのが現状であったと思います。

〇縦割りで大きな弊害が出ているのは児童虐待の分野であります。

〇一つの機関だけで対応するよりも、多くの機関で対応する方がより子どもを救うことができる。児童虐待事案への対応において、最も重要であり、かつ最初にやるべきことは、リスクの正確な把握であると思います。一つの機関だけでは、虐待の兆候の把握も限られますが、多くの機関で対応すれば、より多角的な面からアプローチをすることが可能となり、外からはなかなか把握しにくい虐待リスクをより正確に評価でき、子どもの命を救うことにつながると思います。

〇こうした中で、全国で4割を超える自治体では、児童相談所が対応しているケースを警察と全件共有されるという取り組みが行われております。先ほど後藤代表からお話しがありましたように、このあと講演される一見知事の三重県などにおいては、児童相談所のデータベースに警察が直接アクセスすることができるという対応をしているところもあるというふうに聞いております。また、刑事事件の可能性や子どもの安否確認ができないようなリスクの高い事案については、児童相談所と警察がすべて情報を共有することが既に全国的なルールになっています。しかしながら、リスクが高いかどうかという判断が現場に委ねられているために、本来共有すべき情報が共有されていないのではないかといった指摘もあります。

〇いま一度、政府においては、情報共有が適切に行われているのかについて事実関係の把握を行うとともに、既に全件共有がなされている自治体の先行的な事例についての評価を行い、児童相談所や警察における情報共有のあり方について、子どもの命を最優先に考えながらベストな方法を講ずるようにすべきであると思います。

(2)また、ご発表いただいた、三重県、岐阜県、大阪府の連携の概要は次のとおりです。

①三重県
児童相談所(児相)の児童相談システムの端末を県警本部に設置し、すべての児童虐待案件について、児相と警察が速やかに情報を共有できる仕組みを整備している。また、児童相談センターに現職警察官を配置し、警察との連絡調整や児相に対する助言等の支援を行っているほか、県、警察、市長会、町村会との4者協定による県内すべての要保護児童対策地域協議会(実務者会議)への警察の参加など連携を強化して子どもを守る活動を行っている。

②岐阜県
岐阜市子ども・若者総合支援センター内に、県児相(5名)、県警察(7名)、岐阜市家庭児童相談係(14名)、岐阜市教育委員会(3名)の職員が勤務し、通告のあった虐待案件につき各機関の担当者が参加する合同緊急受理会議を開催。多くの機関の目でリスク評価を行い、合同で児童の安全確認を行うなど、多くの機関が信頼関係を構築し連携して子どもを守る活動を行っている。

③大阪府
大阪府警察では、大阪府・大阪市・堺市の児相から提供されるすべての虐待案件を確認し、警察における過去の取扱い歴等懸念のある情報を児相にフィードバック。一時保護解除事案等懸念される事案については警察官が家庭訪問し、児相によるリスク評価やケース対応に資するよう、その状況を児相に連絡するなど、子どもの安全を保する活動を行っている。

2 次に、3月17日、神奈川県の黒岩知事にお会いして、昨年の厚木市2児熱中症児死事件、本年2月に発覚した藤沢市2歳児虐待死事件を教訓として、児童相談所と警察とのより緊密な連携を求める添付の要望書を提出し、要望いたしました。

「厚木市2児熱中症死亡事件、藤沢市男児虐待死事件を貴重な教訓として、児童相談所と警察署の緊密な連携を求める要望書」(2023年3月17日)はこちら

児童虐待防止へ 児相と県警、情報共有強化を システム構築など、NPOが神奈川県に要望:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

神奈川県では既に全件共有が実施されておりますが、埼玉県や三重県のような児相と警察とのリアルタイムでの情報共有は実現しておりません。児相が案件を抱え込み自分たちだけで、一つの機関だけで判断することによりリスク評価が甘くなるという構造的な問題を回避し、かつ、膨大な数の虐待案件に対応する両機関の負担軽減を図るためには、虐待案件につき最新の情報をリアルタイムで(書面や電話やfaxで連絡を取るという手間暇をかけずに)、共有する情報システムの整備が不可欠です。そのようなシステムを整備した上で、警察も「警察からの通告後は児童相談所の仕事」という意識を改め、両機関の有するより多くの情報を元にできる限り正確なリスク評価を行い、両機関が一緒に必要な頻度で家庭訪問を行い、子どもの安否確認、親への指導等を行う態勢を整備する必要があります。
 黒岩知事からは、前向きなお返事をいただきました。神奈川県では、全国で最も進んだ情報共有システムを整備し、より緊密な連携態勢で子どもをお守りいただくことを心から期待しています。

3 シンポジウム後に多くのご意見・ご感想をいただきましたが、先進的な自治体の取組の紹介は有意義であったとのご意見を多くいただきました。神奈川県のほか、本年4月から全件共有を開始する横浜市でも、より緊密な情報システムを整備する予定とうかがっております。パネルディスカッションで、読売新聞の木下論説委員が「全件共有はスタートに過ぎない」とご指摘いただいたとおり、全件共有を前提として、いかに子どもたちを守るために有効で、効率的な、両組織の負担軽減にも資するような情報共有、連携の仕組みを作っていくかという時期に入ってきたと感じております。
残念ながら、いまだ一部の案件しか警察に知らせず、連携も低調のままという児童相談所は少なくありません。このような自治体におかれましては、上記菅前総理のご発言を重く受け止めていただくとともに、三重県、岐阜県、大阪府の連携しての取組(神奈川県、横浜市の今後の取組を含む)を是非ご参考にしていただき、児童相談所と警察との全件共有を前提として、より緊密に連携して子どもを守っていく取組に踏み込んでいただきますようお願いいたします。私どもも、引き続き要望におうかがいさせていただく所存ですが、何卒よろしくご検討いただきますようお願いいたします。
今後、今回のようなシンポジウムを開催できればと存じております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。