ブログ197 またまた東京都で児童相談所が関与しながら防げなかった虐待による重体事案、その直前に東京都議会宛陳情書提出しました

1 2021年10月23日、同居の次男(1)に暴行を加えてけがを負わせたとして、父親が逮捕され、次男は意識不明の重体。品川児童相談所によると、近隣住民から「どなり声や子どもの泣き声がする」と通報があり、6~9月に家庭訪問を行った。虐待のリスクが軽減したと判断し、対応を終え、同児相は「対応に問題はなかったと考えている」としていると報道されています(読売ウェブ2021/10/25 19:49)。

父親「しつけで体を揺さぶった」、1歳次男が意識不明…児相に「子どもの泣き声する」と通報も : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

またまたまたまた、児童相談所は警察に案件を知らせていませんでした。ちなみに、結愛ちゃん事件の際、母親に面会拒否されながら、警察に連絡しなかったのも品川児童相談所でした。

「うらやましいほど仲良し」家族に何が “虐待” 父を逮捕 1歳児は意識不明 “しつけ” 体罰か(FNNプライムオンライン) – Yahoo!ニュース

2 この事件の直前の10月1日付で、東京都議会あてに「虐待から子どもを救うため児童相談所と警察の全件共有と連携しての活動を求める陳情書」を提出しました。

虐待から子どもを救うため児童相談所と警察の全件共有と連携しての活動を求める陳情書

 小池知事への要望書と都議会への陳情書はもう何回目になるか覚えていないほどですが、目黒区結愛ちゃん事件、足立区ウサギ用ケージ玲空斗ちゃん事件、葛飾区愛羅ちゃん事件などどれほど児童相談所が関与しながら警察に知らせないまま虐待死あるいは重大な虐待に至る事件が続いても、都の役人も都知事も都議会も動きません。ここまで子どもの命を守ることに無関心でいいのでしょうか。以下陳述書の抜粋です。

都の児童相談所は、虐待はない、あるいは助言指導で足りると判断した案件は警察に情報提供していない(平成30年9月7日警視庁との間の「児童虐待対応の連携強化に関する協定書」)。そもそも、親は虐待を隠すことが普通で、子どもは被害を訴えることができず、虐待の急なエスカレート、突如現れた交際相手による暴力も珍しくない。1回や2回の家庭訪問で、児童相談所の有する情報にのみ基づいて、正確に判断することは不可能である。実際に都の児童相談所も、前述の葛飾区や足立区の事件で、警察と情報共有しないまま放置し、虐待による死亡という結果となってしまった後の取材に、疑わしい情報は無く、虐待の可能性は考えなかった旨弁明しており、判断の難しさを自ら認めている。
 恐らく、外傷が認められず、親が虐待を否定している事例の多くで、虐待はない、あるいは助言指導で足りると判断していると思われるが、それには何の根拠もない。親は虐待を否定することが普通であり、悪質な親ほど痕跡が外から見えないように子どもを虐待している。」

 このとおりのことが今回も起こっています。東京都は、自らが神のように虐待リスクの正確な判断ができると考えているのか、当然間違えることがあるがそれでも仕方がない、警察と情報共有するよりましだ、といずれかを考えていることになります。今回、児相は「対応に問題はなかったと考えている」とマスコミに応えていますので、後者のように考えているようです。どうにも信じられません。

3 児童虐待案件については、一つの機関でなく多くの機関の目と足で連携して子どもを見守った方がより安全であることは自明です。一つの機関だけでは得られる情報が限られ、虐待リスクの判断が甘くならざるを得ません。しかし、児童相談所や市町村が警察と案件を共有すればその案件につき警察の保有するDV等の家庭に関する情報、子どもの迷子・家出歴等の情報を得ることができます。その後も警察がパトロール、110番、住民からの相談等を通じて得た情報を得ることもできます。これにより児童相談所等はより多くの情報に基づいて虐待リスクを判断することができ、一時保護等適切な処遇判断ができるようになります。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211025/k10013320981000.html

 この事件についての上記NHKの報道によると、現場のアパートのすぐ近くに住む70代の女性は「アパートからは子どもの泣き声が長時間にわたって聞こえることがよくありました。『なぜ泣き止まないんだ』という父親とみられる男性の大声が聞こえたこともあります。ふだんから心配していました」と話していたとされています。児童相談所の「はい。これは大丈夫」というリスク判断は甘すぎたわけですが、警察と情報共有して連携して活動する態勢を整備していれば、こういう住民の方の声を警察が入手できたかもしれませんし、警察が夜間パトロールにより把握し、児童相談所に通報できた可能性があるのです。

私は、警察と全件共有すれば、すべて救えるなどと言っているわけではありません。警察と案件を共有し連携して活動する態勢を整備していれば、警察が日常の警察活動を通じ虐待の危険な情報を入手し、それを児童相談所に通報することができ、児童相談所が虐待リスクをより正確に判断できるようになる、この事件のように児童相談所が「はい。これで大丈夫」などと打ち切ってしまうリスクを減らすことができる、と言っているのです。要するに、子どもを守るためにできる限り多くの虐待の兆候を入手しうる態勢を整備するべきだ、それですべての子どもを救えることにはならないとしても、大人は、行政は、政治は子どもを守るためにベストを尽くすべきだ、と言っているのです。

 また、一つの機関だけでは、危険な情報を入手した場合でも、「これまで大丈夫だったから、まだ大丈夫だろう」という安易な判断に陥るリスクがあります。大阪府摂津市3歳児熱湯による虐待死事件がそういう事件です。90回も会っていれば、そういう感覚に陥ってしまうのではないでしょうか。他機関と案件を共有し、他機関の保有する情報も得たうえで、他機関の意見・判断を聴く態勢を整備することにより、児童相談所等が甘いリスク判断に陥る危険を防ぐことができます(注:豊橋市の要保護児童対策地域協議会実務者会議における警察の指摘事例を紹介する2021年10月13日読売テレビニュース等)。また言うまでもありませんが、警察と連携して家庭訪問をより多く行うことができることになり子どもの安全がこれまで以上に確保されることになるのです。
さらに、児童相談所が案件を抱え込むリスクを負い続けるメリットは、子どもにはもちろん児童相談所の職員にもありません。救えるはずの子どもの命を救えない事件を引き起こし続けるのみならず、子どもを救えなかった責任と後悔の念を職員が負い続けることになってしまいます
結愛ちゃんを担当した品川児童相談所の女性職員が、裁判で、職員は「救いたかった」と心情を吐露し、「尊い命が奪われてしまったことをとても深く、重く受け止めている」と涙を流しながら語った、とされています(2019.9.4毎日新聞)。本事件を担当された職員の方も深く後悔されていると思います。私の知っている現場の職員の方は決して警察との全件共有に反対されていません。非常に強く連携を望んでおられます。子どもたちのためにも、そして、児童相談所職員のためにも警察と全件共有し、連携した活動を行うベストの態勢を整備する必要があるのです。警察との全件共有を拒否し続ける東京都の知事、議会、幹部の役人の方々や「日本子ども虐待防止学会」などの「専門家」と言われる医師や学者の方たちは、このような点につき一体どうお考えなのか。

4 上記協定書を速やかに改正し、多くの自治体同様、すべての案件につき警察と共有し、連携して対応する態勢に改めることが直ちに必要です。児童相談所の役人が「対応に問題はない」と言っている以上、知事、議員の政治家が動くしかありません。他の多くの自治体では既に実現していることです。知事、議員の皆様には、いつまでも子どもたちが虐待死していくのを座視することなく、陳情書を無視することなく動いていただきますようお願いいたします。