ブログ193 警察庁、文科省等に学童保育施設等における性犯罪対策を求める要望書提出、中央公論10月号に「児童虐待対策とコロナ対応にみる厚労省の失敗」が掲載

1 2021年9月9日、棚橋国家公安委員会委員長にお会いして、学童保育施設等における性犯罪対策を求める要望書(文科省、厚労省、国家公安委員会あて)を提出し、お願いしてまいりました。

DBS制度の創設等による学童保育施設その他の子どもに日常的に接する業務等からの性犯罪者の排除等を求める要望書(thinkkids.jp)

 既に、3月3日、「子ども虐待と子どもへの性犯罪ゼロを目指す法改正を求める要望書」を提出し、虐待対策を含めた総合的な対策をお願いしておりますが、今回は、子どもへの性犯罪防止対策に絞って要望したものです。

 主な内容は、「子ども性犯罪保護法」(仮)を制定し、DBS制度(子どもに日常的に接する業務に性犯罪者を従事させないための性犯罪歴の確認制度)を創設し、学童保育施設、学校ポランティア、シッター、スポーツ指導の場から性犯罪者を排除するほか、これら事業者やスポーツ団体における性犯罪対策の実施、性的関係を目的に子どもを手なづける行為(グルーミング行為)の禁止を求めるものです。2020年度までの5年間に、利用者へのわいせつ行為が確認された学童保育と放課後デイサービスの職員は少なくとも44人、被害者は69人に上り(2020.8.22読売)、スポーツ指導の場でも指導者による子どもへの性犯罪は多発していますが(要望書ご参照)、事業者やスポーツ団体で性犯罪防止対策はほとんど取られていません。そこで、創設される「こども庁」で、縦割りを排し、文科省、厚労省、警察庁等の知見を総合的に生かした有効な対策を期待するものです。

2 また、中央公論10月号に「児童虐待対策とコロナ対応にみる厚労省の失敗」の拙文が掲載されました。
 児童虐待対策とコロナ対応といういずれも国民の命にかかわる業務につき、担当する厚労省(児童相談所等を含む)が大失策を続けていることにつき、失敗はいずれも「強固な他機関排除体質」と「甘すぎるリスク判断」という厚労省の体質に基づくものであり、シンクロしていると指摘し、児童虐待対策、感染症の「専門家」と言われる医師たちも含めた「ムラ社会」の問題も含めて、問題提起したものです。提言として、厚労省からの児童虐待策とパンデミック対策の切り離しと、政府、国民が「専門家」への妄信を改め、他分野の研究者、総合的な知見を有する有識者等からの意見をより重視すべきことを述べたものです。中央公論では字数の関係で短くしましたが、提言内容は、「厚労省から命にかかわる危機対応業務を切り離す組織改編が必要」というもので、概要は次のとおりです。

 児童虐待対策、感染症対策(特にパンデミック対応業務)など多くの命にかかわる危機対応業務に厚労省は全く対応できていません。このまま彼らに対応を委ねるならば、今後とも救えるはずの子どもや国民の命を救えないという事態が続き、わが国は取り返しのつかないことになりかねません。
 厚労省の役人は、縦割り意識が強固で、危機感が薄く、狭い視野からしか問題をとらえることができず、他機関と連携しようとしません。しかも、周りに同じような思考に固まっている「専門家」に囲まれ、独善的な「ムラ社会」から抜け出せないままでいるのです。このような「ムラ社会」の変革には長い時間がかかることから、それをただ待っているだけでは被害が拡大するだけです。

 そこで、行政組織を改編し、厚労省から児童虐待対応業務、パンデミック対応業務を切り離し、関係省庁が連携して対応する制度とすることが必要不可欠です。
 まず、児童虐待については、児童虐待対応の基本的な理念を「虐待は福祉で対応すべき」という縦割りで「専門職種」のドグマに支配されたものから、「Working Together 関係機関が連携してがんばろう」、すなわち、縦割りをなくし関係機関が連携してベストの態勢で子どもを守る、というものに代えていく必要があります。「Working Together」とはイギリス政府の児童虐待対応のガイドラインの題名になっているものですが、その名のとおり、児童虐待は一つの機関ではなく児童保護部局、警察、学校、医療機関、保健部局、民生委員等多くの関係機関が連携してベストを尽くして取り組まなければならないという理念のことをいいます。

 本年、菅総理が子ども庁を創設し、児童虐待対応業務を子ども庁に移管し、縦割りの弊害を改めるという方針を打ち出されました。誠に時宜にかなった取組です。子ども庁の児童虐待対策に当たる部署には、厚労省のみならず、「専門家」のドグマと無縁の文科省、警察庁等関係省庁の担当者や民間人を多く配置し、「Working Together」、すなわち、縦割りとドグマを解消し、関係機関が確実にもれなく情報共有の上連携してベストの取組で子どもを守る活動を行う態勢を全国の自治体に求め、それを法律で規定すれば、児童虐待問題は大きく改善に向かうことが確実に期待できます。
 次に、パンデミック対策についても、今回の厚労省の体質に基づく数多くの失敗を教訓として、厚労省が縦割りのまま対応する枠組みを改め、官邸の総合調整の下、多くの省庁が連携して対応することができるよう法改正、組織改編を行うことが是非とも必要です。具体的には、感染症対策を厚労省だけでなく内閣官房、経済産業省、国土交通省、総務省、警察庁等関係省庁の担当とし、

〇内閣官房(官邸)に「パンデミック対応部局」を設置し平素からパンデミックに備えるための総合的な計画、パンデミック発生時の対処要領の作成等に当たるとともに、パンデミック時には、パンデミック担当大臣を設置し危機対応に当たるものとする。

〇厚労省の権限とされている業務のうち、検疫体制、検査体制、医療体制の整備、検
査機器・マスク・防護服等の必要物資の開発・備蓄、ワクチンの国内での開発・生産・備蓄等の対策については、厚労省とともに、文部科学省、経済産業省、国土交通省、総務省、防衛省、警察庁等の所掌事務とすることを各省庁の設置法で明文で規定し、これらの省庁は平素からこれらの対策の推進及び自治体、関係事業者との交渉等の業務に当たることとする。

ことが必要と考えます(このほか、パンデミック時には政府は自治体、医療機関等に対して現行法以上に必要な対策を指示することができるような法整備も必要と考えます。)。
 さらに、「専門家」からの意見聴取の枠組みについては、

〇政府、自治体が児童虐待対策、感染症対策について意見を徴する委員会等を設置する場合には、「専門家」といわれる医師・学者等の占める割合は多くとも半数未満とし、「専門家」の独善とは無縁の他分野の研究者、広い視野から判断できる有識者が多数を占める構成とし、厚労省、児童相談所、保健所等のOBをメンバーとすることは可能な限り避ける。

ことが必要と考えます。
 厚労省や東京都等の児童相談所、あるいは児童虐待の「専門家」に任せていては虐待されている子どもたちはいつまでも救われません。コロナ禍も同様に、厚労省や保健所、感染症の「専門家」に任せていてはいつまでも変わりません。政府の組織改編により、厚労省からこの二つの業務を切り離すとともに、「ムラ社会」の独善とは無縁な、他機関、他分野の研究者、広い視野を有する有識者の英知を結集し、的確なリスク判断のもと、ベストの力を発揮して危機に対応する態勢を整備することが是非とも必要です。

 提言だけではよく分からないかと存じますので、全文を読んでいただければありがたく存じます。