ブログ177 千葉県市原市虐待死事件から、危険な兆候把握時は直ちに警察に連絡する仕組みが必要

1 前メールでご報告した、6月3日、千葉県市原市で、10カ月の次女に食事を与
えず放置し1月に死なせたとして母親が保護責任者遺棄容疑で逮捕された事件で、母親らが住んでいた市原市は4日、昨年12月以降に2回、保健師らが自宅を訪問したが、次女を目視できていなかった、保護者は次女に1か月健診を受けて以降必要な乳児健診や13回の予防接種を受けていなかった、9ケ月間も次女とは会えていなかった「ただ、今後の母親との関係維持も優先したため直接見ることはできず」、「市は安否確認できていない状況も要対協に報告していなかった」と報じられています(朝日6/5、6/10 6/11等)。
またまた、行政が関与しながら危険な兆候が明らかでありながら「親との信頼関係優先」という、結愛ちゃんを見ごろにした東京都児童相談所等が弁解として使う「親との信頼関係優先」という言い訳にならない弁解により、警察等他の機関と情報共有もせず、救えるはずであった子どもの命を救えなかった事件が起こしてしまいました。

2 市原市は、千葉県野田市心愛さん虐待死事件等の教訓を何ら生かしていま
せん。心愛さん事件では児童相談所の度重なる不適切な対応がありましたが、最悪心愛さんが1月になってから不登校となったときに、不登校というのは極めて危険な兆候なのですから、警察に直ちに連絡し警察が家庭訪問し、心愛さんの安否を確認していれば、衰弱していた心愛さんを救うことができました。市原市の事案も9ケ月も安否が確認できなかったというのですから、もっと早い時点でー1ケ月確認できない、面会を拒否するー等の時点で、警察に連絡し、警察が子どもの安否を確認するべきだったのです。
 2014年に発覚した東京都足立区玲空斗ちゃんウサギ用ケージ監禁虐待死事件では、東京都の児童相談所は11回家庭訪問したが、2回しか会えなかったにもかかわらず、「虐待の兆候なし」として警察に連絡もせず、放置していました。その後近所の住民から玲空斗ちゃんを長い間見ないと連絡があり、あわてて警察に連絡し、警察により玲空斗ちゃんが1年も前に殺害されていたことが発覚しました。事件後足立児童相談所の大浦俊哉所長は「虐待を疑う情報がなかった」と弁明しています(2015.5.20朝日新聞)。
 千葉県や東京都などの児童相談所、あるいは市原市などは虐待を受けている恐れのある子どもの安否が確認できないということを「危険な兆候」として理解していないのか、さすがに、本当は分かっていると思うのですが、親から怒られるのが怖いから、親が面会させないにもかかわらず、子どもに会いに行くことが億劫という本音を隠し「親との信頼関係優先」という言い訳で子どもの安否確認をしないことを正当化し続けています。信じられないことにそのような対応がいくら虐待死事件が続いても改められないのです。

 これを何としてでも改めさせねばなりません。そのためには、児童相談所市町村に、警察や学校等子どもを守ることができる多くの他機関と虐待案件につき情報共有し、連携して対応することを義務付けるしかありません。
案件を抱え込むから、自分たちしか虐待案件を知らないから、こんな危険極まりないことを平気でしてしまうのです(案件抱え込みの危険)多くの機関ですべての案件を共有し、常時最新の状況を把握できる仕組みを構築していれば、いずれかの機関が、何もしない児童相談所等に「これは危険な兆候なので、直ちに安否確認するべき」「親との信頼関係なんて言っている場合でない」と、児童相談所や市町村の不作為をとがめ、それを受け24時間365日直ちに動くことができる警察が家庭訪問して子どもの安否を確認し、子どもが衰弱していれば緊急に保護し命を救うということができるのです。

3 市原市の要保護児童地域対策協議会実務者会議に警察は参加しており、本件も共有されていました。しかし、報道によるとその後の最新の状況―家庭訪問しても会えないという情報―は警察を含む実務者会議のメンバーに知らせていませんでした。特に「危険な兆候」は直ちにメンバーと共有し、24時間365日すぐに動くことのできる警察が家庭訪問し子どもの安否を確認し、衰弱している場合は救出するという仕組みを取っていれば、子どもを救うことができました。

 千葉県野田市では、野田市と警察との間でそのような仕組みが構築されています。全国の多くの都道府県や市町村でも児童相談所と警察と間で、あるいは要対協実務者会議で全件共有の上連携して対応する仕組みが整備されています。千葉県と東京都が全国で際立って遅れているのです。
 市原市には、野田市ほか多くの自治体に倣って上記の仕組みを取っていただくよう要望してまいります。また、厚労省、警察庁と、いまだこのような仕組みを取っていない東京都や千葉県その他の都道府県、都道府県警察にも、このような仕組みを直ちにとるよう働きかけてまいります。