1. 4/4の東京都の陽性確認者が118人と、5日には143人と最多を更新し、4/5時点での感染者数は東京都で1033名となりました。全国では3774人なりました(4/6読売)。検査数が極めて少ないなかでこの数字ですから、実際の感染者は最低でも5、6万人に上り既に感染爆発になっているのではないでしょうか(日本の検査はドイツの17分の1程度である(4/2日経)ことからの推測です)。
何度も言っておりますが、総理は特措法に基づく緊急事態宣言を直ちに出し、東京などの大都市では知事が法律上可能な住民への外出禁止、興行場の営業停止の「要請」等の措置を取る必要があります。しかし、この「要請」には罰則の担保もなく、営業停止等の「要請」ができる対象も限定されており、効果がないことがかなり予想されますので、ヨーロッパ・アメリカ並みの対策を取ることができるよう法改正も直ちに必要です。
緊急事態宣言については直ちに出すよう医師会などから意見が出されていたにもかかわらず、いつまでも出そうとせず(6日にようやく出す方向と報じられています)、効果的な対策をとれるような法改正の動きも全くありません。安倍総理のこの判断の遅れ、不作為が、イタリア、アメリカのような事態に陥らせることになることが危惧されます。
2. それにしても、中国、アメリカ、ヨーロッパの惨状を見ながら、かなりの時間がありながらなぜ、台湾や韓国、シンガポールのように抑え込めることができなかったのか。安倍総理・厚労大臣―厚労省の役人―自治体(東京都)―専門家というラインは何をしていたのか、ざっくりと考えてみます。
新型コロナウィルスの「専門家」(ここでいう「専門家」とは政府の専門家会議のメンバーの方らを言います。現場で奮闘しておられる医師の方のことではありません。現場の医師の方には心から敬意を表しております)は、当初から楽観的な見解を言われていました。専門家会議メンバーの岡部先生は「新型コロナはそこまでのものではない」、「日本では緊急事態宣言を出したり、社会が恐れおののいたりするようなものではないという思いは、比較的早い段階から変わっていません」とマスコミで発言され(3/18朝日新聞)、イギリスやアメリカなどのように、このままでは死者はいくらに上るという予測も発表していません。さらに、専門家会議は3/19の見解で、非常に甘い判断を出してしまい、その後の3連休で多くの国民が花見や繁華街に大量に繰り出してしまいました。専門家が甘い判断、発言をして、国民を油断させてどうするのか、というのが正直な感想です。外国ではそんな「専門家」はいないのではないでしょうか。北海道大学の西浦教授は感染者の予測数を発表されるなど早くから危機感を訴えられていましたが例外的な存在です。なぜ西浦先生のような方の意見が「専門家」の中で大勢にならないのか。生命の危険がある際にはリスク判断はより厳しくするのが鉄則です。政府はなぜ「こちらの方の意見の方が正しいのでは」と判断しなかったのでしょうか。
「専門家」のさらに大きな問題はPCR検査を非常に限定するという対応をしたことだと考えます。これも過去ブログで述べている通りですが、検査を少なくしてしまえば、無症状・軽症状感染者による意図せざる感染拡大を防ぐことができません。また正確な感染者数が分かりませんので、国民も政府も危機意識を持てないまま、国民が外出自粛しなくなり、政府もいつまでたっても緊急事態宣言など必要な対策をとらないのです。多くの「専門家」は「検査数を増やすと医療崩壊が起こる」などとその正当性を主張していましたが、ドイツや韓国のように、感染者のトリアージ、無症状・軽症状者を自宅や借り上げた施設に収容することとすれば、医療崩壊は回避できることが示されています。
韓国では、2月下旬に大邱市で宗教団体による集団感染が発覚し「医療崩壊」の危機と言われたが、3月1日に政府は感染者全員の入院を原則としていた既存のルールは変更、重症度に応じた新しい治療体制がとられた。軽症者は病院とは別の隔離施設=「生活治療センター」に収容。センターは公共の施設の他に、サムスンやLG、現代などの企業の社員研修所などもあてられ、現在では全国19カ所が運用中、約1200人が収容されている。発表の翌日、3月2日から、わずか10日で新しいシステムに移行を完了したとされています(4月6日「現代ビジネス」より)。ドイツや韓国など多くの国では、医療崩壊を回避しつつ、検査を徹底し、無症状者・軽症者からの感染拡大を防ぐとともに、正確な感染実態を把握して必要な対策を取っているのです。
日本は、韓国やドイツのような対応をしないのか。今のような、発熱等の症状があっても、濃厚接触者にも検査受けさせないという対応こそ、病院や障碍者・高齢者施設での大量のクラスターを発生させ、医師・看護師にも感染を拡大させてしまい、多くの医師、看護師に過酷な勤務を強い、医療崩壊を招いているのではないでしょうか。専門家会議メンバーの押谷教授は「PCR検査を抑えていることが日本が踏みとどまっている大きな理由だ。」という趣旨のことを言われていますが(3/22NHKスペシャル)、今でもそうお考えなのでしょうか。今からでも、諸外国と同様、感染者のトリアージにより医療崩壊を回避しつつ、検査を徹底することにより多くの感染者を把握し隔離し、感染拡大を防止する取組しかないのではないでしょうか。この点、児童相談所が必要と判断した場合に限り警察に情報提供すればいいとして、アメリカやイギリスでは当たり前の警察との全件共有に反対する児童虐待の「専門家」の医師と同じような対応です。「検査を限定」「連携を限定」して、国民が、子どもが守れるのでしょうか。「専門家」の狭い視野からの自説に固執し、諸外国の例にもならわず、いつまでも自らの正当性を主張し改めない。「専門家」全般にみられる問題ですが、新型コロナウィルスでは、このままでは、ドイツや韓国のように対応すれば救えるはずの多くの国民の命が救えないということになってしまいます。
3. 自治体は、東京都を見る限り、上記「専門家」の見解どおり検査は極めて少ない状況です。帰国者・接触者相談センターへの相談件数と検査実施件数では東京都が2.2.%、茨城県は相談379件で実施363件と95.8%に上ります(4/5産経)。田島日本サッカー協会会長が陽性と判明しましたが、会長の奥様にも検査を受けさせず、愛媛県で陽性確認された濃厚接触者が東京に居住しいると連絡しても、検査の必要はないとしています。愛媛県の知事が疑問を呈されていました。タレントの黒沢さんも発熱してもいつまでも検査をしてくれず頼み込んでようやく検査を受けることができ陽性と確認されたとされています。
要するにほとんど検査を受けさせていないのです。こんなに検査を限定しているから東京都の判明している感染者数がこの程度なのです。小池知事は緊急事態宣言を出すべきとお考えのようで、それは正しいご判断と思いますが、東京都が検査数を限定し、少ない感染者数のままなので、政府もまだ大丈夫という誤った判断に陥っているのです。東京都がもっと幅広く検査していれば、もっと多くの感染者数が判明して、もっと早期に緊急事態宣言が出されていたでしょう。小池知事は、役人にもっと幅広く検査を実施するよう指示したのでしょうか。もし人手不足というのならなら他部門から応援を出すなどしなかったのでしょうか。小池知事は児童虐待でも同じ対応をされています。東京都の児童相談所は警察と連携いないまま結愛ちゃん事件等を引き起こしても今でも警察とはごく一部しか連携しません。役人は他機関との連携を嫌いますし、今までどおりの対応をしたいというのが本音です。私どもから3度4度と小池知事に要望しても全く無視されたままです。おそらく小池知事も警察と連携したほうがいいと、私どもの要望を受け入れていただいた多くの知事・市長と同じようにお考えだと思います。でも、他の知事らのように役人が反対することを押し切ってはできないのでしょう。不作為や対応の遅い役人を政治家が引っ張っていくというリーダーシップが今回も大きな問題となっています。
4. 厚労省は、上記の検査態勢をとつた責任をはじめ、多くの都道府県の改善の要請にもかかわらず、無症状感染者、軽症感染者、重症感染者のトリアージを行わず、無症状・軽症感染者まですべて入院をさせ続けた責任(4/4日経「厚労省「原則入院」に固執」)など多くの不作為の責任があります。加藤厚労大臣や安倍総理は、この点改めるよう役人に指示されたのでしょうか。政治家は役人の言うことをそのまま受け入れてしまっているのではないでしょうか。児童虐待でも同じです。結愛ちゃん事件後も厚労省と警察庁が児童相談所と警察の連携を一部でいいという方針を出したことがその後も救えたはずの命が救えないままの現状をもたらしているのですが、安倍総理、加藤厚労大臣がそれを閣議決定として是認してしまいました(30/7/20)。政治家が役人の言うことをそのまま受け入れてしまっているのです。
5 マスコミの問題についても触れます。最近日経新聞が、PCR検査が少なすぎる問題(4/2)、厚労省が感染者のトリアージを怠ってきた問題を批判してくれていますが(4/4)、他には政府の方針をまともな方向から批判した記事を読んだ記憶がありません(「国家権力による私権の制限は許されない」とかピントのずれた批判は一部の紙によく見ますが、これらは除きます。)。
マスコミは「お役所」「お役人」、あるいは「専門家」のおっしゃることは批判しないのです。朝日新聞、NHKは、上記のとおり岡部先生のインタビュー記事を掲載し、押谷教授の主張を放送し、彼らの主張につきドイツや韓国の例を出すなどしていません。「ご説ごもっとも」という感じです。政府や東京都が検査を極めて限定したことや感染者のトリアージを怠ったことについても批判しません。淡々と報じるだけです(上記日経を除く。マスコミ各社の皆さんには批判していた記事があればお教えください。お詫びの上訂正いたします)。
日本のマスコミは、首相の個人的なスキャンダルなどには熱心に批判しますが、「お役人」「お役所」「専門家」は批判しません。児童虐待についてもそうです。私どもの再三にわたる要望にもかかわらず、東京都、千葉県などの児童相談所が一部しか警察と連携せず、その方針を政府が閣議決定(H30.7.20)しても批判しません(産経、京都新聞は社説で私どもの求める全件共有の必要性を主張していただきました)。マスコミのこの役人・役所・専門家を批判しない(なぜなのか分からない。記者クラブがあるからなのか?それにしても度が過ぎている)、おもねる対応を直さないと、いつまでも同じ過ちを繰り返してしまいます。戦前もそうでした。問題はありましたが何とか政党政治を行っていた政党の足を引っ張り、役人(軍人)を持ち上げ、国民に軍国主義をあおり、日本を全体主義、無謀な戦争に引っ張っていく役割を果たしました。今回は日経がちゃんと批判してくれていますが、他紙も正当な批判を是非書いてたただきたい。厚労省も東京都も「専門家」もおかしなことをやっているではないですか。
また、今に至っても特措法に基づく緊急事態宣言についても安倍総理が決断しないことを批判しませんし、同法が効果がないことから、より悪化した場合に備えて罰則で担保するなどの法改正の必要性も指摘しません。おそらく、事態が悪化してから「遅すぎた」「法改正すべきだった」と批判するのでしょうが、それでは「一般人」と変わらないのです。
6. 私にとっては、新型コロナウィルスへの厚労省―東京都などの自治体―「専門家」の医師の対応は、デジャブです。児童虐待で、政府・厚労省―東京都などの自治体―「専門家」の医師のラインが、惨憺たる結果をもたらしているのとデジャブなのです。マスコミのへっぴり腰の対応も含めて。今からこのデジャブが消えることを、新型コロナウィルスの厚労省―自治体―「専門家」ラインは、児童虐待とは違うんだということを是非見せていただきたいと、心から願っております。なお、現場で奮戦されておられる医師の方には心から敬意を表しておりますことに改めて付言いたします。