1. 2020年3月、2017年12月に埼玉県伊奈町の自宅で長女の心ちゃん(当時4歳)を低体温症で死亡させた疑いで、父親と母親が逮捕されました。心ちゃんは無理やり両足を広げられ、この繰り返しで心ちゃんの腰が曲がったとみられ、心ちゃんが死亡した2017年12月21日の数日前、くの字に曲がった腰をまっすぐにするために心ちゃんをうつぶせの姿勢にし、背中にダンベルを置いたと説明した、心ちゃんは腰だけでなく足も痛め歩行が困難に、死亡した際体には数十カ所のあざがあり、足の筋肉は断裂していたとされ(2020年3月7日朝日新聞)、残虐極まりない虐待です。
2016年7月伊奈町には「子どもが雨の中で立たされている」との近隣住民からの通報を受けて町が最初に母子に接触していました。心ちゃんの腕や尻にはあざも確認できたが、母親が「あざは自分で会談にぶつかったときにできた」と説明し、傷やあざについては「軽微なもの」(伊奈町子育て支援課)という判断にとどめた。その後も町側は29年2月までに3回、母親と接触した。「しつけの中でたたくことがあ」といった言い分に対し、町側は行き過ぎた行為であることを指摘し改善を促し続けたが、警察にも児童相談所にも連絡しなかった、6日の記者会見で、町子育て支援課の瀬尾奈津子課長は「母親は指導に拒否的な態度をとる保護者ではなく、児相や警察の介入を必要とする困難事例と思われなかったので、通告しなかった。日常的に虐待しているとは考えにくかった」と述べた。 町の小島健司健康福祉統括監は記者会見で「判断が甘かった」と陳謝した。と報じられています(産経新聞2020年3月6日)。
2. またまた、1回の家庭訪問で「これは大丈夫。警察と連携なくてもいい」と軽信し、警察と連携せず虐待死に至らしめた事例です。現在は埼玉県では児童相談所と警察は全件共有していますが、市町村に直接寄せられた虐待案件については現時点でも多くの市町村で警察等関係機関と情報共有も連携しての対応をしていないところが多いと思います。市町村の要対協実務者会議で、児童相談所、警察等全ての構成員(すべて子どもを守ることができる機関なのです)で、全ての案件を共有し、連携して対応する態勢を整備しなければなりません。埼玉県には、県内の全市町村に対してそのような態勢になっていない場合には指導をしていただけるよう要望してまいる所存です。
3. 1回の家庭訪問で「これは虐待ではない、あるいは緊急性が低いから警察等関係機関と連携しなくても大丈夫」という甘すぎる判断が、児童相談所や市町村が虐待を把握しながらみすみす虐待死に至らしめる最大の原因です。これを改めるべく、全国の半分近くの児童相談所では、警察との全件共有を実現していただいています。市町村についても、多くで警察を実務者会議の構成員としていいますが、そこで市町村の把握した案件を構成員と全件共有しているところはそれほど多くありません。一部しか警察に提供しない児相と同様に一部しか案件を構成員と共有しないところが少なくありません。また、そもそも、実務者会議を構成員との案件共有の場という理解がなく、ごく一部の「ケース」を検討する場と誤解しているところも少なくありません。ケースを検討する場は「ケース会議」で、本来実務者会議は市町村の把握した全ての案件を構成員と共有する場です。このような運用をしない限り、実務者会議は意味がありません。実務者会議は大変すばらしい仕組みです。それを共有する案件を一部に限定してどうするのか。これが本来の役割を果たしていれば、児童相談所と警察の全件共有も当然できるのです。
埼玉県のみならず、他の都道府県も、管内のすべての市町村に対して、実務者会議につき、
〇警察を構成員とし、
〇1ケ月に1回開催し、その場に市町村の把握した虐待案件の概要を構成員に配布する
ということを指導していただきたくお願いいたします。既に、これらについては、高知県、大分県、京都府、広島県、広島市、栃木県、和歌山県などで実現していただいていると承知しております。他の都道府県につきましても是非実現していただきたくお願いいたします。