ブログ150 堺市長さんが全件共有の意向表明、福岡市の事件を機にSOSを出した子どもを絶対に救う取組を

1.堺市長が全件共有を実施する意向であると表明していただいておりました。
2020年2月3日の読売新聞の「虐待 警察に全情報」急増、「児童相談所 緊密連携で子どもを守る」との記事の中で、堺市も大阪市と同様に全件共有を行うと報じられました。堺市長さんは昨年11月14日の記者会見で、全件共有するかとの質問に対して「(大阪市と)足並みをそろえて行う」と言明していただいておりました。大阪市はシステム改修がなされる2021年度から全件共有すると既に発表されていますから、堺市も遅くともこの時点で全件共有されることとなります。私どもは、昨年8月に大阪市にはシステム改修を待つことなくもっと早く全件共有してほしい旨要望しており、堺市にもあわせて引き続き早期実現に向け働きかけてまいります。まあしかし大変ありがたいお話です。
 これで全件共有は32自治体(既にその方針を公表している大阪市・堺市を含む)で児相設置自治体の45%を超え、近々数自治体で実現予定ですので、いよいよ全国の半数の自治体で全件共有と連携しての活動が実現することになります。

2.前メールで紹介した福岡市の児相が訪問した家庭で目の前で、虐待を証言した子どもを父親が殴るのを見ながら、そのまま帰ってしまった事件についてですが、まだ翌日に警察に連絡し警察が逮捕したからよかったものの、本来は、文科省の「虐待対応の手引き」に従い、虐待を発見した学校が警察に通報していれば、こんなことになっていないのです。児相職員が訪問しても、一時保護しても、虐待親に効果がないことは少なくありませんが、目の前で親が子どもを殴っても警察に連絡もせず、子どもも保護せず、そのまま帰ってしまうというのはあり得ない対応です。一般住民ならどちらかするでしょう。子どもはせっかく訴えたにもかかわらず、これでは全く救われません。
 福岡市や福岡県、北九州市、東京都、千葉県など警察との全件共有を拒否する児童相談所の言い分は、全件共有すると「親との信頼関係が壊れる」「親からの相談が減る」というもので、親を通じてしか虐待問題を見ていないといいますか、抽象的な彼らの信ずる理念に従い活動すればよく、それで子どもが殺されても問題ないと考えているとしか思えない、少なくとも子どもを守るということが最優先ではありません。目の前で親が子どもを殴っても警察に連絡すれば親との信頼関係が壊れるから、親からの相談が減るから、警察と連携しないのでしょうか。既に全件共有している高知県や茨城県からそんな懸念はないとの報告があっても、先進的な他府県の取組に聞く耳を持ちません。何度も申し上げていますが、警察官でない一般公務員である児相職員が親を怖がるのは仕方がないことで、それを責めてはいないのです、でもだからとっいって、警察とも連携するのも嫌だでは、子どもはいつまでも救われません。

3.(1) 福岡市の事件は、「ママが叩いた」と児相職員に証言した三男を父親が激高し殴ったにもかかわらず、児相職員がそのまま帰ってしまったという事案ですが、子どもが出してくれたSOSを絶対に見逃さない、逃げない対応ができる態勢を整備することの重要性を改めて明らかにしてくれました。
 児相職員がそのまま帰ってしまっては、三男はそのあとどんな虐待を受けるか分かりません。千葉県野田市の心愛さん事件も同様です。被害を訴えた子どもを絶対に守る態勢をとらなければならないのです。児相が虐待親に対応しても、親の言い分を真に受け、子どもに傷があっても、子どもが訴えても親が否定すれば「虐待でない」とすることが香川県の児相(結愛ちゃん事件)など多数みられますが(そのまま虐待死に至った事件も少なくありません)、このような対応は、生き延びた子どもたちにとっても、被害を訴えても、近所の人が通報してくれても、児童相談所はなにもしてくれない、大人は何もしてくれない、というあきらめを子どもたちに与えてしまいます。
 SOSを出した子どもたちを絶対に救う、見殺しにしないという対応が是非とも必要です。それが児相だけでは、一つの機関だけではできないのです。ましてや福岡市や東京都、千葉県など「親との信頼関係」を強調するーこれは親の言うことに逆らわないことにつながる(結愛ちゃん事件の東京都の児相等)ー児相だけでは虐待親に対して全く効果がありません。児相と警察が連携して対応することで虐待親に虐待の抑止効果を発揮させることができ、子どもを見殺しにしないことができるのです。
 (2)また、虐待を受けている子どもたちがSOSを出しやすくする取組が必要です。虐待を受けている子どもたちは、もともと親からの暴力を訴えることはハードルが高いことですが、さらに親からの虐待を「お前が悪いからだ」と思い込まされ、助けを求める、被害を訴えることができないでいることがほとんどです。そのため虐待を生き延びた後も心に傷を負わされ、自分に自信が持てず、前向きに生きていくことが困難な子どもたちが少なくありません。
 学校では、いじめアンケートがとられるようになり、そこで家庭での虐待の被害を訴えるケースも増えています(千葉県野田市の心愛さんもそうでした)。子どもたちが最も訴えやすいのは、学校の先生でしょう。是非、学校でのアンケートで虐待被害を訴えやすいような形でアンケートが実施されるよう、文科省、教育委員会、学校に取り組みを求めるものです。