ブログ146 福岡県田川市で1歳男児が両親からエアガンで撃たれその後死亡しました

投稿日:2019年11月11日|カテゴリ:講演

 本年11月、福岡県田川市で、昨年11月に三男の唯雅ちゃん(当時1歳)が両親からエアガンで撃たれ傷害を負わされた事案で両親が逮捕される事件が発生しました(唯雅ちゃんは撃たれた1ケ月後に肺炎で死亡しています)。児相は昨年1月に長男(当時3歳)につき「頬に傷があり虐待でないか」という通報を受け、昨年7月には唯雅ちゃんにつき「泣き声がせず心配である」との通報を受けていました。しかし、1月の通報については、親が否定し3歳の長男も否定した(!!!)として「虐待でない」と判断し、7月の通報についても、「虐待ではない」として20日間も安全確認せず、警察にも連絡していませんでした。

 福岡県では、本年3月、筑紫野市で児相が関与していた家庭において、小2女児が真冬に長時間水風呂につけられるなどの凄惨な虐待事件につき、母親と交際相手の男が逮捕される事件が発生しました。学校からの通報がなければ死亡する危険性がかなり高かった事件ですが、福岡県の児相は警察に通報していませんでした。昨年5月には北九州市で児童相談所が関与しながら警察に連絡することなく4歳児が虐待死した事件も起こっています。

 私どもは、福岡県・福岡市・北九州市には、 本年2月と6月に知事・市長あてに全件共有と連携しての活動を求める要望書を提出しお願いしておりますが、いまだ受け入れられず、警察との情報共有の対象を「虐待による外傷が認められる事案」などごく一部に限定し、多くの案件を抱え込んだまま、このような事件を続発させています。近々に3度目の要望を行う所存です。

 田川市の事件では、児相と市が1回の家庭訪問で親や3歳の幼児が虐待を否定したからと言って「虐待ではない」と判断する、その後通報があっても20日も訪問せず、警察に通報もしないなど子どもを危険にさらす対応を行っています。筑紫野市の事件では、保護者が虐待として水風呂に入らせたのは「たたいてあざが残るといけないと思った」と供述しているとおり、悪質な保護者ほど傷やあざが見えるところにつかないように虐待するのですが、警察との情報共有の対象を「虐待による外傷」事案に限定してしまうと、悪質な事案が共有の対象とならず、児相単独でとんでもない判断・対応をしてしまうリスクが高いのです。

 いずれの事件も虐待リスクの安易な判断から他機関と情報共有も連携もしない案件を抱え込んでの対応に至るまで極めて問題があり、特に警察との情報共有の対象を「虐待による外傷」が認められる事案に限定することの危険性が明らかです。このままでは福岡県・福岡市・北九州市ではいつまでも同様の事件が起こり続けます。

 家庭という密室で逃げることも助けを求めることもできない子どもを守るためには、児相が案件を抱え込むことなく、市町村、警察、学校、病院、民生委員等子どもを守ることができる機関すべてが、全件共有して連携して活動し子どもを可能な限り守るためにベストの態勢で活動しなくてはなりません。それでもすべては救えないのです。

 今回の田川市の事件で言えば、児相の1回の家庭訪問で親と3歳の幼児が虐待を否定したから「虐待でない」と判断し、関係機関での連携しての対応をしないのでなく、その後も多くの機関で見守りを続け、唯雅ちゃんの通報があった際にも、直ちに多くの関係機関で当該情報を共有し、リスク判断をあげ、児相、市町村の虐待担当部局・子育て支援部局、警察、民生委員等が手わけして家庭訪問する、付近を巡回する、あるいは、警察が110番、迷子の保護等により対応する場合には子どもが虐待を受けていないか注意深く対応する、とするなどできる限り多くの機関で多くの情報を集めるとともに親への虐待の抑止力を高める、そして多くの機関で得られた情報を全ての機関で共有・集約して虐待リスクを正確に判断していくという活動を継続して行っていれば、救うことができたのではないでしょうか。少なくとも、そのぐらいの取組もしないで、「親と3歳の子どもが虐待を否定したので虐待じゃないんです。我々は悪くありません」という弁明を認めて、何の改善もせずに済ませてしまえば、いつまでもこのような事件が続くだけです。(しかしそれにしてもよく平気でこんなこと言うなあ。いつもながら)

 東京都目黒区結愛ちゃん事件では、親が面会を拒否したら東京都の児相はあっさり引き下がり保護もせず警察にも連絡しませんでした。香川県の児相はあざがあり結愛ちゃんが父親からやられたと訴えているにもかかわらず、親か否定すれば虐待ではないとして保護もせず警察にも連絡しませんでした。千葉県野田市心愛さん事件では、千葉県の児相は明らかな危険だと分かる家庭に警察に連絡もせず心愛さんを戻してしまいました。そして今回の福岡県の児相、いずれも、私どもの求める「全件共有と連携しての活動」拒否したままで、相変わらず案件を抱え込み、親の言い分をうのみに、子どもを虐待死に至らしめています。一方、27の道府県、政令市等には受け入れられ、関係機関の連携が進み子どもが守られるようになっています。自治体の取組に差がありすぎます。児相が関係機関との全件共有と連携しての活動を拒否する自治体の住民の方から、子どもたちを守るよう知事・市長、議員等に働きかけていただくことを期待しています。