8月27日、鹿児島県出水市で4歳の女児、大塚璃愛来ちゃん(りあら)ちゃんが死亡し(死因は溺死)、母親と同居する男が頭部を殴ったとして暴行罪で逮捕されました。7月まで住んでいた薩摩川内市で今春警察が4回も夜中に家を出されるなどしていた璃愛来ちゃんを保護し、鹿児島県の児童相談所に一時保護が必要だと2回も申し入れていましたが、児童相談所は「親子の愛着が感じられるなど一時保護を必要と判断しなかった」(朝日新聞9月2日)とし、4月3日に家庭訪問して以降一度も家庭訪問していませんでした。8月5日には、転居した出水市で病院が璃愛来ちゃんに複数の青あざがあると出水市に通告しましたが、市は児童相談所にも警察にも連絡しませんでした。8月7日に転入を把握した出水警察署が家庭訪問の有無等を市に尋ねた際にも、市は警察にあざがあったことを伝えていませんでした。また、保育所には3ケ月で15日しか登園していなかったとされています。
私は、本年5月に鹿児島県を訪れ、県の子ども虐待の担当課の役人と県警本部長に面談し、全件情報共有と連携しての活動を要望しました。県警は前向きですが、県の担当課からは回答はもちろんなく私が進捗状況を尋ねるメールを出しても返信もなく、無視を決め込まれ、全件共有に応じないままかかる事件を引き起こしています。
昨年3月の東京都目黒区結愛ちゃん虐待死事件、今年1月の千葉県野田市心愛さん虐待死事件、6月の札幌市詩梨ちゃん虐待死事件のたびに、私は「関係機関の全件共有と連携しての活動」が必要で、それなしではいつまでも同じ事件が続くと訴え、政府、東京都・千葉県・札幌市に要望書を提出し、面談してお願いし続けましたが、その度に無視され、全件共有と連携しての活動を拒む自治体において、続々と救えたはずの子どもの命が救えない事件が起こり続けています。
その一方で、私が3月に要望に伺った沖縄県では全件共有に応じていただき8月15日から運用が開始され、それ以前に要望に伺った川崎市、相模原市、横須賀市で9月2日に運用が開始され、これで26道府県・政令市・中核市で全件共有と連携しての活動が取り組まれ、着実に拡大しています。
本事案では危険な案件と判断していたのは警察だけだったようですが、鹿児島県が私どもが求める全件共有と連携しての活動を受け入れ、児童相談所、市町村、警察が虐待案件を共有した上、それぞれの機関が把握する危険な兆候を共有し(本事案では上記のように危険な兆候が多々ある!!)、虐待リスクを正確に判断する取り組みをしていれば、今回児相や市が判断したように、大したことない事案と軽信することなく、危険な案件と判断でき、関係機関が人手を出し合ってより頻繁な家庭訪問、一時保護など適切な対応ができたと思われます。また、全件共有と連携しての活動を続けていれば、自ずから児童相談所と警察、市町村との信頼関係が構築され、今回の児相のように、警察の保護すべきという意見を一方的に拒絶することなく、一時保護も適切に行うようになり、璃愛来ちゃんを救うこともできたと思いわれます。
昨年3月の東京都目黒区結愛ちゃん事件後の昨年7月20日の緊急対策において政府は全件共有と連携しての活動を求める私どもの要望に応えることなく、児相から警察への情報提供の対象を「虐待による外傷が認められる事案」と限定してしまいました。その後、千葉県野田市心愛さん事件、札幌市詩梨ちゃん事件、鹿児島県璃愛来ちゃん事件と、児相と市町村、警察の情報共有と連携がなされないまま、救えたはずの子どもが救えない事件が続いています。
鹿児島県、札幌市、千葉県、東京都などとんでもない事件を引き起こした自治体はもちろん、政府の緊急対策の誤りは明らかです。直ちに政府は、情報共有の対象をすべての虐待案件とするよう改め、関係機関が虐待案件を漏れなく確実に情報共有し連携して子どもを守る取組を行う態勢を整備しなければなりません。そうしなければいつまでも同様の事件が続くだけなのです。
私どもは、これらの自治体と政府に粘り強く要望を続けてまいる所存ですが、何人の子どもの命が失われても、平然と今までどおり警察との情報共有すら拒否する東京都、千葉県等の児童相談所(救いは要望を受け入れていただき改善を進める自治体が着実に増えていることですが)とそれを是認する政府・全政党、さらにそれを問題視せず、政府や改善を拒む児童相談所の擁護に走るマスコミ、こんな子どもに冷たい、役人ファーストの国があるのでしょうか。