ブログ135 性的虐待を知っていた千葉県児相について「スッキリ」で話しました

1 5月14日の朝日新聞で、心愛さんが父親から下着を脱がされたと訴え、児相も知りながら一時保護を解除し自宅に戻していたと報じられています。殴られ、脅され、性的虐待を受けていることを知りながら、どうして千葉県の児童相談所は心愛さんを地獄のような家に戻すようなとんでもないことができるのかと国民が驚愕する中、15日の日テレの「スッキリ」に出演し、親が怖くて、親に逆らいたくないという心理から、親におもねり危険な状況に子どもを平気で放置するという千葉県や東京都など多くの児童相談所の長年改められない悪弊が原因であると話してきました。
 国会では、野田市心愛さん虐待死事件を受け、政府が国会に提出した児童福祉法・児童虐待防止法の改正案の審議が始まりました。心愛さん事件、結愛ちゃん事件を分析し再発防止を図るには、上記悪弊に染まる千葉県、東京都等の児童相談所の対応を改めさせ、「関係機関の情報共有と連携しての活動」が必要であることは容易に分かるはずですが、またまた政府は私どもの要望を却下しました。なぜ起こった事件を分析し、それに応じた再発防止策を講じようとしないのか、千葉県の児相がなぜ心愛さんを危険な家に戻したのか、また、東京都の児相が母親に面会拒否されながらなぜ結愛ちゃんの安否を確認せず放置したのか、それは、専門的能力がないからでも、職員の数が少ないからでも、体罰が禁止されていないからでも、弁護士が常駐していないからでもないことは明らかです。ところが政府の法案では、そんなことばかり、再発防止にならないものばかりを「対策」として打ち出しているのです。昨年の結愛ちゃん事件後に緊急対策として打ち出しながら、全く効果なく心愛さん事件を引き起こしながら、相も変わらずピントのずれた、あるいは中長期的な対策(期待できる効果が出るとしても長い年月後)しか盛り込まれていません。
 政府、特に厚労省・警察庁は子どもを虐待から救うのが嫌なのか、今や20府県・政令市で私どもの求める「全件共有と連携しての活動」を受け入れていただいていますが、政府と結愛ちゃん事件を引き起こした東京都、心愛さん事件を引き起こした千葉県は、私どもが要望活動を始めて5年近くたっても今でも拒否しています。また、「日本子ども虐待防止学会」という本来子どもを守るはずの団体も、なんと結愛ちゃん事件後に反対声明を出しています(結愛ちゃん事件で全件共有の必要性がさらに明確になり、多くの府県で全件共有が進んだのですが・・)。一体これまでに児相が知りながら案件を抱え込み何人の子どもをみすみす救えなかったのか。政府、厚労省・警察庁が、東京都が千葉県が「全件共有と連携しての活動」を受け入れていれば、結愛ちゃん、心愛さんはじめ多くの子どもはあれほど残虐に虐待死させられることはなかったのです。政府、東京都、千葉県のこの不作為は歴史に残る役人の不作為だと思います。

2 心愛さん事件ついていえば、ほとんどの国民がそんな危険な家庭に帰してはいけないと分かる中で、千葉県の児相だけが分からなかったわけではありません。さすがにそこまでバカではありません。言い訳として色々取り繕うでしょうが、家に戻したのは、心愛さんが危険な状況にあることは百も承知だが、この親にこれ以上怒られたくない、かかわりたくない、という子どもではなく我が身を守る、情けないほどの保身です。アンケートを父親に渡してしまった野田市の教育委員会は「親が怖かった」と認めています。千葉県の児相も「親が怖かった」のです。しかし、それを正直に認め、それを前提に真摯に再発防止策を講じようとしている野田市と異なり(私は野田市の再発防止委員会の委員としてそれを感じています)、認めない千葉県には誠実さのかけらも感じられません。私は、警察官でない児童相談所職員や教師が親を怖がるのは、仕方がないことだと思っています。だからといって、親に屈して子どもを危険な状況に放置してはならいのは当然で、親を怖いのは仕方がないこととして、だからこそ、案件を抱え込まず警察と連携して対応すべきだと言っているのです。

 心愛さんは、被害者である子どもは、心の中では「帰りたくない。助けて」と訴えているに違いないのですが、親を恐れて声に出して言うことができないのです。千葉県の児相は、それをいいことに、心愛さんからそんなことは聞いていませんでしたと、何かあったときにも言い訳ができると、安心して、加害者に、親に屈し、危険と知りながら家庭に戻してしまうのです。DV、ストーカーなど大人が被害者であればこんな対応はできません。被害者が大人であれば、助けてほしいと訴え、警察は当然ながらそれに応えて、加害者を逮捕するなり、被害者を保護します。大人が被害者の場合は、助けを求める声を聞きながらそれを無視するなどできないのです。ところが、児童虐待は子どもが被害者で、多くの場合逃げることも、助けてと言うこともできないことから、児相は子どもを危険な状況に放置しても「子どもは被害を訴えていませんでした」という言い訳ができるという構造にあるのです。
 被害者である子どもが親を恐れて助けてと言い出せない(言葉を発せない乳幼児なら尚更)という児童虐待の構造・特質を前提とすると、児相は子どもが助けてと言っているに違いないという立場に立って、最大限、被害者の子どもの安全を最優先に判断するという姿勢が必要不可欠なのですが、正反対の、加害者である虐待親におもねる対応をしているのです。

 このような多くの児童相談所の体質・対応を前提に(親が怖くて親に屈してしまう体質)、再発防止策を検討しなければならないのです。そうであるならば、児相に案件を抱えこませず、警察等関係機関で情報共有して連携しての活動をやるしかないということになるはずです。子どもが格段に救われるだけでなく、児童相談所の職員の業務も軽減され、心理的にも極めて楽になるでしょう。警察と連携しない現状は、現場の児相職員に、警察と連携せず怖い親と毅然と対峙しろ、いわば、「スーパー児童相談所」になれ、「スーパー児童福祉司」になれ、と無理を強いているのです。
 また、関係機関と情報共有することとすれば、心愛さん事件のようなケースでは、警察や市町村などの他機関が「そんな危険な父親のもとに帰せるわけがないでしょう」と意見を言うことができるのですが、児相が案件を抱え込んでいる現状では、他機関にばれないという心理もあり、千葉県や東京都などの児相はこのようなとんでもないことを平気でするのです。他機関に知らせないことがとんでもない不作為を可能にしているのです。これは企業不祥事でもよく見られる構造上の問題です。このようなことを防ぐには、不正・不適切な行為をできないようにするため、多くの目でチェックするような構造・制度にしなければならないのです。

3 児相と警察との全件共有と連携しての活動に反対することは、児童相談所や職員に「親が怖くとも毅然と対応しろ、警察と連携することなく」「スーパー児童相談所になれ」「スーパー児童福祉司になれ」と言っていることになるわけですが、これは、児童相談所に無理を強い、結果的にやっぱり無理で、子どもを救えない結果を招くだけです。
 政府や東京都、千葉県のとんでもない不作為を改めさせるためには、多くの国民が立ち上がり、行政に強く求めなければならないのですが、本来その側に立つべき「日本子ども虐待防止学会」などの専門家の方が、政府や東京都、千葉県の側に立ち反対声明を出し、その会長がマスコミで反対を公言されるなどの現状では、なかなか彼らは動きません。子どもたちを救うために方針を改めていただくことを心からお願いする次第です。