この半月ほどで、三重県、静岡県・静岡市・浜松市、神戸市、北海道で全件共有と連携しての活動が実現することとなりました。これで4月1日に児相が設置される明石市を含めると19自治体となりました。要望を受け入れていただいた自治体には心からお礼申し上げます。北海道には要望にお伺いしていないにも関わらず実施していただきました。自治体にご理解が高まっている証だと誠に嬉しく思っています。それに対して国は相も変わらず、ピントのずれた対策をよくもまあ、いつまでも・・・。
1 福岡県筑紫野市で本年2月に小学2年生の8歳の長女に対する殺人未遂罪等で母親と内縁の夫が逮捕された虐待事案は本当に危なかった、教師があざを見つけて通報しなければ殺害されていた危険がかなり高かった事件だと思います(3月23日西日本新聞朝刊)。
この事件は、8歳の長女の両手と両足を縛り水風呂に入れて殺害しようとするなど何度も無理やり水風呂に入れるなどの虐待を繰り返していた事件です。嫌がる長女を裸のまま水風呂に入れる様子を撮影した画像が残っていた。長女が「うそはつかない」「いわれたことをいちどできく」などと書いた誓約書も見つかったとされています。結愛ちゃん事件、心愛さん事件と同様の事件です。
この事案は、福岡県の児相は一年以上前に把握しながら、警察へ通報していませんでした(学校に対して連絡していたかは不明です)。母親に対して指導していたようですが効果がないまま、家庭訪問も殆どせず内縁の夫(被疑者)が同居していた事実すら児相は把握していなかった、学校から児相に通報があり、ようやく警察に通報し逮捕に至った事案です(福岡県に事実誤認していますが返答がありません。事実誤認があるかもしれずその際は訂正いたします)。
私は、この事件が起こったからには、私どもの要望を拒否し続けている福岡県・福岡市・北九州市もさすがに児相、市町村、警察等関係機関の全件共有と連携しての活動に応じてくれるものと確信しています。児相が案件を抱え込んでいては救えるはずの命が救えず、関係機関と情報共有し連携して活動することで子どもの命が救えることを明らかにした事件だからです。もし、教師があざを発見し通報していなければ子どもは殺害されていた可能性がかなり高いのです。果たしてこの案件を児相が学校に通報していたか分かりませんが、児相から知らされないままでは、教師があざを見つけて子どもに質問しても、子どもが親をかばい「自分で転んだ」と答えれば虐待を疑うことができず、通報しないこともよくあることです。そうすると折角虐待に気づき子どもを救うことができる機会を児相が他機関と情報共有しないことでみすみす失してしまい、最悪虐待死に至ってしまうことになるのです。
2 本事件はあざという危険な兆候を学校が気づいた事案ですが、危険な兆候を気づくことができるのは学校のみならず、警察等の多くの関係機関も同様です。警察は子どもの泣き声がする、あるいは男の怒鳴り声がするDVではないかなどの理由で110番通報を受けこの家庭に臨場する機会があったとしても(かなり可能性はあります)、児相から事前に情報提供を受けていないと、親から「夫婦喧嘩です」と騙され子どもが虐待を受けていることを見逃してしまい、救うことができず虐待死させられていたかもしれません。実際、このような事件が東京都葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件、大阪市西区聖香ちゃん虐待死事件として起こっているのです。(そもそも児相が1回の家庭訪問で「この案件は虐待ではない。軽微である」として警察等に連絡する必要はない、と判断することがそもそもの誤りです。神ならぬ人間の身で虐待リスクの正確な判断など不可能で、そのように軽信した事案で多くの虐待死が起こっているのです。そのことにいつまでも東京都、兵庫県、香川県や「専門家」と言われる学者や医師の方、一部国会議員にもご理解いただけません。)
また、シングルマザー家庭に同居人が出現することは危険な兆候で、その直後に虐待死させられた事件として、大阪府箕面市歩夢ちゃん事件があります。児相、市町村、学校、警察等幅広い関係機関が情報共有する仕組みができていれば、いずれかの機関が同居人の出現を把握した場合に直ちにその事実を関係機関で情報共有し、虐待リスクを上げ、家庭訪問の頻度を上げる、一時保護を図るなどにより子どもを守ることができるのです。
さらに、昨年7月20日の政府の緊急対策で、児相と警察との情報共有の基準として「虐待による外傷が認められる事案」に限定したことの問題点が改めて明らかになりました。被疑者は水風呂を選んだ理由として「たたいてあざが残るといけないと思った」と供述しています。悪質な保護者ほど傷やあざが見えるところにつかないように虐待します。ですから、「外傷」が認められる事案に共有の対象を限定することは、悪質な親による虐待案件は警察と共有されないことになってしまうのです。少し考えれば分かることです。しかし、本件のような見えるところに傷を残さないより悪質な虐待案件ついては共有しないでいいと考えている、厚労省・警察庁、政府はこのような限定をしてしまい、福岡県・福岡市・北九州市、東京都なども政府に倣いこのような限定をしてしまっているのです。悪質な保護者による虐待事案から子どもを守ろうと考えるのであれば、共有の対象を「外部から見えるところに傷がある事案」に限定するのではなく、全件とするしかないのです。
3 どうか、福岡県、福岡市、北九州市には、本事件を教訓として、児相、市町村、警察の全件共有と連携しての活動に応じていただくことを心からお願いいたします。それでも必要ないというのであれば、それは、「子どもは関係機関が連携して守られなくていい」、「児相がこの案件は軽微だから情報共有の必要ないと判断すれば、他機関に知らせないまま子どもが殺されても構わない」と考えていることを意味するものです(全件共有を否定する「専門家」と言われる学者や医師、自民党の一部議員も同様ですが)。貴重な事件を教訓にしなければ、子どもがいつまでも救われません。既に19自治体でこのような事件を教訓に全件共有等をしていただいているのです。
福岡県知事には面会すら拒否され、県の担当課長にあっさり拒絶されたままです。先日本メルマガ記載のような要望を出しても返事すらありません。福岡市、北九州市にも出しましたが同様に返事すらありません。福岡県・福岡市・北九州市の児童相談所の所長や課長、県庁・市役所の担当課長や部長、知事・市長には、有効な再発防止対策である関係機関との全件共有と連携しての活動をとらないまま、同様の虐待死事件が起こった場合には業務上過失致死罪が成立すると思います。自県で起こった本事件を含め多数の同様の事件により、さらに私どもの要望により関係機関との全件共有と連携しての活動をとらないままでは救えるはずの命は救えないという予見可能性は十分にあり、多くの自治体で実施しているにもかかわらずそれを講じないままでいたことに注意義務違反が認められるからです。この理は全件共有と連携しての対応に応じない他の自治体も同様です。
なお福岡県では知事選が行われていますが、こういう事件が起こっても知事の子どもを虐待から守る姿勢が争点にならず、マスコミもほとんど報じていないようです。これが、わが国の子どもがいつまでも救われない根本の原因だと感じています。