前、前々メルマガのとおり、「完全アウェイ」人選のNHKの深謀遠慮には深く感謝しておりますが、やはり、主要な論点について1対5で議論させ、それを放送することは尋常ではないと感じております。しかも、5人のうち4人が、厚労省の審議会の委員を歴任されこれまで厚労省・児童相談所と関係の深い方か児童相談所OBの方ということになると、「忖度」との指摘もでるほどで、報道の公平性・中立性を逸脱しているのではないかと。
2月28日の日経新聞では同じく厚労省の統計不正問題で、「第三者委員会としての中立性を疑われた厚生労働省の特別委員会は今回の再調査でも、統計不正の同省の組織的隠ぺいを認めなかった。同省所管の独立行政法人のトップが委員長を務める監察委の追加報告には、同省への「忖度(そんたく)」がやはり見え隠れする。」「監察委の中立性にはそもそも疑問があった。・・委員長の樋口氏は厚労省所管の労働政策研究・研修機構の理事長。日弁連の第三者委員会のガイドラインによると「利害関係を有する者は委員に就任することができない」とある。「監察委が厚労省寄りだ」との批判は今回の出直し報告の後も収まらない可能性がある。」と報じています。
NHK日曜討論が日経が指摘するような「忖度」しての人選かは分かりませんが、同じような指摘を受けても仕方がない構図です。この問題は、前メールでも触れましたが、NHKの討論番組のみならず、児童虐待事件の検証委員会、児童虐待行政の在り方を検討する審議会等の人選でより大きな問題となります。批判されるべき児童相談所のOBが委員長となって検証委員会が千葉県では前回も今回も設置されています。厚労省の審議会等の委員を歴任された学者等が東京都目黒区結愛ちゃん事件の委員等を務めています。報告書の内容は、厚労省や千葉県・東京都などの児童相談所が困らない範囲に収まり、私どもが求める全件共有はもちろん、警察との連携にすらほとんど触れません。
私は自分が当事者となったNHKの「完全アウェィ」人選問題を機に、厚労省や自治体の虐待死検証委員会への児童相談所OBや厚労省の審議会等の委員を歴任されるなどこれまでの児童虐待行政の進め方に何らかの責任ある方の就任については慎重にするよう求めてまいる所存です。警察との密接な連携など新たな再発防止策についてはこれまでの自分たちの主張と反するため、自説に固執し正当な理由なく反対する危険性があると構造的に認められるためであり、広い意味で「利害関係者」といえ、日弁連の第三者委員会のガイドラインと同じ趣旨です。
そもそも私の主張する「児童相談所、市町村、警察との全件共有と連携しての活動」は、私が思いついたことではなく、私が活動する以前の、平成20年に高知県で、平成24年に大分県で、自県で起きた児童相談所が知りながら子どもの命を救えなかった虐待死事件を教訓に児童相談所、市町村、警察、教育委育会など幅広い関係機関が情報共有し連携して子どもを守ろうとして取り組まれたものです。全国の児童相談所の中で、改革していこうとする意欲のある方々の取組なのです。イギリスやアメリカでは昔からさらに進んだ形で取り組まれています。私どもの要望活動もあいまって現在12自治体で取り組んでいただき、近々に数自治体で実現する見込みで、あわせると20前後の自治体で取り組まれることになります。こうした改革をしようとする全国の児童相談所の動きを、無視し反対している方々に、これまでどおり児童虐待死事件の検証と再発防止策の検討を委ねていいのかということです。しかも、私どもの要望活動には、下記(ごく一部)のとおりの医療・教育関係者やジャーナリストのほか、企業経営者、弁護士等多くの方にご賛同いただき、3万5千人の署名を提出し、いまも集まってきております。
[医師・病院関係]日本医師会、日本産婦人科医会、日本小児科学会、聖路加国際病院、山田記念病院、東京都医師会、東京都看護協会、日本精神科看護協会、
[学校・施設・行政関係]全日本私立幼稚園連合会、岩城正光(弁護士・元名古屋市副市長)、成光学園、全日本教職員連盟、東京都小学校PTA協議会
[ジャーナリスト]櫻井よしこ、細川珠生、門田隆将、大宅映子
これらの方々にご賛同をお願いすると、皆さん一様に「なぜ児童相談所は警察に情報提供しないんですか」と驚かれ、「こんな案に反対する人などいるのですか」と質問され、「児童相談所やこれまでこの問題にかかわってこられた専門家と言われる人が反対しています」と言いますと、皆さん益々驚かれ、喜んでご賛同者になっていただいております。
病院関係、学校関係、企業経営者、ジャーナリスト、弁護士・会計士、スポーツ関係者、虐待のサバイバーの方も元児童福祉司の方もおられ、もちろん、署名を寄せていただく多くの方は、会社にお勤め、ご商売をされ、あるいは主婦をされ子育てをされておられる方々です。社会の幅広い層からの支持をいただいているのです。案件を抱え込んでは警察と連携すれば救うことができたはずの命を救うことができない今回の千葉県野田市心愛さん事件や昨年の東京都目黒区結愛ちゃん事件などをいつまでも繰り返しながら、一向にその体質を改めようとしない児童相談所や、それを指摘せず児童相談所を守るかのような「専門家」の方こそ問題でないのか、と考える人たちの方が明らかに多数ではないでしょうか。この運動をはじめて4年半、多くの方々と(ただし児童相談所や「専門家」のかた以外の場合ですが)、話をしてきて確信しております。だからこそ、最近では多くの自治体で方針を改めていただき、私にも野田市からは検証委員会の委員を委嘱していただき、明石市や荒川区から児童相談所設立アドバイザーも委嘱していただいているのです。
厚労省の審議会や虐待死事件の検証委員会の人選の問題に比べて、NHK「日曜討論」の人選は影響は低いとは思いますが、やはり今回のNHKのような、以上のような最近の改革の動きを全く無視し、厚労省の意見に沿った意見を有する方とそうでないものが5対1という割合で討論番組の人選をするというのは極めて特異で、これを見られた方に誤った情報を提供することになっているのではないでしょうか。今後も同様の人選をするおそれもありますので、NHKには、なぜこのような人選をしたのか、全件共有を実施している府県の児童相談所をなぜ呼ばずに反対している東京都の児相OBを選んだのか、厚労省の審議会の委員等を歴任している方をなぜ3人も選んだのか、私どもに賛同していただいている医療関係者や弁護士やジャーナリストとなど多数おられることはNHKも知りながら、なぜこういう人を呼ばずに、反対される方々ばかり選んだのか。また、今回出演された弁護士さんは、ご自身のHPによると児童相談所に一時保護された子どもの親からの依頼を受ける立場の方のようで、現在問題となっている児童相談所の不作為の問題がテーマである今回の討論番組にいかなる理由で選ばれたのかも含め、今回の人選の理由を具体的に明らかにしていただきたく、お願いしてまいりたい思っております。