1 平成30年3月、東京都目黒区で5歳児の結愛ちゃんが父親から暴行を受け殺害されるという事案が発生したことを受け、3月5日に東京都知事、東京都公安委員会委員長あてに「再度の児童相談所と市町村、警察の情報共有と連携して活動を求める緊急要望書」を提出しました。私どもは、平成27年6月に当時の舛添知事あてに同趣旨の要望書を提出しましたが、都からほとんど無視されたまま、児童相談所が案件を抱え込んだまま救えたはずの結愛ちゃんの命を救えなかった事件をまたまた引きおこしましたので、再度提出するものです。
報道によれば、結愛ちゃんは転居前の香川県では虐待の疑いで二度も一時保護され、香川県からは「虐待の危険性が高い家庭」と伝えられ、児童相談所が家庭訪問しても結愛ちゃんの姿は確認できなかったというのですから、東京都が私どもの要望を受け入れ、児童相談所が案件を抱え込まず、警察と情報共有の上連携して家庭訪問等していれば、結愛ちゃんの命は救えた可能性がかなりありました。
本件については、3月5日の都議会で上田令子議員(かがやけ東京)が児童相談所から警察に全ての情報を提供する茨城県の事例を例に挙げ、「児童相談所から警視庁への情報提供がごく一部にとどまっている、全件で情報共有すべきだ」と小池知事に質問されました(読売新聞、産経新聞東京版3月6日)。また、3月6日の東京MXテレビで私のインタビューを含めかなり詳しく報道されました。
2 これまで、多くの児童相談所は自ら関与しながら虐待死等重篤な事案に至らしめた多くの事件で「危険性が低いと判断した」旨弁明することが通例ですが(目黒区結愛ちゃん事件でもそのように報道されています)、虐待死等重篤な事案は児童相談所が危険性が低いと判断し警察と情報共有せず案件を抱え込んだ事案で発生しています。案件把握時にすべての情報を得ているわけでもなく、虐待の急なエスカレート、親の精神状態の悪化、暴力的な同居人の出現等の事態も珍しくありません。神ならぬ人間の身で「この案件は危険性が低いから他機関と情報共有せずとも大丈夫」との判断は傲慢です。過去には警察も児童相談所と同様、折角通報を受けた案件につき児童相談所と情報共有せず、子どもを救えなかった事件を引き起こしていますが、今はその事件を教訓に虐待だとは判断できなくとも全件児童相談所に通報しています。
子ども虐待は一つの機関だけで対応できるほど甘い事案ではありません。児童相談所が警察等の関係機関と情報共有もせず案件を抱え込んでも大丈夫だという根拠の全くない、そうでない事例が日夜生じており、過去10年で児相が知りながら虐待死に至った事例が10年で150件にも上り、それを知っているにも関わらず、あえて案件抱え込みを続ける閉鎖的な姿勢が致命的な間違いで、子どもの命を軽視したありえない態度なのです。
警察に情報提供しないために児童相談所が把握している虐待家庭に警察が対応しても警察が虐待を見逃してしまうリスクが生じているほか(東京都葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件など)、児童相談所は警察に情報提供していれば、その家庭につきその後警察が110番対応、事件捜査、迷子・家出少年の保護等警察活動で対応した場合にはその状況につき警察から報告を受け、最新の情報を把握することができ、子どもを守るために極めて有効であるにもかかわらず、警察に情報提供をしないため、自らその機会を放棄してしまっているのです。子どもを守ることを真剣に考えるのであれば、到底とりえない対応です。情報共有の対象を児童相談所が危険性が高いと判断した案件に限定することは極めて不合理で、このような対応を続ければいつまでも児童相談所が関与しながら虐待死に至る事例はなくなりません。
3 高知県では児童相談所が関与しながら虐待死を防ぐことが出来なかった事件を教訓に早くも平成20年から児童相談所と警察との全件情報共有を実現しているほか、今年1月から茨城県では私どもの要望を受け、全件情報共有を実施していただいています。また明石市、姫路市など全国の多くの市町村では既に要保護児童地域対策協議会の実務者会議の場で警察等関係機関と全件情報共有を実現しています。大阪府箕面市は昨年末の虐待死事件を契機に警察に実務者会議への参加を要請し実現しています。
上記のとおり、東京都では、児童相談所等が関与しながらみすみす虐待死に至らしめた事件が極めて多く発生していますが、これまでほとんど有効な対策が講じられていません。このままでは、いつまでも児童相談所等が関与しながら子どもが虐待死させられる事件が続きます。これまでの知事のように、役人の不作為をそのままにするのではなく、小池知事には政治家としてトップのリーターシップを発揮していただくよう心からお願いいたします。