1 2017年11月22日の朝日新聞に、「ミニストップ」を含むイオングループの約7000の全店で、成人向け雑誌の販売を中止すると発表したと報じられています。コンビニ業界では売り上げが見込めるため販売をやめるところは少なく、ローソンは「単価が高く店の売り上げに貢献しているところが多い」(広報)、販売するかは加盟店オーナーに任せている、全国約1万3千件のうち販売していないのは約2,500店と、セブンイレブンでは全国約1万9900店のうち約2500店で販売している、ファミリーマートは一部店舗では販売していない、販売中止は「社会的な動向をみて慎重に検討する」(広報)などと報じられています。イオンの英断に多いに賛意を表するとともに、他のコンビニ各社も速やかにイオン同様の対応を取るよう強く期待いたします。
2 この問題は、ポルノ(児童ポルノまがいのものも少なくありません)の社会への蔓延、ひいては、子どもを性の対象とすることを容認する社会風潮の防止、「見たくないものをみない権利」などの観点のみならず、コンビニ各社にとっては「企業の社会的責任」、「コンプライアンス・リスク管理」の問題でもあります。 企業は社会的責任を有し、社会的な要請・期待に応える活動を行うことが強く求められている中で、多くの子どもや女性が毎日立ち寄る店で、成人向け雑誌の販売をいつまで続けるのか、そのような営業方針で社会からの信頼を得られるのか、というコンプライアンス・リスク管理上の重大な課題です。
加盟店オーナーの売り上げ減を懸念する声に配慮しなければならないという事情はあるのでしょうが、企業の社会的責任、リスク管理の観点からは、他のコンビニ各社もイオンと同様の取組を行うことが必要です。
3 一昔前の町の本屋さんでは、そのような雑誌は一切置いていませんでした。今でもそのようなところが多いと思います。地域と密着し、近所の大人や子どもと顔見知りだった町の本屋さんにはそういう配慮があるのです。ところがコンビニが出版物の販売も取り扱うようになる中で、そのような町の本屋さんの有していた配慮がなくなってきたように感じられます(その影響もあり本屋さんの売上げが減り閉店を迫られているとすれば、ますます大きな問題だと思いますが・・・)。ただ、コンビニでも上記のように1割か2割程度の店では販売していないとのことで、少数ですがそのようなことはしてはいけないという意識のあるオーナーさんはいるのですから、他の加盟店オーナーの理解を得ることも可能なはずです。地域に密着した営業を続けるコンビニでこのようなことが今も続いていることこそ、企業の社会的責任の観点からは望ましくなく、コンビニ各社の大きなリスクとなっています。是非、イオン以外のコンビニ各社の速やかな対応を期待いたします。
4 また、イオングループのこの決断に千葉市長さんの取組が契機となっていることを今回知りました。その経緯は熊谷千葉市長さんのフェイスブックに記載されていますが(11月22日付)、
当初市がセブンイレブンに検討を依頼していたが、セブンイレブンから「フィルムの取り付けに時間がかかる」「売り上げが減少する懸念がある」などとされ、取組が進まなかったところ(千葉日報(ネット)2017年10月6日)、従来からこの問題を検討していたミニストップが「やる」という決断をするに至ったようです。このような千葉市のミニストップの英断の契機となった一連の対応も素晴らしいものです。
私どももこの問題にも取り組んでまいりたいと思っております。
5 なお、この問題に接し、平成20年に、大手プロバイダ4社が小中学生の女児の水着姿などの画像を自社のホームページに掲載し販売していたことを読売新聞が報じ、各社が直ちに取りやめたことを思い出しました。私も取材に応じコメントしております。下記の私の弁護士事務所のブログ「子供の水着姿の画像提供をする企業のコンプライアンス」(1)(2)(3)をご覧ください。今回も、企業が社会的要請に応えるという立場から、同様の取組をしていただくことを望んでやみません。
https://www.law-goto.com/020_1/021/ |