いつも「子ども虐待死ゼロを目指す署名活動」にご理解ご尽力を賜っておりますことに厚くお礼申し上げます。
今国会での「児童相談所と警察 の情報共有と連携しての活動」 を規定する法改正を求める緊急ネット署名運動を始めました。下記をクリックしていただき、ご賛同いただきますようお願いいたします。氏名・アドレス・郵便番号を入力し「賛同!」ボタンを押すだけで完了です。
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さて、本年4月20日衆議院厚生労働委員会で、公明党の古屋範子議員が塩崎厚労大臣に対して、児童相談所と警察との情報共有について、児童相談所から警察への情報提供が必要でないかと、ご質問いただきました。それに対して、塩崎大臣は、
「児童虐待につきましては、市町村、児童相談所、そしてまた関係機関と緊密な連携をするということが大事であり、中でも警察との連携というのが極めて大事なのは御指摘のとおりだと思います。・・・・今月、警察庁から各都道府県警察に対しまして、児童虐待が疑われる場合は児童相談所に過去の対応状況等を照会 するような通達が既に発出をされてございます。これを受けて、厚生労働省としても、児童相談所において、刑事事件として立件可能性がある重篤事案、あるいは子供の安全確認について保護者の強い抵抗が予想されるような事案、こういったものなどを把握したときは、迅速、確実に警察と情報共有を行うことについて通知を、これは今年の4月1日付で行ったところでございます。」と答弁されています。本年4月に警察庁と厚労省からそれぞれ通達・通知を出して、情報共有をすすめたとされています。しかし、これは、私どもが求める、アメリカやイギリスでは当然に行われ、日本でも高知県で7年前から行われている、児童相談所と警察がそれぞれ把握する虐待案件を相手方に全件提供することにより情報共有を実現するというものではなく、児童相談所は警察に対してはごく一部の重篤なあるいは保護者の抵抗が強い事案についてのみの提供にとどめ、警察が110番を受けて対応した場合などに児童虐待が疑われれば児相に照会するというレベルにとどまっています。
なぜごく一部の事案しか共有しようとしないのか、理解に苦しみます。このような中途半端で煩雑な仕組みでは、全く子どもを守ることが出来ません。
まず、なぜわざわざこんな煩雑なやり方をするのか理解できません。当初から児相が警察に全件情報提供しておけば、いちいち警察が児童相談所に照会する必要はないのです。このやり方は行政の効率性からもありえません。現場の警察官の負担増になりますし、そもそも児相は人員不足で夜間も休日も対応しないのに、こんな照会に応じる手間暇があるのなら、一件でも多く家庭訪問して子どもの安否を確認するべきです。
次にこのやり方では警察の虐待見逃しリスクが大きいままです。児相が把握している家庭について110番が寄せられながら、児相が警察に情報提供しないため駆け付けた警察官が親から騙され虐待を見抜けずそのまま帰ってしまい、その5日後に愛羅ちゃんが殺された東京都葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件(2014.1)の再発防止は図ることができないのです。
児相の把握している家庭について110番が入るケースというのは、110番の内容が「子どもの泣き声がする。児童虐待ではないか。」というものばかりではないのです。「男の怒鳴る声がする。DVではないか」というものも少なくありません。そういう通報で駆け付けた警察官は、児相から虐待家庭だと知らされないままでは、そもそもその家庭に子どもがいるかすら分からないわけですから、児童虐待を疑うことなんてできません。ですから、警察庁からこんな通達を出しても現場では虐待の見逃しリスクが残るのです。このままでは、虐待を見逃した警察官が非難されることになるわけですが、こんな中途半端な通達を出した警察庁に責任があることは明らかです。
警察庁は、厚労省とともに、警察が児相の把握する虐待案件について全件情報提供を受け、現場に駆け付ける警察官が、110番通報の内容いかんにかかわらず、虐待を見逃すことなく対応できるように制度を整備する義務があるはずです。こんな中途半端な取組は、子どもを救うことが出来ないばかりではなく、現場の警察官に的確に対応することが不能な責任を押し付けるものではないでしょうか。同様のことは警察官が巡回連絡をする際にも起こります。巡回連絡する家庭が虐待家庭だと分かれば、警察官が注意深く子どもや親の様子を見ることができ、適切に対応することが可能ですが、このような中途半端な制度では、警察官が対応のしようもありません。
私がお願いした現場の都道府県警察本部長は、情報共有について必要であると認識し理解を示してくれています(拙著「子ども虐待死ゼロを目指す法改正の実現に向けて」p177以下)。なぜ警察庁は逆なのか全く理解できません。警察が虐待情報を知っていた場合には、虐待死を防げなかった場合に非難されることを避けたいがためなのでしょうか。まさかとは思いますが・・・。警察庁は、理解のある本部長と同様に、児相と虐待情報の共有をし、子どもを守ろうという姿勢を示さないならば、児相・厚労省と同じ立場に立ってしまいます。そんなことでは、国民からの信頼が失墜してしまいます。
さらに、児相が一部の重篤な事案、保護者の抵抗が予想される事案のみ情報提供するというのも意味がありません。子どもが虐待死させられたほとんどのケースは、児相が重篤でないと考えていたケースです。東京都足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件ですら、児相は重篤なケースだと考えていませんでした。その証拠に家庭訪問を半年以上もあけ、警察に連絡したのは実際に子どもが殺された1年3月後だったのです。こんな判断をする児相に何が「重篤」かを判断する能力などそもそもないのです。こんな失敗をいつまでもいつまでも何十件も繰り返しながら、よくこんなことが言えるなと、呆れはてます。
親が虐待するメカニズムは解明されておらず、個人の資質や置かれた事情により、急にエスカレートすることも珍しくありません。それにもかかわらず、児相が最初の段階で自らこれは重篤でないと判断したら警察と情報共有して連携して子どもを守らなくてもいいなんて、子どもの命を本当に守る気があるのならあり得ない判断です。子どもの命を守る組織であれば、子どもを守るためのベストの仕組みを作るべきでしょう。
こんな議論を国会でしている時間的余裕はないのです。1日に1人子どもが虐待死しているのです(日本小児科学会の推計による)。誰が聞いても、こんな中途半端で、虐待の見逃しリスクが残り、行政の効率性からも問題のある仕組みを作るなんてありえないことです。
子どもの命を守るためにベストの仕組みを作らなければならないというのは、国民すべての思いなのですが、警察庁と厚労省のみが違うようです。アメリカ・イギリスでは当然行われ、高知県でも7年前から行われている全件情報共有の仕組みをとらないまっとうな理由などありません。考えられるのは、「連携なんてしたくない」、「今までのやり方を変えたくない」、という、うんざりするような縦割りのままの「お役所」の体質です。
厚労省と警察庁は、国会でなぜそうしないのかと問われたら、まともに答えることはできないでしょうし、塩崎大臣も河野大臣も安倍総理大臣も答弁に窮されるのではないでしょうか。
役所のこのようなとんでもない体質からくる子どもを守ろうとしない義務の懈怠を政治が見過ごしにするならば、政治の意味がありませんし、役所に引きずられて国民からの強い批判にさらされてしまうことになります。
どうか、政治家である塩崎大臣と河野国家公安委員会委員長(他の国家公安委員も含め)、衆参の厚生労働委員会の委員の皆様は、子どもを守るためのベストの仕組みを作ろうとしない役所の意向・思惑をうのみにせず、政府の提出した法律案を修正し、児童相談所と警察が情報共有し連携して対応する規定を追加していただくよう何卒よろしくお願い申し上げます。児童虐待防止法に追加する規定はわずか次の1条でいいのです。
児童相談所長は、通告を受けた虐待案件について、当該案件の児童の現在地の警察署長(以下「警察署長」という。)に通知するものとする。
引き続き、両大臣と各党の衆参厚生労働委員会の国会議員の皆様にご理解賜るよう強く働きかけてまいる所存です。どうか、これらの大臣、議員の方とお知り合いの方がおられましたら、私にご連絡賜りますよう、そして、ご一緒に政治家の方にお願いしていただくようお願い申し上げます。